見出し画像

#151 フルサイクルエンジニア⑤ ~境界が生まれる前兆~

こんにちは。ITベンチャーエンジニアのこへいです。

気付けばnoteの投稿も前回で150本!!引き続き発信を続けていきます。

前回は成長に伴いチームに境界が生まれるメカニズムと弊害について考えました。
今回は、私の経験を振り返り、境界が生まれるまでにチームの行動にどのような変化が生じ、どのように弊害が生まれてくるのかについて述べます。


〇エンジニア「さん」になりはじめると危険

共有・検討ではなく事後報告になる

これまでは同じ目標を共有し、価値を提供する一通りのサイクルを同じ目線で一緒に取り組んでいた仲間だったのが、依頼する側と依頼される側になってくると要注意です。

プロジェクトの増加などに伴い、これまでは一緒に行っていた業務を分担することになるというのを前回の記事で述べました。

顧客との打ち合わせに営業だけで参加する
課題の解決方法を開発チームだけで検討する

など、特定の人ごとに役割を分担し、チームに共有する形が取られます。この時点ではまだ境界は生まれません。

「顧客からこういう課題を共有された。」「こういう設計で進めようと思う。」という情報やたたき台をチームに共有し、互いの持っている情報をすり合わせて適切な意思決定を行うプロセスが生きていればフルサイクルなチームとして機能します。

しかし、役割分担が進み効率だけが重視されると、「この機能を作るのにどれくらいのコストがかかりますか?」「こういう設計で進めますね。」と、ただの見積もり依頼や事後報告になってくると注意が必要です。

チームが1つのサイクルのすべてのプロセスに関わることで価値を生み出していたのが、個々人の役割や立場での意思決定がなされる事でその価値損なわれることになります。

依頼する側と依頼される側になる

特に営業・エンジニア間では、営業はエンジニアに「この機能をこの期間でつくって欲しい」という依頼者になると、境界がかなり広がっているサインとなります。

『機能』を要望されるとエンジニアは「なんで?」とその機能を要求する背景を明らかにしようとします。そして、背景と現状のシステムやプロジェクトの期間などから最適な解決方法を導きたいからです。

このようなエンジニアの動きはこちらの記事でも触れています。

営業はその「なんで?」に対して、『いちいち質問が返ってくるしなかなか依頼を受けてくれないからやりにくい』と思うかと思います。

営業側は効率化を重視して、良かれと思って結論だけを共有しようとしてくれますが、エンジニアからすると機能だけ要求されてもなぜその機能が求められているのかがわからないと作るべきかも判断できないので、『なぜこちらから聞かないと背景をちゃんと共有してくれないのだろう』とまどろっこしさを感じます。

そうやって依頼する側と依頼される側の境界が生まれ、大きくなっていきます。

〇仕事のアウトプットの話に終始し合意形成のプロセスが抜け落ちると危険

効率を重視すると結論ベースのコミュニケーションになりがち

機能の見積もり依頼や事後報告になるのは、数を捌くために時間をかけずに意思決定を進めてどんどんプロジェクトを進めたいという気持ちの表れです。

結論だけを共有してどんどん作業を進められれば確かにスピードは上がるように思えます。しかし、繰り返しになりますが、チームが1つのサイクルのすべてのプロセスに関わることで価値を生み出せるのです。

営業が顧客と調整した機能が技術的な視点や既存のシステムとの整合性など完璧考慮されたモノであれば結論の共有でも良いです。しかし、そんな状況はほぼありえません。

キーエンスのように、価値を創出するプロセスが整備されていれば話は違うかもしれませんが、そのような組織は稀有かと思います。また、キーエンスも組織ごとの責務や役割が明確になっているからこそ、各チームごとに各チームのプロセスに集中できるのだと思います。

プロセスの整備なしに役割を分担し、境界のあるチーム内での結論ベースのコミュニケーションに終始すると、合意形成がすっ飛ばされるのでかなり危険な状態です。

結論ベースのコミュニケーションから抜け出すには

役割分担によって集めた情報や仮で作ったたたき台をベースに議論し合意形成していくプロセスが抜け落ちると、互いの利害を訴え合う、依頼する側と依頼される側に分かれてしまいます。

組織全体の枠組みとしては共通の目標を持っていたとしても、互いの目線はすり合わず境界を跨ぐメンバー間では異なる目標を追いかけるような状態となり、コラボレーションして価値を生みだすことは困難になります。

効率化を重視して、情報共有や合意形成のコミュニケーションが省略されるのは『忙しい』からです。
この状態を抜け出すためには、境界を無くしていくためのすり合わせのコミュニケーションが必要ですが、その時間はなかなか作れず、結論ベースの淡泊なコミュニケーションが続く負のループに陥りがちです。

この状況を改善するには、一度立ち止まって合意形成の時間を作ることや、チームの外側から境界が生まれないような責務を与え直すなり、マネジメントの介入が必要になるかと思います。


私自身は現場の真っ只中にいつつも、客観的に状況を把握できるようになりましたので、改善に向けてチャレンジしていきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!