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お酒は各地を旅する気分で

 スペインのスパークリングワイン。有名なのはCava(カバ)だろう。そのほとんどが地中海に面したカタルーニャ州で作られる発泡性のワイン。製法としては、フランスのシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵。簡単に言えば、栓をした瓶内でさらに発酵させ、その際に発生した二酸化炭素を封じ込める。二酸化炭素は液中に溶け込み、発砲性のワインができあがる。
 Cavaという名称は、ワインを保存する洞窟や貯蔵庫をさすcava に由来するらしい。フランス語でも地下室のことをcave (カーヴ)と言う。カーヴを名乗るワインショップを見かけたことのある人もいると思う。
 カバは1000円台からでも手に入るものもあるけれど、シャンパーニュはと言うと、どうだろう、高いものはきりがないが、4000円か5000円が最低ラインだろうか。カバも美味しいのだが、カバはデイリー、シャンパーニュは特別な日のためのワイン、そんな印象もある。
 そろそろ9月も中旬。早朝や夜間は涼しさを感じることもあるが、日中は相変わらず暑い日が続く。暑い時季には、スパークリングワインが飲みたくなる。
 今日はスペイン、カタルーニャ州のスパークリングを飲んでみた。ラベルにはCavaとは書かれてなくて、「CLASSIC PENEDES 」とある。ペネデスは、カタルーニャの州都バルセロナの南側にあるエリア。このペネデスで作られた瓶内二次発酵のスパークリングワインは、2015年からクラシック・ペネデスを名乗る。従来のCavaとは一線を画すスパークリングワインを目指して立ち上げられた新しい呼称なのだそうだ。
 クラシック・ペネデスのブルット・ナトゥーレ、レゼルバ。栓を抜いてグラスに注いだ。色はまずまずかな。薄くはない。もう少しうま味があれば良いなぁとは思いつつも、補糖をしないブルット・ナトゥーレならではの自然な味わいも良い。微細な泡が長い時間立ち上がる様子には満足した。

青い花とヤギのラベルデザインが現代的な印象

 スペインのスパークリングワインは、値段も味の幅も広い印象があるけれど、クラシック・ペネデスのように、伝統を踏まえながらも新しい味わいを目指すものを試してみるのもまた楽しい。
 個人的には、ワインの世界は、なんだかんだ言ってもフランスのワインが基本であり、比較すれば質的にも素晴らしいとは思うのだが、各国の作り手たちは試行錯誤を重ね、より美味しいワインを作ろうとしている。
 温暖化と言われる昨今、ワインも気候変動の影響を受けているとはよく聞く。ワインに限らずお酒は、ブドウやお米、麦といった農作物を原料とする飲み物であり、農産物の加工品。気候は品質に大きな影響を与える。気候が変われば、過去を踏襲した作り方だけでは、従来と同じ水準の味わいを維持することは難しいのだろう。日々自然を相手に仕事をする農家の人々の苦労が並大抵のものではないことは想像に難くない。
 お酒を飲むときには、その外観や香り、味わいから、そのお酒がつくられた国や地域の風景や気候、その土地の人々やその生活をできる限り思い描くようにしている。例えば、「よく熟した果物の香りがする」場合は「南国で、あたたかい地方で作られたものかなぁ」とか、「色が薄く酸味がしっかりある」と思えば、「日射しは弱く、寒い地域で作られたものかなぁ」とか。
 大げさに言えば、traveling without movingと言うのだろうか、自宅にいながらにして、世界各地を旅しているような気分になれるのが、僕にとってのお酒の楽しみの一つなのだ。

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