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看護薬理学

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【医療・介護関係者向け】看護学校での薬理学授業の参考資料として作成したものです。 実際に医療現場で活用するには、もう一歩、各薬剤について踏み込む必要がありますが、あくまでも、導入…
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記事一覧

12-4 甲状腺関連治療薬

甲状腺甲状腺は10-20 g の小さな臓器であり、気管を前から取り囲むように配置しており、甲状腺を裏から見ると、副甲状腺がある。 甲状腺の働き: 甲状腺には、内分泌腺として、ホルモンを分泌し、体の機能を調節する重要な機能を担う。 甲状腺ホルモンの産生にはヨードが必要であるが、日本人は海藻(のり・ひじき等)を食べる習慣があるため、ヨード欠乏症は少ないと言われている。 甲状腺ホルモン トリヨードサイロニン:T3 サイロキシン:T4 カルシトニン 副甲状腺 副甲状腺も

12-3 糖尿病治療薬/経口血糖降下薬

糖尿病治療薬インスリンの病態に応じて、適切な治療薬が選択されます。 インスリン分泌障害 インスリン分泌障害には、インスリンを補うためのインスリン製剤、インスリン分泌を促進する薬が用いられます。 インスリン分泌を促進する薬には、血糖非依存性と血糖依存性があります。血糖依存性とは、血糖が高くなり、インスリン分泌を増加する必要があるときに、インスリン分泌を促進する作用を示します。 インスリン抵抗性 インスリン抵抗性を改善する薬には、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬があります。

12-2 糖尿病治療薬/インスリン

糖尿病治療薬には、たくさんの種類があります。大きく分けると、 インスリン分泌を補う薬 インスリンを補充する インスリン分泌を刺激する インスリ抵抗性を改善させる薬 血糖値を下げる薬 があり、病態に応じて、適切な薬剤が選択されます。 ただし、妊娠糖尿病は、血糖値の厳密なコントロールが必要であるため、インスリンの適応となります。 糖尿病の治療目標糖尿病の治療として、根治は困難であり、合併症を防ぎながら、健康な人と変わらない QOL を維持し、寿命を確保することが目標

12-1 糖代謝

体内で糖はどのように調節されているのか?全体の流れ 糖は、重要なエネルギー源として、生命活動を行うために必要な物質であり、血中の糖濃度は、一定になるように(一定の範囲内に)制御されています。 図には、体で糖を調節する仕組みをまとめています。左側には、血糖値を増やす要因を、右側には、血糖値を減少させる要因をまとめています。 大きな流れとして、食事から吸収した糖(↖️左上)は、血液中を流れて全身を巡り(中央)、全身で活用されます(↘️右下)。 ↗️(右上)使用せずに余った

11-8 泌尿器に作用する薬物

排尿の機序蓄尿のメカニズム 腎臓で作られた尿は、膀胱に貯められて、排出されます。「尿を溜める」・「尿を排出する」下部尿路機能は、交感神経・副交感神経・陰部神経によって調節されています。 6-2 自律神経系による臓器の調節|こはく堂薬局 (note.com) ○陰部神経 陰部神経は、体制神経であり、自律神経系と異なり、意思でコントロールできます。陰部神経は、外尿道括約筋を収縮させる(尿の出口を閉める)ことで蓄尿に働きます。 ○交感神経 交感神経の受容体は、膀胱の袋自身

11-7 男性ホルモン関連薬

男性ホルモンの調節機構男性ホルモン(アンドロゲン)は、精巣のほか、副腎皮質でも作られています。 男性ホルモンの分泌は、上位中枢からの制御を受けて調節されています。調節経路には、大きく分けて二つあります。 視床下部から放出される LH-RH によって、下垂体から LH が分泌されます。これは、精巣からのテストステロン分泌を促します。 視床下部から分泌される CRH は、下垂体から ACTH 分泌を促し、これは、副腎性テストステロン分泌を促します。 男性ホルモンの合成経

11-6 女性ホルモン関連薬

エストロゲン受容体エストロゲン受容体は、生殖器だけでなく、全身に存在しており、さまざまな生理作用と関連しています。 肝臓では、血液凝固因子の産生を促進します。また、LDL-コレステロールを増やし、HDL-コレステロールを減少させる働きもあります。 骨では骨吸収を抑制するため、骨密度を増加させる作用があります。 女性が閉経後、エストロゲンの産生が減少すると、これらのエストロゲンの加護がなくなるため、更年期症状だけでなく、脂質代謝異常症や骨粗鬆症のリスクが増大します。 そ

11-5 生殖補助医療

不妊症夫婦が妊娠を希望し、1年以上性生活を行っているにもかかわらず妊娠しない場合を不妊症といいます。年齢が上がると妊娠しにくく、治療効果も得にくい傾向があるため、1年以上妊娠しない場合は不妊症に該当するので、悩んでいる方には早めに相談するように勧めるのがよいです。 不妊症の原因には、女性側の要因と男性側の要因、両方があります。 不妊症の要因 不妊症の要因には、以下のようなものがあります。 内分泌・排卵因子 卵管因子 子宮因子 頸管因子 男性因子 内分泌・排卵因

11-4 経口避妊薬

経口避妊薬望まない妊娠を避けるための手段として、避妊は非常に重要です。 事前に可能な避妊法として、経口避妊薬のほか、子宮内避妊具(IUD)、コンドームなどがあります。経口避妊薬は、女性主体にできる避妊法であり、正確に服用すれば、確実な避妊効果が期待できます。 避妊をしなかった、または避妊に失敗した時、望まない性交渉の後などから、妊娠を阻止する緊急避妊法には、緊急避妊薬や銅付加 IUD の装着があります。 経口避妊薬(OC)低用量経口避妊薬や低用量ピルとも呼ばれます。 成分

11-3 月経困難症

月経困難症とは?月経困難症とは、月経に随伴して起こる病的症状のことをいい、月経痛や随伴症状が現れます。月経痛では、強い下腹部痛や腰痛を生じ、随伴症状として、頭痛、嘔吐、下痢や気分変動等を伴うこともあります。 月経困難症は、器質性と機能性に大別されます。 器質性月経困難症は、子宮や卵巣、骨盤内に痛みを生じる原因疾患があるため、原因疾患の治療が必要です。痛みの強い月経困難症の多くは、子宮内膜症や子宮筋腫が潜んでいる場合があります。 また、機能性月経困難症は、子宮や卵巣、骨盤

11-2 更年期障害

更年期障害更年期障害とは? 女性は、50歳前後の年齢で閉経を迎え、この前後10年間(45〜55歳)を更年期をいいます。 年齢を重ねるごとに、卵巣の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで、ホルモンのバランスが崩れ、心身にさまざまな不調が現れることがあります。 ホルモン調節の変調 卵巣機能の低下によりエストロゲンが減少します。 そこで、体内では、エストロゲンを増加させようと、エストロゲンの分泌を増加させるための命令(ゴナドトロピン放出ホルモン

11-1 女性ホルモン

薬物治療の原則女性生殖器の疾患に関連して、女性ホルモンに関連する薬剤を使用する時の基本的な考え方には、次のようなものがあります。 性ホルモンの産生が低下している場合 性ホルモンの産生が低下しており、不足している場合には、そのホルモンを補充・増強させます。 産生が低下したために起こる状態には、更年期障害や骨粗鬆症があります。 更年期障害の場合は不足したエストロゲンを補充したり、骨粗鬆症の場合は、エストロゲン受容体を刺激することで、作用を発揮させるような薬物を使います。

10-6 腸疾患治療薬

過敏性腸症候群治療薬(IBS)過敏性腸症候群(IBS)とは、検査では異常は見られない(原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がない)にも関わらず、大腸・小腸由来の消化器症状(下痢や便秘、腹痛など)が続く疾患である。 便の正常により、便秘型(IBS-C)、下痢型(IBS-D)、混合型(IBS-M)、分類不能型(IBS-U)に分類される。 精神的なストレスや自律神経の乱れによって、症状が現れると考えられている。 IBS 治療薬IBS の治療のためには、規則正しい生活とストレスを

10-5 止痢薬・整腸薬

下痢通常、小腸や大腸の上皮細胞では、電解質や栄養素が能動輸送されている(ポンプなどの働きで、積極的に運んでいる:分泌(体内→管腔)、吸収(管腔→体内))。それによって生じた浸透圧差によって、水の吸収・分泌が行われている。 通常は、水や電解質は、吸収量>分泌量とバランスが保たれているが、何らかの理由でバランスが崩れ、吸収量<分泌量となることで、下痢になる。 吸収量の減少 : ・腸管運動異常:   腸管運動が亢進:腸内容物の通過が早い=水分が吸収できない   腸管運動が低下: