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韓国映画『ビバ!ラブ』
この映画を一言で表すなら「明るく爽やかな親子丼」がふさわしい。親子丼というのは、もちろんアレの隠語である。
主人公は50歳の中年女性ドンフン。韓国の下町で、夫とカラオケ店を経営しつつ、自宅の学生下宿も切り盛りしている。
妙齢の一人娘チョンユンは、下宿の大学生グサンとの結婚を目前に控えた矢先、書き置きを残して家出してしまう。やけ酒を飲み悲嘆に暮れるグサンを介抱するドンフン。やがて二人は恋に落ちる。
ボサボサの髪にたるんだ身体のドンフンが、恋を知り、身なりを整え若々しくなっていくのが微笑ましい。
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ドンフンとグサンの関係を知った周囲の人たちの反応が面白い。自分も浮気している手前、強く出れない夫。母の交際相手が元カレだと知り動揺するチョンユン。かしましい近所の人々。皆等身大でリアルな人たちばかり。
そんな中、唯一「不思議ちゃんキャラ」を貫いているのが渦中のグサンだ。幼い頃に両親を亡くしたグサンにとって、ドンフンは全てを包み込んでくれる存在なのだろう。彼が若く美しいチョンユンではなく、ドンフンに惹かれるのはわからないでもない。苦学生で真面目な彼が、ドンフンだけに見せる子供のような笑顔が可愛らしい。
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だがしかし。冒頭でも述べたように、彼はドンフンとの関係を維持しつつも、突然出戻ってきたチョンユンから「私のこと、まだ好きでしょ?」と迫られ、よりを戻してしまう。お節介な近所の人たちからボコられ、ラストは衝撃の展開を迎えるが、彼の笑顔は変わらない。
グサンとは何者なのか。おそらく彼は、つまらない日常に神様が気まぐれに遣わした天使ではないだろうか。この天使、可愛い顔してかなりのゲスだが、ファンタジーだと思えば許される。
ベッドシーンをあえて描かないのも、ファンタジー効果に拍車をかけている。ドンフンの夫と浮気相手の情事が執拗に描かれているのとは対称的だ。
この天使を許すか許さないかは、見る者の感性に委ねられている。ちなみに私は許してしまった。
『キネマ旬報』読者の映画評 一次通過