セッション定番曲その34:Feelin' Alright by Traffic (Dave Mason) / Joe Cooker / GFR / Three Dog Night
2コードで、ロックやファンクのセッションで使い勝手の良い定番曲。シンプルなだけに、盛り上げたり飽きない構成にするなど工夫のし甲斐があります。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:2コード
曲を通して、C7とF(7)の2つのメジャーコードの繰り返しで出来ています。「そんなので曲になるの?」と思う人もいるかもしれませんが、その単純なコード進行の上にどんなメロディを乗せるか、リズムをどう工夫するかがポイント。ファンク曲の中には全編通して1コードという曲もあります。
コード進行が単純で、極端な話、昨日楽器を始めた人でも弾けるのがセッションイベントの定番曲としてはありがたいところ。せっかくのジャムセッションなのに「進行が複雑で、みんなそれぞれ譜面ガン見」という状態って、あまり好ましくないし、アイコンタクトも無いと事故のもと。初見に強い人だけが参加出来る、というハードルもちょっと嫌ですよね。後述するようにコーラスで参加するだけもアリの曲です。
間口は広く、奥行きが果てしなく深い、というのがこの曲。
ポイント2:Traffic (Dave Mason)
トラフィックは天才スティーブ(スティーヴィー)・ウィンウッドを中核とした英国のロックバンドでした。メンバーの出入りも激しく、そういう流動的なチームのあり方もアリかな、という感じ。サイケデリック、フォーク、ロック、トラッド、民族音楽、ジャズファンクなどを取り込みながらポップに仕上げていくユニークな存在でした。
デイブ・メイソンも創設メンバーでありながら、頻繁に出入りをしていて、この曲も2ndアルバム制作時に呼び戻された際に持ち込んだものでした。
出入りの様子は下記にも書かれています。
フィーリン・オールライト - Wikipedia
トラフィックのオリジナルバージョンはスティーブ・ウィンウッドの伸びやかな歌を核にしたゆったりとしたアレンジになっていますね。穏やかなようでいて、言葉をしっかり伝えるような歌い方。細かい部分のリズムアレンジがこの時期のトラフィックらしくて素晴らしいです。
デイブ・メイソンはこの後、英国ミュージシャンとしては先駆けて、米国南部の粘っこいノリを取り入れた作品を発表しました。
ポイント3:Joe Cooker
憑依型シンガー、ジョー・コッカーの歌はいつでも全力投球、ストレート勝負です。この曲のテーマである「彼女への不信感、不満」をぶちまけるような歌い方をしていますね。ライブではゴスペル風コーラスが入ることで、なんだか壮大なメッセージのある曲のように聞こえます。
ポイント4:You feelin' alright?
You feelin' alright?
I'm not feelin' too good myself
「君はいい気分かな? こっちはそうでもないよ」というのを繰り返し歌っています。どうやら彼女に振り回されてしまったようです。
I've got to leave before I start to scream
But someone locked the door and took the key
「気が狂って叫ぶ前にここを去らなきゃ、でも誰かがカギを掛けてしまったんだ」という行き詰った状態。
Gotta stop believing in all your lies
'Cause there's too much to do before I die
「君の言い分を信じていたけど、もうやめなきゃ」「自分にだった生きているうちにやらなきゃいけない事が沢山あるんだ」と、後悔しています。
オンナ運が悪い主人公ですね。でも悪女に惹かれてしまうのがオトコのサガ・・・
ポイント5:alright
「all right」を簡略化した言葉ですが、「L」音と「r」音が連続して出てくる、発音の難しい単語です。日本語だと「オーライ」になっちゃうけど、車をバックさせる時に掛け声みたいになってしまうので、ちゃんと発音したいですね。やはり最初の「L」音をちゃんと出さないと意味を成さないのですが、アクセントは後半の「right」にある歌い方なので、素早く力強く「r」音に移行する必要があります。練習してみましょう。
ポイント6:ファンク
トラフィックもジョー・コッカーも露骨にファンクに寄せたアレンジというよりは「よく分からないけど黒人音楽寄りの要素を入れてみたロック」の感じで留めていたのかもしれないです。原曲が発表された1968年秋の時点だとSly & the Family Stoneもまだ世界的な人気を得ておらず、ただロック界の中で徐々に「黒っぽいノリ」の研究が始まっていた頃だと思います。コード進行を極力シンプルにして、リズムを強調して、延々とリフを繰り返すことでトランス状態を生み出す・・・
その後色々あってファンクが一般化した今では完全に「2コード・ファンク」と解釈しての演奏もアリ。
1970年のThe 5th Dimensionのバージョンはテンポも含めて完全にファンクっぽい。
1971年のJr. Walker & The All Starsのバージョン。なんか能天気に明るいですね。
Feeling Alright
Three Dog Nightが意外にファンキー。1969年のライブ録音。
Grand Funk Railroad、1971年録音。重くロック的なファンク。
このあたりの1970年前後の数年間のトレンドの変化は面白いですね。
ジミ・ヘンドリックスなどもあと少し生きていたらファンク寄りの作品を発表していたのではないかと言われています。マイルス・デイヴィスなどもいきなりファンク寄りのアプローチを始めた時期。
この話は奥が深いので、別の機会に掘り下げたいと思います。
ポイント7:コーラスと逸脱
「曲の中の繰り返しのパート」の「コーラス」という意味と「複数の人がハモって歌う」という「コーラス」の話を兼ねて書きます。
「君はいい気分かな? こっちはそうでもないよ」という歌詞が繰り返される訳ですが、これを多人数のコーラスで歌うことで、単なる恋愛/痴話とは違うニュアンスが出てくるんじゃないかと感じます。もっと壮大な「政治や政策に対する不満」「世の中が思い通りにいかないことへの不満」「宗教などの(権力の)欺瞞に対する不信感」という。
「君」は信用出来ない相手、いわば敵。そこに向けて歌っているのだ、と。とするととても普遍的なメッセージ(プロテスト)の歌になりますね。
で、そういうメッセージ性を考えると、ちゃんとハモらなくてもいいので、とにかく皆で声をあげよう、という思いにもなりますね。それが「逸脱」ということ。沢山の声が重なり、ぶつかること自体に意味がある。だから、メロディとかハーモニーとか無視して、逸脱してもいいので叫ぼう、と。
なんかそういう事がリハ無しの参加型セッションイベントの醍醐味でもあるし、知らない曲でも参加する楽しさでもあります。まずステージに上がらないと奇跡は起こらないので、「イケる!」と思ったら、勇気を出して参加しましょう。ジャムセッション=祭り という説もあります(多分)。
■歌詞
Seems I've got to have a change of scene
Every night, I have the strangest dreams
Imprisoned by the way it could have been
Left here on my own or so it seems
I've got to leave before I start to scream
But someone locked the door and took the key
You feelin' alright?
I'm not feelin' too good myself
Yes, you feelin' alright?
I'm not feelin' too good myself
Well boy, you sure took me for one big ride
And even now I sit and I wonder why
That when I think of you I start myself to cry
I just can't waste my time, I must keep dry
Gotta stop believing in all your lies
'Cause there's too much to do before I die
Hey, you feelin' alright?
I'm not feelin' too good myself
Oh no, you feelin' alright?
I'm not feelin' too good, little girl
Don't get too lost in all I say
Yeah, by the time, you know, I really felt that way
But that was then, and now, you know, it's today
I can’t escape so I guess I’m here to stay
'Til someone comes along and takes my place, yeah
With a different name, oh, and a different face
Hey, you feelin' alright?
I'm not feelin' too good myself
Oh no, you feelin' alright?
I'm not feelin' too good, little girl
Traffic
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