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コイケ
2021年12月21日 13:20
しばらくの間、私たちは隣のＲの家で生活をすることになった。理由は私たちの家が地中に埋まってしまい、掘り出すのに時間がかかるためだった。「いや、災難だったね。君たちに怪我がなくてよかった」Ｒは突然押しかけた私たちを快く受け入れた。「いやはや、本当にすみません。業者に聞いてみたところ、二、三日で掘り出せるとのことだったので、それまでは是非とも……」「いやいや構いませんよ。こういう時は持ちつ持た
2020年8月29日 23:59
男は雨がすこぶる嫌いであった。そのため雨の日になると会社を休み、自宅でゴロゴロと過ごすようにしていた。特に何をするわけでもなく、ただただ雨が降る中外に出たくないという理由で家にいるのである。 そして先日、梅雨入りがニュースで発表され、男はまとめて有給を取ることにした。朝、いちいち上司に休みますと連絡をするのも面倒くさく、だったら前もって梅雨の間はまるごと休むことにして、ゆっくりと過ごそうとい
2020年8月28日 23:37
「全班、異常ありません」「よし、そのまま各班全力を尽くしてくれ」「了解」 無線機で全班に指示を出したところで、私は席に着く。遊園地のフードコートは、休日のお昼時ということもあって人の数が多い。「パパ、お水持ってきたよー！」娘の美奈が水の入った紙コップを両手に持って、テケテケとこちらに走ってくる。愛らしい姿だ。つい最近まではハイハイも出来なかったのに、今では立って走ることができる。そ
2020年8月27日 21:33
とあるビルの会議室に、数十人の人々が集められた。部屋の前方にあるホワイトボードには、『宝くじ研究会』と大きく書かれている。 彼らが集まった目的はただ一つ、宝くじにおける高額当選番号を自分たちで計算し導き出し、その理論を確立させ大儲けしようというものだった。 数学者、物理学者、天文学者、心理学者など学者と名の付く人間は片っ端から集められた。その他にも、競馬や競輪、パチンコなどの博打で今まで
2020年8月26日 22:58
とある雨の日の夜、僕は近所のコンビニに向かっていた。 じめじめとした空気が夜の街を包み込み、若干のけだるさと憂鬱さを演出している。頭上から聞こえてくる雨とビニール傘のこすれる音が、うざったくて足取りを重くする。 コンビニに到着し、店内に入る。 店内には僕以外に客が一人と、レジに店員が一人。住宅街のど真ん中にあるこのコンビニは、いつも客数が少ない。 まっすぐ、お弁当コーナーを目指す
2020年8月25日 22:27
「人参ほど過大評価されすぎた食べ物ってないと思うんだ」腕を組みながら、ため息を漏らすように山田は言った。「人参に謝れ」「いやだって考えてもみろよ。あれそんな美味いか？ 美味くないだろ。それなのにこんなに世間に浸透しているのはどうにも納得がいかないんだよ」 大学の講義中だというのに山田は教科書も筆記用具も出さずに、真面目にノートをとっている僕にペラペラと話しかけてくる。そしてテスト前にな
2020年8月20日 21:27
見た目というのは、かなり重要な要素といえる。 例えば人間の容姿において、見た目がもたらす効果は大きい。見た目が美しいほうが他人から好かれやすいし、何かと優位に立つことも多いだろう。 一方で容姿が醜くかったり、特徴を持たない人は誰からも相手にされないし、何かと劣等感を感じるシーンがあるのではないだろうか。 女性は必死に化粧をし、男性から好かれようと努力する。中には整形をして、人生を豊か
2020年8月19日 18:12
都会から離れた山奥の小さな村に、ちょっと変わった木が一本生えていた。村の中心に生えたその木には様々な果物がなっていた。りんご、かき、みかんなど季節に関係なく、一年を通して色鮮やかに実を枝につけ、そこに立っていた。 村の人々は基本的に畑での農業を生業としていたが、台風などの自然災害によって不作の年には、その木から果物をとって生活をしていた。しかし果物はいくらとっても減ることはなく、むしろ年々
