#125 プロセスにこだわるには境界をなくせ
こんにちは。ITベンチャーエンジニアのこへいです。
前回はプロセスにこだわることの難しさについての話でした。
長期の視点で成果を出し続けるためには、しっかりとした土台を作る必要があります。土台を揺るがすような変更を加えずに開発プロセスにこだわる重要性、そしてこだわり続けることの難しさについて考えました。
今回は、プロセスへのこだわり続けるための困難を取りのぞく方法についての話です。
〇プロセスにこだわることの難しさとは
前回の記事では、2つの理由で運用を見据えた開発の難しさを説明しました。
①運用負荷を下げる適切な実装がわからない
②こだわることの意義・価値が理解されない
今回は②について掘り下げます。
受託のシステム開発の現場では、営業が顧客から要望をヒアリングしエンジニアに依頼するという構造があります。(エンジニアが営業と一緒に顧客から直接要望を伺うこともあります。)
その際に、「この画面をこういうふうに作ってください。」と最終的なアウトプットを依頼する形になることが多いです。
プロセスにこだわるエンジニアは、「なんで?」と返します。
そのアウトプットが欲しい背景を知ることで、もっと良い実現方法を提案出来るからです。依頼されたアウトプットをそのまま作るには相応のコストがかかるけれど、解決したい課題がそれであれば実はもっと簡単な実現方法が見つかるということがよくあります。
実はシンプルに実現できることを、システム的な複雑さを伴う方法で実現することは、運用負荷を増加させ今後の追加の要望に応えることが難しくなるという制約を生むことになります。
営業の目的は発注をもらうことなので、営業からすると最終的なアウトプットを依頼するのが楽であり、エンジニアの「なぜ?」に答えるのはめんどうです。システムのことがわからないので、依頼を素直に受けてくれないことにやりにくさを感じることもあるかもしれません。
また、顧客への提案や見積もりの期限が迫れば「時間がないから」と、こだわりきったよりよい実現方法を提案するチャンスもなく、顧客の求めるアウトプットを作らざるを得ないということもあります。
こだわることの意義・価値が理解されないと、こだわること自体が難しくなってしまいます。
〇プロセスにこだわる大切さに気づく難しさ
長期的に成果を出し続けるには、プロセスにこだわり強固な土台を作り、保つことが不可欠です。時には土台を揺るがす開発が必要なことがあっても、土台を立て直す期間を設けることをセットで考えるべきです。
営業側にその意義を理解いただくには、強固な土台を保つことがエンジニアだけでなく営業も組織全体にとっても「利」があることを理解いただく必要があります。
しかし、技術的な観点で運用や開発プロセスにこだわる理由を理解いただくのは難しいです。
プロセスにこだわることで、継続的に顧客の要望をスピーディーに実現できます。この状態が続くことが営業側にとっても良い状態です。
しかし、プロセスへのこだわりを欠いた状態が続き、実現スピードの低下がはっきりと認識できる状態になって初めてプロセスへのこだわりの大切さに気付けるのです。
痛みを伴ってはじめて気づけるという状態は健全ではありません。
顧客に継続的に価値を提供するというのが組織の目的であり、営業・エンジニアいずれにとっても共通の目的でもあります。
しかし、短期的な視点しか持てないと、多くの開発案件を受注し短期間で提供することが良しとされますが、長期的な視点ではプロセスへのこだわりを欠いた悪手であることがわかります。
そういった長期的な視点をチームにインストールするのがマネージャーの役割ではありますが、マネージャーもプレイヤーである場合には難しいです。
〇プロセスにこだわるには境界をなくせ
長期的な視点のインストールが難しい場合でもプロセスにこだわるためには、営業・エンジニアで共通の目的を持った小さなチームを構成することです。
例えば、「特定の顧客に継続的に価値を提供する」という共通の目標を持った専属のチームは、目的達成の方法をチームで一緒に模索します。まず、コミュニケーションの量を担保することができ、営業視点・エンジニアの互いの視点からの意見をすり合わせることにつながります。
プロセスへの共通の目的を達成するために、プロセスにこだわることも必要であると理解しやすくなります。
営業・エンジニアの境界をなくし共通の目的を持つだけで、本当にうまくいくのか?という疑問を感じるかもしれません。
が、それだけでも結構うまくいきます。
私が担当した直近のプロジェクトでは、少人数のチームでかなりプロセスにこだわれました。
毎日毎日プロジェクトを成功させるためのコミュニケーションを積み重ねることで、一緒にたかかう仲間意識が生まれ、互いの意見に真摯に耳を傾けることが出来るようになるものです。
ということで、プロセスへのこだわりを持ち続けることの難しさと、こだわるために実際に効果のあった方法を共有させていただきました。
また、大きな組織であっても境界なくすことで、プロセスへのこだわりを持ち続けられるのではという期待をもってはいます。
が、これはなかなか難しいチャレンジとなりそうです。
最後までお読みいただきありがとうございました。