なぜ宮崎県 高千穂町にはおいしくない「ごちそう」があるのか
僕の生まれ育った宮崎県、高千穂町では郷土料理として「盆鱈(ぼんだら)」という、乾燥させたタラとタケノコを砂糖やしょうゆで煮たものがある。
その名にある通り、盆にしか食べない、特別なごちそうだ。
僕は子供のころからこれが嫌いで、大人になっても全くおいしいとは思わない。甘く単調な味もさることながら、見た目もグロテスクで、骨も多く、身がボソボソしていて食べにくい。
他の情報サイトでは主観的なことは書かないと思うが「おいしくない」ことが重要で価値があることなので書いておく。好きな人もいるのかもしれないけど。
なぜそんなにおいしくないものをごちそうとして食べるのか。という理由は土地にある。
宮崎県高千穂町は九州のほとんど中央に位置している。
ここはどの海からも距離が遠く、冷蔵施設や運送手段がなかった昔は生の魚が食べられなかった。
魚を乾燥させたものですら、お盆のような年1回のイベントなどでしか食べられないほど貴重なごちそう。
それくらいインフラが整ってなかった時代からの伝統的な料理なのだ。神話の時代から食べられている、という記述があったけど、さすがにそれはない気がする…あるのか…?
盆鱈は「高千穂に嫁に来た女性がデキる人間かどうかのベンチマーク」としても機能している。
親戚や近所の人が集う盆に、盆鱈をうまく作り、振る舞うことができる嫁は姑や親戚や近所から高評価をもらえる。
評価は「どれだけおいしく調理できたか」という加点方式ではなく「伝統の作り方を踏襲し、まともな味にできたか」という減点方式になる。
その点も、田舎で続いてきた嫁と姑、親戚や近所の関係を感じとることができる。
上記のように、高千穂町の歴史や、郷土の風俗に触れられるたべものなのだ。
おいしくない&お盆しか食べる習慣がない&観光客にはあまり出さないはず。なのでかなりレア。
盆鱈は観光に来たらせっかくなので食べたほうがいいもの2位ではないかなと思う。1位は高千穂牛ね。
「盆鱈(ぼんだら)」は高千穂の土産物屋や宮崎空港などに缶詰で売っている。
東京に来た知人からお土産にもらって食べたのでこんな文章を書いてみた。
高千穂以外の土地でも、文化の発展によって消えていく「おいしくない」郷土料理があるんだろう。
最近は盆を外して帰るので、久しぶりに郷土に想いを馳せて盆鱈を食べたけれど、
やっぱり、まずい。
(缶詰のほうが骨がやわらかいのでましかも)
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