
#275 評価制度でわかる組織の成熟度
やっぱり日系企業は管理職にならないと評価を得られない?
新卒の内定者から、こんな質問を受けました。
この問いをきっかけに、自社の評価制度について改めて考えてみると、強い組織には多様な貢献を適切に評価できる成熟した評価制度が必要だということに気づきました。
年度末の評価の時期で私も最近評価を受けたので、弊社の評価制度と合わせて考えます。
360度評価の落とし穴
私の職場はITベンチャーを謳っていますが、創業20年を越え、昨年に上場することが出来ました。内定者としては、いわゆる日本的なピラミッド構造の中でのマイクロマネジメントにネガティブなイメージがあっての質問だと思います。
人口増加による旺盛なモノ消費を満たすことが求められる時代に最適化した組織構造や評価方法が今の時代に合っていないことを危惧し、エンジニアとしての技量を評価して欲しいという内定者の意図は非常によくわかります。
弊社では、マイクロマネジメントは行わず、上長評価よりも360度評価が重視される仕組みを採用しています。管理職だけが評価されるのではなく、境界を超えて活躍する人が評価されやすい環境です。
例えば、緊急度の高い課題の解決、高い専門性や遂行能力を活かした難易度の高い課題の突破などが、評価につながります。一見、フェアに思えるこの仕組みですが、大きな欠点もあります。
それは、個人の突破力以外の貢献が評価されにくいことです。
目立たないながらも他の人の活躍を支え、組織全体の成果を底上げするような動きは、評価の対象になりにくいのです。
短期的な成果だけでは組織の成長は続かない
短期的な売上への貢献は重要度も緊急度も高いため、評価を受けやすいです。スタートアップ期には、この評価制度が適していました。
しかし、緊急度は低いが重要度の高い課題への貢献が適切に評価されないと、重要な課題が先送りされ、組織の持続的な成長が難しくなります。
長期的な成果を評価するには
緊急度は低いが重要度の高い課題への貢献は可視化しにくく、評価のハードルも高くなります。
Amazonのリーダーシップ・プリンシプルのような評価基準を文書化しても、それを理解し、運用し続けなければ形骸化してしまいます。
「私たちは日々の行動を通じてリーダーシップ・プリンシプルを示す責任があります。この原則は、Amazonのビジネスの進め方や意思決定の基盤となり、企業理念の実現を助けます。」
長期的な価値貢献を適切に評価するには、組織としての成熟が必要です。
縁の下の力持ちは評価されにくい
私は弊社では珍しくマネジメント思考があり、個人のパフォーマンス向上だけでなく、チーム全体の安定した高いパフォーマンスの実現や、顧客価値の最大化に取り組んでいます。
しかし、短期的な売上を生み出す「社内のビッグプロジェクト」のような分かりやすい成果に比べ、私のような貢献は適切に評価されていないと感じています。
実際、社内のNo.1プロジェクトをリードしていた時の方が、高い評価を得ていました。
(余談ですが、その時は「ご褒美ディナー」というリワードもありました。)
最近は、運用コスト削減や若手の育成にもつながる施策を講じ、非常に高い利益を生み出したと自負しています。
しかし、評価を求めると「もっとアピールが必要だ」と言われました。さらに深掘りすると、マネージャー陣からの評価は高いが、若手からの評価が低かったことがわかりました。
炎上案件の火消しが出来るヒーローは称賛されるべきですが、わかりにくくても火を起こさないことにも大きな価値があると私は考えています。
縁の下の力持ちを評価出来る指標を見つけよう
確かに、私自身アピールが苦手で、改善が必要だとは思います。
しかし、目立つ成果だけが評価される制度は未熟です。「見えにくい貢献を可視化する仕組み」を作ることで、縁の下の力持ちも適切に評価される組織にしていく必要があります。
最近、SaaSプロダクトを提供する急成長ベンチャー数社の組織づくりについて話を聞く機会がありました。そこで共通していたのは、短期・長期の両面から成果を積み重ねる評価制度を整え、それを社内に浸透させる努力を徹底していたことです。
彼らは、同じことを100回でも繰り返し伝え続け、組織の文化として定着させていました。
私も、短期的な売上や個人の突破力だけでなく、多様な貢献を評価できる指標を定性的・定量的に作り、それを浸透させていきます。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました。強い組織を作るために、評価制度の成熟は避けて通れないテーマです。
この記事が、読者の皆さんにとって少しでもヒントになれば幸いです。