カンバン16

《第10回SCCしずおかコピー大賞 独りごと反省会。》 vol.16

課題2:人と人との絆を伝えるコピー
 ・いちばん心配かけたくないのに、
  いつもいちばん心配してくれる。

心配事は尽きない。尽きた時は死んだ時なのかもしれない。
絆を伝えるために『心配』をキーワードとしているこのコピー、キャッチコピーとしては長い部類に入りそうだが、コトバの長さがデメリットではないことを証明してくれたコピーと言えそうです。
このコピーの魅力は、一体何処に。

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『心配』というコトバは、日常的によく使うのだが、その意味を感覚でしか理解していない気がしていた。いい機会なので、改めて辞書で確認してみる。

【心配】
1 物事の先行きなどを気にして、心を悩ますこと。また、そのさま。気がかり。「親に心配をかける」「将来を心配する」「心配な天気」
2 気にかけてめんどうをみること。世話をすること。「近くに住む娘が食事の心配をしてくれる」
出典:デジタル大辞泉(小学館)

心を悩ます。気がかり。このあたりが、キーワードの意味にあたるのだろう。

常に『心配をかける』ことができる相手は限られている。あくまでも心配するその人がよく知る人、友人・知人・兄弟・親子など一定の親密さが感じられる。課題の解説のように、挨拶を交わす程度の距離感とも言える。

ほしかったのは、距離感の認識。
協賛社ではないため、あくまでも推測になるのだが、このコピーが選ばれたのは、心の距離感を気づいてもらうことで「絆」を再認識してもらいたかったのではないかと思う。

心には形がない。目に見えなければ、音もしないし、存在感もない。それを感じて理解することは、実は難しい。(そのためにコトバがあると言っても過言ではない。)

だからこそ、心はすれ違うこともある。そのすれ違いが現在目の前にある問題だと考えると、見えなくてもじぶんのことで心を悩ませている人が、すぐ近くにいることに気づくことができれば、心のすれ違いの解消に向かう可能性は高くなる、と信じたい。

絆を扱うとき、人の理性や優しさを信じる必要がある。ここを信じられなければ、絆そのものを論じることができないだろう。このコピーは、そのことを正面から語りながら、すれ違うことのある心と心の距離感の近さを思い起こさせることに成功したのだ。

このコピーの妙は、あえて『いつも』を追加しているところ。
普通なら
いちばん心配かけたくないのに、
いちばん心配してくれる。

としたくなるところだが、足し算をして引っかかりのあるユニークさを纏った。
そして、より親密な距離にある関係性も補足したことで、より多くの人の心当たりに攻め込んでいるのだ。

私も若い頃は、母親に心配をかけた。ここには書けませんが、ほぼ後めたいことだからこそ、一番心配かけたくはない人に、知られることとなるのだった。友人と悪さして戻ってきたとき、私だけでなく友人も一緒に殴られたときはさすがに悪いことしたと、母親に心配かけたことを反省しましたね。(苦笑)

絆は、そこにあるものではなく育むもの。
いつも心配をかけるから、心配をしてくれるからこそ、絆は育っていく。人に構ってあげること、愛情や同情を受けとめること。このキャッチボールのような行為に時間をかけることが、いま私たちに必要な行動なのかもしれませんね。じぶんの生活でも、改めて考えてみたいと思います。

※コピーの版権・著作権等の使用に関する権利は、静岡コピーライターズクラブに帰属します。
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