韓国映画『ソウルメイト』
キャッチコピーは、「その〝秘密〟が私を強くする」。秘密は絆を強めるが、同時に亀裂が生じることもある。その危うさと美しさを、済州島の雄大な自然を背景に、キム・ダミとチョン・ソニ二人の若手実力派女優が熱演している。
両親から愛され何不自由なく育ったハウンと、孤独な心を抱えた転校生ミソは、自分にないものを相手に見出し惹かれ合う。
二人の違いが顕著に表れているのは、唯一の共通の趣味である絵だ。写実的で基本に忠実な絵を描くハウンと、型破りなミソの抽象画は、二人の生き方そのものを表している。
高校生になり、ハウンに恋人ができたことで、二人の関係に変化が生じる。お互いにある秘密を抱えたまま、ミソは高校卒業を待たず逃げるように済州島を離れソウルへ向かう。ハウンは両親の期待に応えるため、島内の大学へ進学する。
ハウンの両親は、娘には教師になってほしいと願うが、娘の友人のミソには「あなたは美人で優秀なんだから、何にでもなれるわよ」と励ましの言葉をかけていた。
他人の子だからこその無責任な激励とも取れるが、この言葉こそハウンが求めていたに違いない。ハウンを済州島に縛り付けている家族の存在は、実の母親から捨てられたミソにとっては温かい家庭の象徴でもあるのが皮肉だ。
都会の片隅で心も体も擦り減らしながら生きているミソと、田舎で大学生活を送るハウンの溝は深まっていく。
舞台がソウルに移ってから辛い展開が続くが、ハウンがミソへ「本当にあなたのことを愛しているのは私」と想いをぶちまけたことで、二人はお互いの気持ちに気がつく。
だが距離を縮めることはない。安らげる場所を求めていたミソと、自由に生きたいハウンが一緒にいたところで、幸せにはなれないとお互いわかっているからだ。
己を見つめ、自分らしく生きることでお互いの存在を確かめ合う二人の関係は、男女の仲以上に自由で崇高だ。ラストはこんな結ばれ方もあるのかと感動した。
『キネマ旬報』読者の映画評 落選