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やらない善よりやる偽善


元々、募金をしようと思ったのは父の影響からだ。あしなが育英会に募金していた父は、毎年学生たちから送られてくるハガキを楽しみに待っていた。


その時は正直、募金なんかするなら家に入れろよと思っていた(複雑な家庭です)私だが、複雑な家庭で育ちさらに複雑な家庭で生まれ育つ自分より小さな子どもを目の当たりにすることがあり、似たような境遇だから理解出来る、複雑なこの子たちの気持ちに寄り添いたいと思い保育士を志した。

複雑な子どもの気持ちに寄り添う、という私の思いは実習の時点で子どもたちに届けることが出来た。泊まり込みの実習をして、自分から声をかけて相談にも乗った。ごく当たり前のことをしていただけでも、「先生の方から話しかけてくれて嬉しかった」なんて手紙も貰える素晴らしい仕事だ。

ただ、保育士になってからは目の前の子どもたちに向き合うことに夢中で「複雑な子どもの気持ちに寄り添う」なんてことはほとんど出来なくなった。というか、させてもらえなかった。多少グレーゾーンでも、家庭のことには口を出してはいけないためだ。

私は園長や保護者にヘコヘコしたくて働いているわけじゃない。もちろんそれも大事だが、一番大切なのは子どもたちだ。大人がやりたいから、大人が喜ぶから、では無くて子どもたちに達成感を味わってほしいから、子どもたちが愛されていることを実感してほしいから私は日々行事や保育を行っていた。

そんな私の気持ちとは大きく違う園から逃げ出し、もう半年ほど経つが私は今でも子どもたちの夢を見る。その度に保育という仕事への未練のようなものを感じるが、やりたくなったらいつでも出来るというのが保育士の良さでもあるためしばらくはお休みする予定だ。

保育士では無くなった私は、それでも子どもたちのために何かしたいという気持ちは無くならなかった。


そんな時に、ふとあしなが育英会の存在を思い出した。保育士じゃない私が直接出来ることは少ないかもしれないけれど、お父さんがずっと募金していたあしなが育英会に募金することなら出来る。

そう思った私はすぐに募金を開始した。

もちろん、毎月募金できる額は少ないがやらないよりはやった方が良いと思い、今でも続けている。

そんな私に先日、あしなが育英会からハガキが届いた。あしなが育英会の奨学制度を利用している大学生からのものだった。

*内容は公開出来ないが、学生で勉強を頑張っているという内容だった。

これは運命の巡り合わせなのかと思った。その学生もまた、子どもに関わる仕事に就くために日々勉強をしているのだという。



元々父がしていた募金を、将来自分もすることになるなんて思いもしなかった。ましてやなんで他人の子なんかに、という思いがあった人間が今は子どもたちに何が出来るのか考えているくらいだから世の中何が起きてもおかしくはない。

最近では募金に目覚めてしまい、クリスマスには「あしながサンタ募金」を通して地元の施設にお金を送ったりもした。このお金でどんなプレゼントが購入されるのかな、なんて想像しながら。

「人のために何かしたい」

なんて思っていても実際に出来ることは少ない。だけど、何もしないよりずっと良い。やらない善よりやる偽善という言葉のように、私は何もしないくらいなら偽善でも良いから何かをしたい。

そう思いながら大量に溜まった楽天ポイントの一部を、今ニュースになっている国にも寄付させていただいた。一人でも多くの人が救われてほしいと思う。



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