はじめに
今回は、デジタル人材育成学会会長で、千葉工業大学教授の角田仁先生の「デジタル人材育成宣言」(2021年)を読んでみました。
角田先生は、数年前に30年間務めた東京海上を退職し、大学教員へ転じられた方で、東京海上時代は、IT企画部参与(部長)や東京海上日動システムズ執行役員を歴任された方です。多くのIT人材の育成にも尽力されたそうです。
本書は、日本全体としてのデジタル人材育成について論じたものです。
日本企業のDXの取り組み状況やIT業界との関係等、生々しいお話も楽しむことができますので、
DXに興味のある方には是非お読みいただきたい一冊となります。
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本書の概要
著者によれば、日本でDXが進まない理由は、日本企業ならではの、組織と人材育成の問題と、そこから派生するいくつもの課題にあるとのことです。
その上で、ここ数年のデジタル化の取り組みについて一度立ち止まり、どうあるべきかゆっくり考えませんか、と問い掛けます。
最初に、これまでの日本企業のデジタル化の取り組みについて、「ユーザー企業」からの目線で詳しく説明していますが、要約してみると、
デジタル案件を進めるにあたり、各企業でリソース不足(人材、予算、技術)も問題になり、特に人材不足が露呈したとのことです。
人材不足の問題については、さらに、
また、この人材育成の問題に関して、昨今最も鋭く踏み込んだのは、経産省の「DXレポート」(2019年9月)としています。
基幹システムが「巨大化・複雑化・ブラックボックス化」のままであれば、今後ますます重要になる、データ活用もままならないということになりますので、日本企業の中長期的な競争力の劣後が決定的になるということです。
ここで著者は、「日本のDX」は「真のDX」ではないとし、それが日本におけるDXの取り組みが混乱している原因とします。
著者の問題意識は、「日本のDX」が「商品・サービスのデジタル化」に力点を置き過ぎていることです。
それにより、経営者も現場も疲弊しているとしています。
また、デジタル変革に基づく事業戦略や全社戦略の必要性を指摘した上で、著者は以下を提案し、今やるべきことは、デジタル人材やIT人材の育成であるとしています。
ここからが具体的なデジタル人材育成のお話になります。
最初に、デジタル人材の育成主体と、デジタル人材の流れを示しています。
ここで、育成主体でボリュームが大きいのは、大学教育と企業(ユーザー企業およびITベンダー)であり、
人材の流れでボリュームが大きいのは、大学教育から企業(ユーザー企業およびITベンダー)への流れとします。
このボリュームの大きなところに、どういった手が打てるかが問題です。
著者は、一旦、現在の大学教育の問題点を指摘しつつ、
人材育成主体のそれぞれについて主張を展開していきます。
まず、ユーザー企業についてですが、
次に、ITベンダーについては、
とのことです。
大学教育については、
とのことです。
最後、著者が代表発起人となり2021年に設立した、デジタル人材育成学会について説明しています。
学会設立の趣旨や背景ですが、
また、今後の抱負を以下のように語っています。
おわりに
角田先生の学会の活動がうまくいくといいですね!
陰ながら応援させていただきます!