おなかま味噌。
農舎オガッサでは、仲間でわいわい同じ釜で仕込んだ「おなかま味噌」を作っています。
味噌作りはとても大変そう、神々しい、神がかりでなくっちゃとてもできっこない、というようなことは一切ありません。豆を柔らかくなるまで煮て、こうじと塩をまぜたら容器に詰め、半年以上置けばそれで出来上がります。本当です。
手前味噌を作ろう。
「手前味噌」という言葉は「自画自賛」する時によく使われますが、自分の家で熟成させた味噌は本当に自慢したいくらいおいしくなります。同じ釜で仕込んだ味噌でも各家庭に持ち帰って一年経つと、置き場所の環境や、その家ごとに棲む微生物の違いで、それぞれ個性のある味に変化します。自分の暮らす環境で、同じように過ごしたみそ。きっとそれが「手前味噌」のおいしさの秘密のような気がします。
味噌の塩分。
味噌汁は塩分を気にする人にとって悪の権化のように言われることも多いですが、日本高血圧学会では「味噌の塩分と血圧上昇は関係ない」と研究発表されています。味噌に入れた食塩は発酵と熟成により他の物質と結合し、単純な食塩として存在していないので、同じ塩分を摂るなら味噌から摂ったほうがよいと言われています。
毎日味噌汁。
味噌汁に使う味噌の量は、お椀一杯(水180㎖)につき、大さじ1杯(16g)ほどですが、具の量や種類によっても変わるので、あくまで目安です。味噌のすごいところは多くても少なくてもそれなりにおいしくできます。また、味噌汁はだしや具を選びません。ありとあらゆる具材でも最後には味噌がうまくまとめてくれます。ルールがないのが家庭の味噌汁の面白いところです。ちなみに、味噌汁一杯に16gを使用し、一年間毎日一杯いただくとしますと、一人あたり一年で5〜6㎏使うという計算ができます。
仕込みの時期。
毎年2〜4月に「寒仕込み」を行います。理由は、農閑期であること。秋に米や大豆を収穫して選別、準備が整うのがこの時期だからです。また、大豆を長時間浸漬するときの気温が20℃以上だと雑菌が繁殖しやすくなること。井戸水や湧き水を利用する場合は冬場の雑菌が少ない状態の方がよいこと。また、寒い時期からゆっくり時間をかけて醗酵させた方が、味に深みが出ておいしくなることなどが理由です。
容器。
用意する容器は、出来上がりの味噌が10㎏なら9ℓ(5升)用、20㎏なら18ℓ(10升=1斗)用のものがあれば大丈夫です。陶器製の甕(カメ)、また琺瑯(ホーロー)製容器をオススメしています。においが気になるという家庭では密閉できて塩や酸に強いタッパーウエアのマキシデコレーターをおすすめしています。ちなみに表面積が小さい縦長の容器の方がカビが出る確率は下がります。
服装。
汚れてもよい服装で。髪の毛が落ちないように三角巾か帽子を。必ずしもゴム手袋とマスクは必要ではありませんが、手に傷をしていたり敏感肌の方はゴム手袋、菌や胞子に敏感な方はマスクがあるとよいです。
材料。
岐阜県恵那地方の地味噌の多くは、米こうじと麦こうじを使った混合こうじ味噌で、米だけの味噌より甘味や酸味が少なく、あっさりとした味わいが特徴です。この米麦混合味噌というのは、私が知る限り山梨県の甲州味噌と、この岐阜県東濃地方ぐらいで、全国的には珍しい部類の味噌と言えます。
我が家の原料比は、豆1:米0.5:大麦0.5:塩0.46。
実際の重量は、豆15㎏:米7.5㎏:大麦7.5㎏:塩7㎏。
この材料で約56㎏のみそが出来上がります。ちなみに塩分濃度は約12%になります。
作業の手順。
大豆を煮る。
大豆はよく洗い、たっぷり(大豆の3倍量以上)の水で前日から18時間以上浸しておきます。翌朝新しい水で、ひたひたに水加減をして火を入れます。
沸騰したら吹きこぼれないように火力を調節します。この時に大量に泡(サポニン)が出てきますが煮ていくうちに消えます。約3時間ほど煮たら、豆を親指と小指でつまんでつぶれるまで柔らかくなっているか確認して、火を落としてそのまま30分〜1時間ほど置いて煮汁を大豆に吸わせます。
塩切り。
生のこうじをもらってきたら、こうじ菌の発酵を止めるためにすぐさま塩と混合します(塩切り)。塩切りしたこうじは1ヶ月間ほど常温で保存できます。塩きりしない場合は、冷蔵庫10度以下⇒3週間、冷凍庫⇒3ヶ月間保存可能です。すぐに塩きりできない場合、常温なら陽の当たらない風通しのよい場所に広げておきます。が、できるなら早く仕込んだ方が酵素は活発に働いてくれます。
大豆を潰す。
大豆の煮汁を切り、ミンサーなどで潰していきます。その昔は杵と臼で潰していました。少量ならすりこぎとすり鉢を使ったり、ビニール袋に入れて手で潰してもよいです。多少豆つぶが残っていても大丈夫です。あまりにも豆が潰れていないと、豆の中に塩分が浸透するまでの間、他の菌(特に納豆菌)が侵入する恐れがありますのでご注意ください。
大豆とこうじと混ぜる。
つぶした豆が触れるくらいに冷めたことを確認したら、塩切りしたこうじとよく混ぜ合わせ、野球のボール大に丸めてみそ玉を作ります。余った煮汁は料理(鍋やシチューの出汁など)に使えます。
容器に詰める。
容器の内側に焼酎を吹き付け、内側、底に塩を少しふり、最初は押し付けるように味噌玉を詰めて行きます。次からは空気を抜くように叩きつけながら詰め込みます。発酵した時にふくらむので満杯まで詰めすぎないようにしましょう。詰め終わったらまわりを焼酎で拭き上面を平らに均します。最後に塩をふります。特にふちまわりは多めに塩をしましょう。
この上へ酒粕、または昨年の味噌をうすくかぶせておく場合もありますが、それはお好みで。
最後にぴったりとラップ(うちでは和紙)をかぶせます。重石はなくてもできますが、毎年カビが出てしまうという人は中蓋をして、味噌の3割ほどの重石(ビニール袋に入れた塩や小石などでも可)をするとよいでしょう。重石をするのは、味噌の水分を上がりやすくして、好気性のカビが好む空気を遮断するためです。
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