大好きなおばあちゃんに、沢山笑っていて欲しいと思った、高校生の話【シナリオ】
身体の調子が悪いって言ってたけど、 おばあちゃんもおじいちゃんも、ウチと話してる時は元気そうやん。
だから、ウチが帰ってもずっと笑っててよ。
ウチが居なくても、おばあちゃんとおじいちゃんには、ずっと幸せでいて欲しいんや。ー 浅峰響/高校2年生
ここはとあるミュージカルスタジオ。
小学生から高校生までが、なりたい自分になれる場所として通っている。
今日はとある秋の日曜日。今日のレッスンは18時から。
スタジオの1番の新人である中学3年生のなずなは、いつもみんながスタジオに来る前に自主練をしている。
時刻は17時。今日もスタジオの電気は、なずなのために少し早くからついている。
スタジオ生の高校2年生、響がスタジオに到着した。
なずなは踊るのをやめ、音楽を止めた。
響「あ、なずな。」
なずな「響ちゃん!おはよー!」
響「おはようさん。」
なずな「今日は早いね。」
響「おばあちゃんちの帰りやねん。」
なずな「へー!いいなー!」
響「いいやろー。本当はどっかで時間潰してからスタジオ来ようかと思たんやけど、なんか踊りたくなってしもて。」
なずな「いいじゃん、一緒に自主練しよ!」
響「せやね。」
響、棚に荷物を置く。
響「今日さ、久しぶりに会ってん。」
なずな「おばあちゃんに?」
響「うん。感染とか心配で、あんま行けんくて。3年ぶり?とか。」
なずな「そうだったんだ!楽しかった?元気だった?おばあちゃん。」
響「元気だったよ。もう次から次へとお菓子やらジュースやら出してくれてさ、もうお腹タプタプ笑」
なずな「わかる!!おばあちゃんって沢山食べさせてくれるよね!!もうお腹いっぱいでも、「遠慮しないで食べなさい」って言う☺」
響「どこのおばあちゃんも一緒なんやな。」
なずな「平和だね☺️」
響「平和やなぁ。」
響、ダンスシューズを履き、少し浮かない顔をしながらストレッチを始める
響「でもな。」
なずな「ん?」
響「おばあちゃん、小さくなっててん。」
なずな「背?」
響「うん。おじいちゃんも。おじいちゃんなんて、昔はずっと見上げなきゃ顔が見られなかったのに。」
なずな「それって、響ちゃんが大きくなったからじゃなくて?」
響「それもあるんやけど。…それもあると思うんやけど。」
なずな「?」
響「もう結構歳やねん。最近元気がなくて、調子悪いって話を聞いてたから、もう情勢が収まるまで待てないと思って、検査受けて会いに行ったんやけど。」
なずな「うん。」
響「うちがいる時は元気やねん。でも、ウチが帰るときは、寂しそうやった。」
なずな「そっか。」
響「会えなかった3年でこんなに変わるんだなって。3年前はまだ元気だったのに。こんなに空白の時間を作ってしまったことに、ちょっと後悔をしてしまったというか。でも、まぁ、しょうがないんやけどな、社会情勢が理由やし。…ご飯もまともに食べてないらしくて。今日、野菜の炒め物作ってからおばあちゃんち出たんだけど。…ちゃんと食べてくれるかなぁ…。」
なずな「…」
響「…あ!!ご、ごめんなずな、なんか暗くなってしもた?暗くなってしもたな!ごめん、こんな話するつもり無かったのに。」
なずな「んーん。響ちゃんの話聞けて嬉しいよ!おばあちゃんとおじいちゃん、心配だね。」
響「ありがとう。なずなは?会ってる?」
なずな「んー、実はおじいちゃんはもう居ないんだ。」
響「え!そうなん…」
なずな「うん。1年前くらいかな?」
響「最近やん。え、ごめん、うち、知らんくて。」
なずな「ううん!あ、でもそれからはおばあちゃんとは一緒に住んでるんだ。仲良し!毎日おしゃべりしてる!」
響「そうなんや。」
なずな「うん!おばあちゃん、私と喋ると楽しそうにしてくれるから好きなんだー☺️ミュージカルの話すると、いっっつも喜んでくれるし!足が悪いから舞台は見に来れないんだけど、いっつも目の前で踊ったりする(笑)」
響「それは楽しそうや(笑)」
なずな「おばあちゃんは嘘つかないんだ、絶対に顔に出る!口にしなくても、幸せってことが伝わってくる。だから一緒にいて楽しい☺️」
響「確かに、ウチのおばあちゃんもや。」
なずな「私もおばあちゃんに会えない年が続いたし、その間におじいちゃんが亡くなっちゃったから、おばあちゃんには沢山笑ってて欲しいんだ。」
響「…わかるな、その気持ち。」
なずな「だよね!あ、あと、お小遣いくれるし😏」
響「はは、せやな。…おばあちゃんが笑うと、嬉しいよな。」
なずな「うん、嬉しい!」あ、おばあちゃんおじいちゃんは舞台観に来てくれるの?」
響「うーん、結構遠くに住んでて。身体も悪いから遠出はできないし、なんせこの世の中だから観には来れないかな。」
なずな「だよねー。」
響「でもおばあちゃん、ウチがミュージカルやってるの、すごい喜んでくれてるんだ。小さい頃はいつも観に来てくれてて。「響が1番キラキラやわァ」って、言ってくれるんだ。」
なずな「ふふ、素敵だね。」
響「素敵やろ。そういえば小さい頃は、おばあちゃんとおじいちゃんを喜ばせるためにミュージカル通ってた節あったわ。」
なずな「そういうの、とっても大事だと思う。」
響「そう?そっか。」
なずな「…ねぇ、響ちゃん。」
響「ん?」
なずな「今日さ、桑名先生来たら、「次回公演、オンライン配信しませんか!!」って、2人でお願いしてみない?」
響「オンライン配信?」
なずな「そしたら、わたしのおばあちゃんも、響ちゃんのおばあちゃんとおじいちゃんも観れるでしょ?」
響「あー、たしかに。」
なずな「それが駄目ならせめてDVDをー!って!」
響「あはは、ありやな😊」
なずな「だよね!じゃあ約束ね!来たら一緒に!」
響「うん、お願いしよ。」
なずな「よし!これ叶ったら、おばあちゃん喜ぶだろうなー!どれが私か見つけられないかもしれないけど。」
響「若い子はみんな孫に見えるらしいからな😅」
なずな「みたいだね(笑)。 あーあ、おばあちゃんに会いたくなっちゃった。今日は早く帰ろうかな。」
響「…うん。うちもまた、すぐに会いに行こうと思う。」
なずな「またお話聞かせてね?」
響「なずなもな?」
なずな「ふふ、うん!」
響「さ!練習や!何踊る?」
なずな「M4復習したくて。響ちゃん振りわかる??」
響「あー、前回振り入れしたとこな。任しとき!」
なずな「やったー!ありがとう!」
響「おう!」
おしまい
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