「ものと場の関係性」を問う:李禹煥
石・鉄・ガラスなどの「もの=物質」をある「空間=場」に配置し、その「関係性」を見る人に問いかける。1960年代末から戦後の日本の現代アートの中で「もの派」を牽引。
<影響>
李禹煥の芸術活動に影響を及ぼした三つ出来事とは。
① ハイデガーの実存哲学の影響
韓国慶尚南道に生まれ、大学時代に来日し、日大に編入し大学で哲学を学ぶ。ハイデガーの『存在と時間』や人の人生の意味を問う実存哲学であった。
② 現代アートの影響
1950-60年代には、過去の美術教育ではなく、ポロックなど現代アートに強烈な影響をうけ、60年代の日本や韓国など社会の閉塞感を打ち破る力をアートに見いだす。きっかけは、トリックと現実のつながりを提示した1968年の関根伸夫≪位相・大地≫。
1970年代は、ヨーロッパで、フォンタナ、イブ・クライン、アメリカではバーネット・ニューマンの大きな空間や等身大の絵の影響を受けた。
③日本・東洋の影響
枯山水など日本庭園や日本画の技法を学び彫刻・絵画・文筆の三位一体の活動の象徴的な作品群を発表する。
<作品>
作品群は大きく二つの流れが基調となっている。
① ≪関係項シリーズ≫
1960年代後半から、彫刻の概念を変えた石・鉄・ガラスの素材を、非日常的な組み合わせで配置し、不協和音を生み出すなどその関係性を問う作品群。
石・鉄・ガラス
② ≪点・線、風より・風と共に、照応≫
岩絵具と膠でカンヴァスに描く日本画の技法を駆使し、点や線の繰り返しなど静謐なリズムを奏でる風など空間表現による精神性の高い絵画。
岩絵具・油/カンヴァス
<進化>
2010年以降、直島の李禹煥美術館にある柱やアーチなど周囲の環境を取り込み外の世界との媒介や、鑑賞者の身体を重視する体験型の作品を生み出し≪関係項シリーズ≫がさらに進化した。
無限門、点線面、無限の糸、棲処(すみか):2022
対話・応答:アクリル絵具/カンヴァス
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