セッション定番曲その5:Superstition by Stevie Wonder / BB&A
ロック、ファンク、ノンジャンル、どのセッションイベントにも馴染むド定番曲。キメ以外はワンコードで進行するので、アドリブとり放題というのも人気の秘密でしょうか。(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Superstition
言わずもがなですが「Super Station」ではありません。そんな駅があったら行ってみたいけど。1日あたりの利用客数世界一と言われる新宿駅はスーパーステーションかもしれんが。
「Superstition=迷信:無知や恐怖から生まれた不合理な信仰」ということで、この曲ではそれが列挙されていきます。
ポイント2:Very superstitious
いきなり発音の難しい単語が出てきますね。
まず「very」の「v」の音をちゃんと出しましょう。下唇を軽く上の前歯で噛んで出す音です。噛むのは軽くて大丈夫です。これが「b」音になってしまうと「berry」に聞こえてしまって、口の中が甘酸っぱくなってしまいます。続けて「superstitious」、superstitionの形容詞です。「per」の「p」音をちゃんと出すと届きやすいです。そして「sti」「tious」と難しい音が続きますが、こうやって分解してしまうと神経質な感じになってしまうので、ひとつの単語として歯切れ良く歌えば大丈夫です。
ここは「君ってホントに迷信を信じやすいね(そんなに心配しなくても大丈夫だよ)」という呼び掛けです。
ポイント3:Writing's on the wall
出ました。「壁に書かれたもの(言葉)」がなぜ「迷信」なんでしょう?これは旧約聖書の中のエピソードから来ているようです。「(突然空中から現れた手によって)壁に書かれた言葉=予言=悪い出来事の前兆」だと。詳しくはググってください。壁に書かれてしまうとなかなか消えないですからね。
ポイント4:Ladder's about to fall
「ladder=梯子」、こっちは古代エジプトが発祥らしいです。「梯子の下をくぐっちゃいけないよ」とはよく言われます。実際に危ないし。梯子は不安定なものの象徴である訳です。古代エジプト人は壁に立て掛けられた梯子の下には善き精と悪い精が潜んでいて、そこを通ろうとすると彼らを怒らせてしまう、と信じていたらしいです。
ポイント5:Thirteen month old baby Broke the looking glass
「13ヶ月目(つまり1年と1ヶ月目)の赤ちゃんが鏡を割った」・・・出ました「13」。これは有名で「ユダが最後の晩餐で13番目の席についていた」ことが由来みたいですね。「割れた鏡」というのは世界中どこでも不幸・不運の象徴ですね。「別れる」「身近な人が亡くなる」などと。そしてドラマなどで「割れた鏡に自分の顔が映った」後は必ずホラーな展開が待っていますよね。
ポイント6:Superstition ain't the way
「ain't」もいまだにwordのスペルチェックで怒られちゃいますよね。まぁ、ネイティブじゃない我々は使わない方が無難かも。「isn't」「aren't」「haven't」等の置き換えです。こういう単数も複数も同じ表現にしてしまうというのはスラングでよくあることですね。
「the way」というのは「正しい道、正しい考え方、正解」ぐらいに捉えておくといいかも。「ain't the way」と歌っているので「それは(迷信を信じること)はやめておきなよ」と呼び掛けていることになります。つまりこの曲は迷信を列挙しながら、それを否定しているものなのです。
スティービーは信心深い歌も書いているので、(汎用的な意味での)キリスト教の信条に反するような世俗の迷信に惑わされている人々が許せなかったのかもしれませんね。
ポイント7:The devil's on his way
「悪魔がやってくる」・・・この「悪魔」というのをどのくらい本当に恐れているかというのは、その人の宗教観とか信心度合いによって異なりますが、小さい頃から話を聞かされて育ったような人だと、信じる信じないにかかわらず、ゾクっと嫌な感じがするんでしょうね。ビジュアル的にもトラウマになりやすいし。いまだにホラー映画とかであのままのビジュアルの悪魔は使われているのを見ると、少なくとも笑ってしまう対象ではなさそうです。
古いブルースとかだと「迷信にとらわれてしまった」とか「悪魔が追いかけてきて、逃げられない」とか歌われているものも多いですが、スティーヴィー・ワンダーはそういうものとも縁を切りたかったのかもしれませんね。
「devil」の発音は「デビル」ではありません。難しいので原曲を聴いて少し練習しましょう。
ポイント8:Stevie Wonder と BB&A
この曲をどっちのイメージで覚えているかは大事ですね。ファンクとしてやりたい人は前者、ロックなら後者。キーも違うし、ノリもかなり違います。もともとはスティーヴィーがジェフ・ベックに贈った曲らしいですが、自分でもシングルカットしてしまって、そっちが大ヒットしてしまって・・・当時の注目度からするとジェフ・ベックでは大ヒットまではしなかった筈なので、結果オーライではありますが。
ある時のセッションイベントでドラムの方がこの曲をリクエストして「BB&Aで」と呟いた途端に叩き出して、カーマイン・アピスのあの全力のドラミングで、ハイハットのパシャパシャも織り交ぜて、他のパートが全然聴こえないくらいの音量で曲の最後まで突っ走ったことがあります。本人は大満足そうだったけど・・・。やっぱりみんなで合わせて演奏したいですよね・・・。
ポイント9:クラビネット
この時期のStevie Wonderはクラビネットという楽器とファンク系の曲で多用していて、その特徴的な音色が曲の個性そのものに繋がっているものも多いです。彼はピアノ、ハーモニカの達人でドラムも叩きますが、やはり盲目の身にはギターは難しかったようで、ずっとエレキギターのように歯切れの良い音を出せる楽器を探していたらしいです。ピアノ(鍵盤楽器)も実際には「弦楽器」ですが、もっとアタックの強い鍵盤楽器が欲しかった、と。
ちょうどベースの存在感が強い曲が流行り始めて、それとクラビネットの音色の愛称が良かったのだと思います。
クラビネットは1970年代のファンク/ロック界を席巻しました。
いまでも大体のシンセサイザーにはこの音がプリセットで入っていますね。
使用例は
You Haven't Done Nothin'
Keep On Truckin'
Trampled Under Foot (1990 Remaster)
The Rolling Stones - Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)
Led Boots
ポイント10:様々なバージョンを聴いてみよう
まずはStevie Wonderの原曲、上記のクラビネットが核になっています。
Stevie Wonderの2012年のライブ、Clavinet D6を使い続けていて嬉しいですね。こういう大編成のバンドにも似合う曲。
Stevie Wonder "Superstition" Live at Java Jazz Festival 2012
Beck, Bogert, Appiceのスタジオ録音バージョン、ミックスのせいなのか迫力の無い音で当時のリスナーはがっかりしました。このドラム(ハイハット)のパシャパシャは流行りました。Jeff Beckがこの曲をやらなかったら、ロック定番曲となることはなかったかもしれませんね。
Beck, Bogert, Appiceのライブバージョン、日本限定で発売されていたので、この曲の評価が日本で異常に高かったのも分かります。
Stevie Ray Vaughanもこの曲はお気に入りでした。
無理矢理ですが、ボサノバにもなっています。
Superstition (Bossa Version)
レゲエ・ミックス版
Superstition (Reggae Remix)
私はセカンドラインでやってみたことがありますwww
■歌詞
Very superstitious
Writing's on the wall
Very superstitious
Ladder's about to fall
Thirteen month old baby
Broke the looking glass
Seven years of bad luck
The good things in your past
When you believe in things
That you don't understand
Then you suffer
Superstition ain't the way
Very superstitious
Wash your face and hands
Rid me of the problem
Do all that you can
Keep me in a daydream
Keep me going strong
You don't want to save me
Sad is my song
When you believe in things
That you don't understand
Then you suffer
Superstition ain't the way
Very superstitious
Nothing more to say
Very superstitious
The devil's on his way
Thirteen month old baby
Broke the looking glass
Seven years of bad luck
Good things in your past
When you believe in things
That you don't understand
Then you suffer
Superstition ain't the way