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11-2 更年期障害


更年期障害

更年期障害とは?
女性は、50歳前後の年齢で閉経を迎え、この前後10年間(45〜55歳)を更年期をいいます。
年齢を重ねるごとに、卵巣の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで、ホルモンのバランスが崩れ、心身にさまざまな不調が現れることがあります。

女性ホルモンで守られていたバリアが失われる状態

ホルモン調節の変調

卵巣機能の低下によりエストロゲンが減少します。
そこで、体内では、エストロゲンを増加させようと、エストロゲンの分泌を増加させるための命令(ゴナドトロピン放出ホルモンや性腺刺激ホルモンの分泌)が増加します。
しかし、卵巣機能の低下によりエストロゲン分泌は増加できません。
FSH や LH は増加しているのに、エストロゲンは減少しているままという、ホルモン調節が乱れた状態になります。これが、神経系の調節の乱れにつながり、自律神経失調症状が現れます。

薬物治療

更年期障害の代表的な症状には、自律神経失調症状、精神神経症状、その他があります。これは、卵巣機能低下によりエストロゲンが減少しているために症状が起こっているため、薬物療法の基本的な考え方として、「不足しているホルモンを補う」ために、ホルモン補充療法(HRT)を行います。
他にも、症状を緩和させるための対症療法として、抗不安薬・抗うつ薬や漢方薬を併用することもあります。

ホルモン補充療法

HRT は、子宮の有無によって、基本的な方針が異なります。
子宮を摘出した方の場合、不足したエストロゲンを補うために、エストロゲン単独療法を行います。

子宮がある方の場合、エストロゲン製剤だけでなく黄体ホルモン製剤を併用します。
なぜなら、エストロゲンは、全身でさまざまな作用を示しますが、その一つに、子宮内膜増殖作用があります。子宮内膜増殖作用を抑えるために、併用します。

ここで言う”ホルモン補充”とは、
若い時のレベルまでホルモン量を増やすのではなく、急激に減少したエストロゲンを、症状が軽減される程度に補うために補充をするイメージです。

ホルモン補充療法の投与経路には、経口投与と経皮吸収の2通りがあります。

経口投与

内服は投与方法として「簡便」なことが最大のメリットではありますが、内服した後、吸収された薬剤は肝臓を通過すします。その際、エストロゲンは肝臓で血栓や脂質代謝に影響を与える可能性があります。経口投与した薬剤は、小腸から吸収された後、門脈を通り肝臓を通過するため、肝臓が薬剤に晒される結果、経皮投与と比較して、肝臓での副作用が起こりやすくなる可能性があります。

経皮吸収

貼付剤とジェル剤の2種類があります。
貼付剤
貼付剤は、経皮的に吸収された薬剤が持続的に全身循環するため、血中濃度の持続が可能です。下腹部・臀部のいずれかに貼付して使用します。
ジェル剤
指示された量のジェル剤を、皮膚に塗布します。塗布した部位から、経皮的に薬剤が吸収され、持続的に全身循環するため、血中濃度の持続が可能です。

  • ル・エストロジェル:手首から型にかけて、広く塗り広げる

  • ディビジェル:大腿部もしくは下腹部に、決められた範囲に塗布する

ジェル剤というと、鎮痛薬のように局所での作用をイメージするかもしれませんが、これは、皮膚から血中に吸収され、全身で持続的に作用することを目的に開発された製剤です。

子宮の有無によってエストロゲン単独、もしくは、エストロゲン・プロゲステロン併用療法を選択します。

HRT の副作用と対策

比較的頻度が高い副作用として、乳房や下腹部のはり、不正出血があります。
これらは、特に投与初期に起こりやすいですが、だんだん慣れてくる症状でもあります。症状が辛い場合は、薬の調節(変更)で対処します。
エストロゲンが肝臓に作用することで起こりうる副作用に、静脈血栓症があります。エストロゲンは、肝臓での血液凝固因子産生を促進させるため、副作用症状として静脈塞栓症が現れる可能性があります。
そのため、HRT を行う時には、必ず、対策も合わせて行い、予防的に対策することが重要です。

  • 脱水を避け、適度に運動する

  • 禁煙:静脈血栓症リスクが増加するため、禁煙

  • むくみがないか、足を観察する

病院では、定期的にエコー検査などを行います。


女性ホルモンの調節機構については、こちらの記事で説明しています。

記事は以上です。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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