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【書評】ジェームズ・M・バーダマン、里中哲彦『はじめてのアメリカ音楽史』--黒人文化は世界を覆う
この本を読んでいて、中学生のときマイケル・ジャクソンにハマり、高校生ではプリンスに狂い、大学時代はパブリック・エネミーに痺れ、ロサンゼルスに留学したときは2パックやスヌープ・ドッグを聴いていた自分が肯定される思いだった。
そうか、僕が好きだった音楽は全部、ものすごく大きなアメリカ音楽という流れの中の一部だったのか、と。白人の音楽も黒人の音楽も、膨大のアメリカ音楽を聴きまくって来た碩学二人が、自分の体感も含めてアメリカ音楽の歴史と魅力を語り尽くす。それだけでも素晴らしいに決まっている。
さらに文化を分析する視点がいい。白人が黒人の真似をしたミンストレルショーのところでは、やがて黒人たちがそうした白人の真似をし始め、自らの顔の上に黒人の顔の化粧をして(!)ミンストレルをやり始めた話が出てくる。
いうなれば、黒人を馬鹿にする白人を、真似を通して批判しているわけで、こうした複雑な批評的行為がきちんとエンターテインメントにまで昇華されているところに、黒人文化の凄味を感じさせられた。
さらに、自画自賛や大言壮語は黒人文化において大きな意味を持っている、という指摘もよかった。自画自賛は自己主張、大言壮語はユーモア、派手な振る舞いや見せびらかしは肯定的なもの、という部分は、モハメド・アリのインタビューやヒップホップの歌詞からなんとなくは感じていたものの、はっきりと指摘されてすっきりした。
こうしたところから本田圭佑の「伸びしろですね」発言や、ローランドの「俺か俺以外か」も出てきているとしたら、結局は黒人文化が世界を覆い尽くしているわけで、なかなかすごいことだ。
巻末の年表がK-popの BTS で終わるのも感銘深かった。アメリカの黒人達は確かに世界を変えたのだ。