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【失恋SS】「拝啓 別れの指輪をくれた君へ」
どれだけ会いたいと思っただろうか。
もう別れてから2年が経つ。
彼にはもう新しい相手が居る。
私のことなんて、もうとっくに忘れている。
なのに私の中の君は、心の中でずっと胡坐をかいている。
4年間も共に同じ時間を過ごした。
笑いのツボが一緒で、
くだらないことも、時には悲しいことも一緒に乗り越えてきた。
別れは突然だった。
大学に入って最初の夏。
お互いがお互いの時間を優先しなくなった。
嫌いになったとかではない。
ただ、本当にあの時期は、忙しかったのだ。
お互い新しい環境に身を置き、毎日会えるわけでもなくなって、
毎日してた電話もできなくなって。
このままではお互いの為にならないと、前に進むことができないと言い、
別れたのだ。
あっさりだった。でもこってりだった。
最後のデートをした。東京スカイツリー。
よく一緒に行った場所を、あえて最後も一緒に行った。
お互いにプレゼントを贈りあった。
私からは腕時計、彼からは指輪。
念願だった。ずっとペアリングを買いたいと言っていた私と彼。
けど学生だったから、お金がなくて買えなくて。
それを最後の日に渡すなんて。
しかもそれがペアじゃないなんて。
ズルいと思った。呪いかと思った。
一生忘れられない、彼から私への呪い。
私からも呪えばよかった。何で生真面目に時計なんか渡したんだろう。
ケースのまま指輪を渡してきた彼に、私は「指にはめてほしい」と言った。
私は右手を出し、彼はケースから指輪を取り出し、私の右手の薬指にはめた。
呪いだった。
帰りは公園で二人抱き合い、号泣した。
夜8時過ぎ。もうすっかり辺りも暗い。
右手の薬指には、今日貰ったばかりのsamannsa silverのアクアマリンの指輪が輝る。
アクアマリンは私の誕生石だった。
なぜ嫌いになったわけでもないのに別れるんだろう。
他に好きな人ができたわけでもないのに別れるんだろう。
「前に進むために別れる」って、何。
かっこつけてんじゃねーよ。
今の私だったらすぐに言う。
「あなたと一緒に前に進みたいから別れないでほしい。」
と。
いなくなってから後悔するんだ。
初恋の初彼なんだから、そんなの知らなかったよ。
また会いたい。また一緒に、くだらないことで笑い転げたい。
だけどそれはもう無理なんだ。お互いに前に進めないから。
私は一生思い続けたい。
けど、きっともう元には戻れない。
結婚もできない。
私は彼を幸せにはできない。
だって私がいたら、私も彼も、前に進めないんだもん。
ストーリーには今日も、彼のデートの様子があがる。
「どうか幸せになってね。結婚式には、きっと呼んでね。」
もう連絡できない彼のLINEを眺めながら、今日もそう思う。
右手の薬指には、2年前のあの日のまま、アクアマリンが輝いている。