33. 学校の「当たり前」をやめた。〜生徒も教師も変わる!公立名門中学校長の改革〜
こんにちは。コウです。
今回は、千代田区立麹町中学校校長工藤雄一さんの
「学校の当たり前をやめた。教師も生徒も変わる!公立名門中学校の改革」
を紹介します。
この本は、現代の学校教育の問題点を見つめ、新たな学校教育の形を実現している校長先生の、教育理念や具体的方策が書かれている本です。
例えば、
・宿題無し
・クラス担任禁止
・中間/期末テストも廃止 ・・・などなど
とかなり革新的な方策が書かれています。
このnoteでは、現在の学校の改善点と、新しい学校教育の提案について少し触れたいと思います。
学校は何のためにあるのか
そもそも学校は何のためにあるのでしょう。
学校は子どもたちが「社会の中でよりよく生きていけるようにする」ためにあると定義されています。
そのためには子どもが
「自ら考え、判断し、決定し、行動する」こと、
つまり「自律する力」を身につけさせるためにあります。
宿題について
①学力をあげるための宿題?
宿題は何のために出されるのでしょうか。
多くの考えは
・子どもの学力を高めること
・家庭での学習習慣を身につけさせる
というものです。
では果たして、その目的は宿題によって達成されるでしょうか。
例えば、数学の宿題が出されたとします。
理解が十分な子どもにとっては、その宿題がただの「作業」にしかなりません。
また理解が不十分な子どもにとっては、「重荷」に感じるでしょう。
学習の本質は、分からないことを分かるようにすることです。
そのためには2つの作業が必要です。
1つ目は、調べたり人に聞いたりすること
2つ目は、繰り返すことで定着させることです。
そして、本当に効果のある学習方法とは、自分に合った覚え方を身につけることです。
よくある例は、小テストで間違えた単語を◯回ノートに書いてくるというものです。「単語をノートに書くのが嫌だから覚えようとする」ことには効果があるかもしれませんが、重要なのは、どう覚えれば良いかを知り、実践していくことですよね。
つまり、勉強をしている時間よりも、その中身が何かということが重要です。
確かに、保護者からすれば、家で宿題をしている子どもの姿をみて安心するのかもしれません。
しかし、「学校で出された宿題をやる」という受動的な学習で、本当に学習での自律は実現されるのでしょうか。
②評価のための宿題?
教員が宿題を出すのは、多くの場合「評価」に必要だったり、学習の定着度をはかるときではないでしょうか。
評価の項目には「関心・意欲・態度」という項目が存在します。これは、はっきり言って目ではかることができません。つまり、何らかの方法で数値化することが分かりやすい指標となります。
例えば、授業中の挙手の回数や、提出物、宿題などで数値化する方法があります。
本来であれば、そういった数値に頼らずに、日々の子どもたちの様子や成長を観察し、読み取るのが教育の専門職がすべき役割です。
もちろん、評価には客観性も必要ですので、宿題以外の方法を取ることです。
以上のことから、宿題は、子どもたちの自律を促すことや、教員側の評価のために使う手段として、適切ではないということが言えます。
定期考査を廃止する
信じられないかもしれませんが本当に実現している話です。
もちろん根拠があります。
それは、成績をある時点で確定させることには意味がないからです。
実際には、テストを全て廃止するのではなく、各教科「単元ごとのテスト」にし、年5回の実力テストを行うシステムにしているようです。
①定期テストの意味
一般的には中間、期末テストが合計で5回といった形で定められています。
中学高校時代を思い返してください。定期テスト1週間前にもなれば、躍起になって出題範囲に取り組んだり、テスト直前に一夜漬けで勉強した人もいたのではないでしょうか。
短期間でテストのために猛勉強するのは、「テストの点数をとる」ことにおいては効果的ですが、学習効果を持続的に維持するのには、効果が低いです。
ほとんどの知識が、テストが終われば忘れ去られてしまうものになります。
そうしたプロセスを経て得た点数や評価は、一時的な「最大瞬間風速」に過ぎず、それを持って成績をつけることは適切な評価とは言えません。
また、この定期テストシステムが生み出す弊害として、
やるべきことを先延ばしにして、直前になってから集中して取り組むスタイルが身についてしまうことです。
短期集中といえば聞こえは良いですが、分からないことを先延ばしにするのは、学習の本質とは逆です。
②テストの目的
学校で行われるテストの目的は「学習の定着を図る」ものでなくてはいけません。
しかし、定期テストシステムの多くは宿題同様、通知表をつける・・・
つまり評価のために行われます。
ここに、目的と手段の違いが生まれます。
③単元テストはどうか
一方で単元テストはどうでしょう。
メリットは、各教科で単元が終わるごとにテストを行うことで、その単元の定着度が図れます。
麹町中学校では、単元テストを実施し、理解が不十分だった場合は再チャレンジできるシステムにしているそうです。
こうすることで、単元の内容を確実に定着させた上で、次の単元に進むことができるようになります。
デメリットは、テストの回数が増えることです。
同じ時期に複数教科のテストが重なれば、生徒の負担が大きくなります。
これは、教員同士によるスケジュール調整を行うことで回避されているようです。
いずれにせよ、複数単元がまとめて出題される定期テストよりも、各単元で細かく分けて行われる単元テストの方が、学習の定着を図る意味では非常に効果的です。
④通知表の問題
定期テストがなくなると、通知表をどうつけるかという問題が出てきます。
仮に単元テストで全員が満点を取ったら「全員に5」をつけてよいのかという疑問も生まれます。
答えは、全員に「5」をつけて良いそうです。
むしろ、全員の成績をあげるのが教員の仕事です。
そもそも通知表は相対評価ではなく、絶対評価で行われます。
しかし全員がかなり高い評価を受けている学校はありません。
これは、教育委員会から「不適切だ」という指導が入るからです。
この評価が「不適切」とされるのは、推薦入試に伴う「内申点」に影響が出るためです。
しかし、国の方針として、絶対評価で成績をつけるとされているのであれば、全員が「5」でも問題はありません。
学校間での差が生まれる、といった指摘もあるかもしれませんが、絶対評価で成績をつけると言う方針のもとに入試システムが構築されることが、順番としては正しいはずです。
現在の入試システムには「子どもの成長と適切な評価」とは別の、目的と手段が取られているということです。
最後に
この本には他にも、クラス担任禁止や生徒指導の見直しなど、社会と学校の矛盾点を突き、具体的な改善策と、その根拠が多く書かれています。
教育現場で働いている方や、会社のシステムに疑問がある人は、是非お勧めします!
最後までご覧いただきありがとうございました!
ではまたヽ(^^)