見出し画像

災害のアラートは、たくさんのひとが「生きろ」とつないだバトンだと思った | 金曜日のひとりごと

この記事では、先日の地震や過去の災害に触れます。不安な気持ちになる方は無理をせず、この記事を閉じてください。

3月16日の夜。つけたままだったテレビから有働由美子アナウンサーの緊迫した声がきこえて、顔をあげた。

久しぶりに目にした緊急地震速報の画面に、東北に住む友人たちの顔が浮かんだ。するとそこに重なるようにさらに緊急地震速報が表示され、テレビのスピーカーからアラートが響いた。

「あ、秋田も黄色になった」「ここにも大きな揺れがくるのか」

そう思った直後、東京のわが家でも体感する揺れはしだいに大きくなっていった。

秋田の実家と東北にいる大学時代の友人たちが心配でスマートフォンを手に取ったとき、文字を打とうとする自分の手が小さく震えているのに気がついた。

災害発生時に「絶対に安全」な場所なんてない。そういう怖さを感じていたのだと思う。有事には、いま自分のいる場所だって、3秒後も大丈夫なのかは実際のところわからないのだ。

短い言葉を選んで連絡し終えると、無事であってほしいと祈るしかできない状況に無力感と不安が募っていた。

山形市で3.11を経験した当時、わたしは災害に対して無知で無防備だった。少しはマシになったつもりだが、あまり変わっていないような気もする。

過去の大きな災害を知るひとりとして、あらためて「災害に備える」「災害から生きる」ことを考えた夜だった。

生活から切り離せない、自然災害への危機感

そもそも日本は、地形や地質、場所の条件的にも、洪水、土砂災害、地震、火山活動といった自然災害が多いそうだ。そして、近年は頻度は増加傾向にあり、被害の規模も拡大しているという。(参考: 「国土交通白書 2020」)

同時に、10年ほど前に比べて、ひとびとの危機意識は高まりを見せているそう。(参考: 「国土交通白書 2021」)

日本で生きていく上では、そうせざるを得ないということなのだろうと想像する。

災害が起きる前にわたしたちにできることは「災害発生時にどう行動するかを確認する」「災害後に生活できるように備える」といったところだろうか。

少しだけだが、わが家でも電気やガス、水道といったライフラインが使えなくなったときのために供えはしてある。

「災害発生時にどう行動するか」というのは正直、うまくできていない。

もし平日の日中で家族が別々のところにいたら…?
家にとどまることが危険な状況になったら…?

こういった場合については、家族みんなで確認する必要がありそうだ。でも、「いつくるかわからない、いつか」をいつのまにか遠い未来や身近には起きないように考えてしまって先送りしている節がある。

だからこそ、せめて災害発生時に「いま何が起きているのか」「次になにをしたらいいのか・どんな行動をとるべきか」について、正しい情報をすぐに得られるかどうかが、自分にとっては大切だと感じている。

いつどんな情報が欲しいのかを自覚してあつめる

地震のように突然発生する災害の場合は、まずは自分の安全を確保するのが第一だろう。(とは思うものの、自分は真っ先にテレビの前に行き、NHKにチャンネルをあわせて「いま何が起こっているのか」を確かめがち…)

そのあとに、「いま何が起きているのか」を確かめる。
自宅にテレビがないというひともいるし、災害時にたまたま出先にいるひともいるかもしれない。こういった場合は「NHK生活・防災」のアカウントなどで、テレビで放送されているニュースを同時提供しているという情報を流してくれるので、なるべくリツイートするようにしている。

今回、驚いたのが日本語以外の言語でもニュースを見られるということだった(しかも20の言語で!)。海外出身の友人もいるし、地元でも日本語を勉強中というひととたくさん接点があったので、こちらもリツイートした。

母国を離れて暮らす中、慣れない災害で情報が手に入れられない、わからないというのはとても不安だと思う。こういう発信がされていることを少しでも知ってもらって広まったらいいなと思った。

「いま何が起きているのか」がわかり、すぐに避難が必要な状況にあったり、ライフラインが遮断されてしまったりした場合は、「次にどうしたらいいのか」を知りたくなる。

「次にどうしたらいいのか」という情報が、テレビでは特にわかりにくいというのをここ数年感じている。いち早く被害があった場所の情報を伝えるのも報道の役目だとわかってはいるが、同じような情報が繰り返されるような段階になると、完全に別のツールを使うフェーズに入るのかなと感じる。

わたしの場合は、やはりTwitterで情報を確認するようにしている。

寒い日の停電で困ったひとも少なくないと思う。すぐに必要な情報があるのもありがたい。

避難の必要がない場合でも次の"万が一"に備えたい。身の回りに少し準備をしておくだけでも安心できるのではないだろうか。


わたしたちが受け取る情報を、伝えるひとたちがいる

大きな地震があるたびに、SNSのタイムラインでもよく目にするのが「緊急地震速報の音が怖い」という声。

今回、あらためてあの音がどうやってつくられたのか、という記事を読んでみた。

作曲をした伊福部さんは、依頼を受けた際に、次の5つを条件にしたそう。

緊急性を感じさせる。不快や不安を与えない。騒音の中でも聞くことができる。難聴者も聞ける。どこかで聞いた音ではないこと

なぜ緊急地震速報チャイムは“怖い”のか――作曲者が明かす「アイヌ文化」との意外な関係

「緊急性は伝えるけど、不安は与えないというのはなかなか難しそう」というのが率直な感想だった。実際にこのチャイムが作曲された後、3.11が起きたことで、音と実際の体験が結びつき「音が怖い」という気持ちが起こるようになったともいわれているそう。

たしかに、緊張が走る瞬間ではあるものの、わたしにとってはその後に起こる地震の方に意識がいくので、この音が怖いと感じたことはなかった。ほんのわずかでも早く心の準備ができるのはありがたいと考えている。

どんな理由であの音になったのか、なぜ自分が「怖い」と感じるのかを客観的に知ることができると少し気持ちが落ち着く人もいるかもしれない。




渡されたバトンをどうするのか。アンカーのわたしたちに託されている





いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!