歌手もオケも高水準。なのに感動できない新国立劇場「さまよえるオランダ人」
新国立劇場オペラパレスで、ワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人」を見る。
【ダーラント】松位浩
【ゼンタ】エリザベート・ストリッド
【エリック】ジョナサン・ストートン
【マリー】金子美香
【舵手】伊藤達人
【オランダ人】エフゲニー・ニキティン
【指 揮】マルク・アルブレヒト
【演 出】マティアス・フォン・シュテークマン
【美 術】堀尾幸男
【衣 裳】ひびのこづえ
【照 明】磯野睦
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】髙橋尚史
今回は有料記事にするかどうか😅
オペラは初心者みたいなものなので、大した文章が書けるとも思わない。
大目に見てください笑
私のオペラ熱が再燃したのは、新国立劇場でゼッフィレッリ演出のヴェルディ「アイーダ」を見たのがきっかけだった。
あのゴージャスな舞台が言わばオペラ鑑賞の基準になってしまったがために、以降の作品のセットがどうもしょぼく感じて仕方ない😂
「アイーダ」以後に新国立劇場で見た「リゴレット」、「サロメ」、「ラ・ボエーム」、「こうもり」、「エフゲーニ・オネーギン」がすべて初見なのだから、いかに私がオペラ音痴かわかっていただけるだろう😅
CDで聴いたことのある作品もあるが、CDやDVDでオペラに親しむ習慣がなく、どちらかというとオペラは苦手にしてきた。
ただ、ヘンデルやモーツァルトのオペラは例外。聴き流してるだけでも楽しいので、ときどき聴いていた。
初見のオペラはコンサート形式でなく、なるべくオペラ形式で見たいと思っている。
「オペラは音さえ聴ければいい」みたいな考えの人もいるが、歌手が演技してこそオペラである。やはり一度は舞台で見ておきたい。
ワーグナーのオペラは長い間、大の苦手にしてきた。
昔、キース・ウォーナーが演出した「ニーベルングの指環」(通称:トーキョー・リング)の再演の「ジークフリート」を見に行き、あまりに疲れて第1幕の後に帰ってしまったのだ。
当時は新国立劇場の4階席が恐怖だった。演奏中に具合が悪くなっても、座席の前の空間が狭いから、外に出るには通路の全員に立ち上がってもらわないといけない。
それで「ドン・ジョヴァンニ」もたしか第1幕の後に帰ってしまった。「アイーダ」で初めて長尺のオペラを鑑賞できる自信がついた(体調がそこまで回復したのを実感した)のである。
ワーグナーで好きな音楽といえば、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲と「ジークフリート牧歌」くらい。
他にも有名な管弦楽曲はいろいろあるのに、好きと言えるほどの曲がない。ワーグナー音痴なのである😅
今日「さまよえるオランダ人」を見て、「ワーグナーのオペラを最後まで見る」という《死ぬまでにしたいことリスト》が一つ達成できた笑
私はオペラ鑑賞の経験は乏しいが、他の記事で書いたようにコンサート通いと並行して蜷川幸雄や美輪明宏、小演劇の芝居を見てきて、歌舞伎や能・狂言といった古典芸能にも親しんできた。
そういう雑多な舞台鑑賞の経験が役に立っているのかはわからないが、今日の舞台は私にはどうもつまらなかった。
まずは大雑把な採点を。何に不満があったのかわかりやすいと思う。
「さまよえるオランダ人」採点表
歌手……★★★★☆
指揮・オーケストラ……★★★★☆
合唱……★★★★★
演出……★★★
美術……★★
衣装……★★
ストーリー……★☆
作劇……☆
歌手とオーケストラには不満がなかった。オランダ人役は前2公演ではカヴァーキャストの河野鉄平が務めたが、エフゲニー・ニキティンが無事復帰。堂々たる存在感を発揮したパフォーマンスだった。
ダーラント役の松位浩もドイツのオペラハウスで終身契約という実力派。「新国立劇場の顔」とも言える妻屋秀和に劣らない、ふくよかで張りのある美声だった。
ゼンタ役のエリザベート・ストリッドは飛び抜けて美声とも思わなかったが、エリック役のジョナサン・ストートンは朗々たる美声で、かつ声量もあるので圧倒された。
オケは東響。東響と東京フィルが新国立劇場のピットに入ることが多いようだ。
おまけに東響は、音楽監督のジョナサン・ノットとリヒャルト・シュトラウスのコンサート形式オペラに何作も取り組んでいる。オペラのオーケストラとしても、着実にキャリアを重ねている。
マルク・アルブレヒトの指揮は、音楽が出しゃばって気を散らすことなしに舞台に集中できたので、素晴らしかったと思う。
今日一番感動したのは新国立劇場合唱団である。第3幕冒頭の合唱だけのシーンで、音楽がどんどん高揚していく中でも美しい精度を保ったままだったので驚嘆した。
それらキャストの頑張りに比べると、演出や美術・衣装にはやや不満が残った。
第1幕はノルウェー船が入江に停泊するところから始まるが、でかい木の板みたいなのに水夫たちがたくさん乗ってて「筏?」と思っちゃった😂
他の演出でどうやってるのか知らないから好き勝手言えるのだが、船には見えなかったなぁ😅
舞台写真はこちらの公式HPやXで見ることができる。
衣装に関してファッションセンス皆無の私があれこれ言うと頓珍漢になりそうだが、白いマントを着たオランダ人はプロレスラーの橋本真也に見え、ゼンタは水色のワンピースに白いよだれかけ風で、年のわりに幼い見た目。ダーラントは朱色のトレーナーにベージュのパンツと黒ブーツという「趣味はDIY、特技はソーセージ作り」風なおじさんといった感じだった😅
今回私が一番不満に感じたのはストーリーと作劇。
ストーリーに関しては、フォロワーさんから「ワーグナーにストーリーを期待する方が悪い」と功芳風なことを言われたので、そう割り切るとしても、作劇には大きな不満が残った。
これ、舞台で上演する必要ある?😅 視覚的な快楽に乏しい作品だと思った。せいぜい最後にゼンタが海に飲まれていくシーンがドラマティックなくらい。
アリアがとにかく長い。終わった後に拍手する余地もないから、気分転換できないままワーグナーの旋律に浸らされ続ける。
ワグネリアンにとってはそれがたまらないのだろうが、ヘンデルやモーツァルトの軽やかなオペラが好きな私にはつらい。この長さ(休憩込みで2時間45分)でもしんどかった。
「ブルックナーが苦手」とか散々言ってきたが、ワーグナーの方がはるかに話が長かった😵
舞台に二人で突っ立って長々アリア歌うんやったらセットいらんやん。コンサート形式でええやんと思ってしまった😓
ストーリーも感動の要素は皆無。「ヒーローに片思いしてるヒロインを、そばで支えてる男子が好きでいる」っていう構図は世界共通なんですかね。
「無償の愛」でもないだろうし、チャップリンの「街の灯」や「サーカス」なら何回でも泣くけど、「さまよえるオランダ人」の感動のツボは?🥺
ストーリーはどうあれ、ワーグナーの壮大な音楽に酔うのがファンは好きなのだろう。
オペラに筋の通ったストーリーは不要。「魔笛」だって頓珍漢な展開だ。
でも「魔笛」は許せるのだ😅 「さまよえるオランダ人」以外だと、「エフゲーニ・オネーギン」もひどかったね。
芋くさい女性をフッた男がしばらくして彼女に再会したら、魅力的な未亡人になっていた。今度は自分から告白したら見事にフラれて、「俺の人生、台無しだ!」って嘆く話。どこで感動せえっちゅうねん😂
「さまよえるオランダ人」は、すべてゼンタの妄想とした演出もあるようで、そっちの方がよっぽど見たい。
ゼンタが海に身を投げるシーンも、今回の演出では実際に飛び込むわけではなく、オランダ人の船の舳先に立ったゼンタのまわりに大量のスモークが発生し、スモークの奥でぐるぐる旋回して小さくなって消えていく演出だったので消化不良感があった。
オランダ人は最後、大の字に寝そべる。呪いから解放されたようには見えなかったけどなぁ😅
第2幕の終わりでも、オランダ人を想ってハイテンションのゼンタが床に大の字になったまま幕が下りた。大の字に寝かせるのが好きな演出家なのか?🙃
普段にもましてアホみたいな感想で恐縮ですが、三澤洋史指揮の新国立劇場合唱団の精度は素晴らしいですね。いつか合唱団単体のコンサートにも行ってみたいと思いました😊
*今回は有料記事にしません笑 お気に召したらチップをいただけたら幸いです🤑