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#小説
社怪人デビュー #いつかは古の伝承に
見知らぬ男の人に声をかける勇気はない。元々激しく人見知りをするうえに、異性と話すのは苦手。苦手、というより今まで話す機会なんて殆どなかったから、どうしたらいいのか想像もつかない。それに、昨今どこで何が起こるかわからないという。本当に、怖い世の中になってしまった。
「あ、あの……」
私は深夜、人気のない住宅街を歩く女性を選んで声をかけた。けれど、相手は振り向きもせず行ってしまう。慌てて追いか
ともだち #いつかは古の伝承に
誰もいないはずの深夜の学校で、3階の女子トイレに近づく不審な影があった。
通常3つしかないはずの個室の扉。その、4つ目の扉の前で、影は止まった。
こん、こん、こん。
3回ノックする。
返事はない。
こん、こん、こん。
もう3回ノックして、不審な人物は扉の向こうへ声をかけた。
「は~な~こ~さ~ん……。」
静かに響く、少女の声。
すると、しばらくしてから答える声がした。
二宮くんはちょっとアンニュイ #いつかは古の伝承に
いくら本から知識を得ることが好きだとはいえ、同じ本を繰り返し読み続けるのはつらい。昼間ともなれば、僕はページをめくることさえ許されない。ずっとずっと、同じ本の同じページを繰り返し読み続けるほかないのだ。
そもそも、僕は読書家というわけではない。もちろん本を読むことも好きなのだが、必要だと思ったから勉学を頑張ったのであって、「ご趣味は?」「読書です」と答えたいわけではないのだ。そのあたりを、最近
物思ふ美人 #いつかは古の伝承に
生きづらい世の中になった。
特に、私たちが存在しやすいはずの大都市が、私たちの活動を困難にしている。
人通りの絶えない大通り。いつまでも消えないネオン。明るすぎる街は私たちには生きづらい。けれど、そういった大都市ほど私たちの命を保障するのだ。
私は口裂け女と呼ばれる都市伝説。ご存じだろうか。
昔は知っているかどうか確認するまでもなく、ほとんど誰もが知っているような都市伝説だった。今では
【小説:1,823文字】運の良い男
いつだったか、"運"という言葉を知った時から気づいていた。俺は運がいい。
たとえば小学五年生の運動会。五年生は毎年騎馬戦をやるのが常だったが、俺は騎馬戦には絶対に出たくなかった。乗るならまだしも、乗られるなど御免だったが、身長も高く体格も悪くなかった俺は、どう考えても乗られる側だったからだ。ある日、どうにかして騎馬戦に出ない方法はないものかと思案しながら歩いていて、うっかり側溝に落ちて足を挫(