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二宮くんはちょっとアンニュイ #いつかは古の伝承に

 いくら本から知識を得ることが好きだとはいえ、同じ本を繰り返し読み続けるのはつらい。昼間ともなれば、僕はページをめくることさえ許されない。ずっとずっと、同じ本の同じページを繰り返し読み続けるほかないのだ。
 そもそも、僕は読書家というわけではない。もちろん本を読むことも好きなのだが、必要だと思ったから勉学を頑張ったのであって、「ご趣味は?」「読書です」と答えたいわけではないのだ。そのあたりを、最近の人たちはどの程度わかってくれているのだろうか。
 なんて、こんなことを僕が主張してしまうと、他の学校にいる同胞たちに怒られてしまうな。中には読書が趣味だという者もいるのだから。

 最初の頃は、本を読むことができるという事実が嬉しくて、初めて本を手にしたその晩にすべて読み切ってしまった。次の晩も、さらにその次の晩も、飽きもせず同じ本を最初から最後まで繰り返し読み続けた。
 何度読んだ頃だろうか。さすがに飽きたなと思ったが、別の本を手にすることはできない。ただでさえ深夜の学校で銅像が走っているという不気味な話題のもとになってしまっているというのに、毎日手にしている本が違っているなどというわけにはいかないだろう。しかも、深夜の学校で走っているという話ならば、人が見に来た時にはきちんと元のところに居れば「ずっとここに居ましたけど何か?」で済むが、手にしている本が違うとなると誤魔化しようがない。

 まったくもって難儀なものだ。
 こんなことになるのなら、最初から一日に一ページずつじっくりと読み進めればよかったと思う。何十回かは読んで楽しむことができた本なのだから、一日に一ページずつじっくりと読んでいれば、もうちょっと飽きるまでの時間は長かったのではないだろうか。
 これも、「今思えば」という反省なのだから、人とは失敗して成長するものなのだなぁと改めて思う。しかし、如何(いかん)せんこの反省を活かせないのが残念だ。

 失敗し、反省し、しかしそれを活かすことができない。
 僕は、何のために存在しているのだろうか。ちょっと鬱々としてきてしまった。仕方ない、ここはひとつ本でも読んで気を紛らわそう。

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