【初心者向け】クラシックコンサートの選び方
私はクラシックコンサートに行き始めて27年になります。16歳からです。
我ながらよく飽きずに続いてるもんです😅
それだけクラシック音楽は奥が深い、魅惑的な世界なのです☺️
さて、コンサートゴーアーの皆さんは各オーケストラの年間スケジュールを見て「この演奏会が面白そう」と“当たりをつける”のですが、コンサートに行ったことのない人たちはどうやってコンサートを選んだらよいのでしょうか?
私がこの疑問を思いついたのは、先日のカーチュン・ウォン/日本フィルの定期演奏会においてでした。
ミャスコフスキー、芥川、ヤナーチェクという、どう見ても「玄人向け」のプログラムです。
私の横にいた老夫婦はプログラムをしきりにめくっていて、いかにも退屈そうでした。
そして、その姿はコンサートに来慣れない人たちに見えました。
この渋いプログラムを「わかってて」来たのだったら、プログラムとにらめっこしてるはずがありません。
おそらく何となくコンサートを選んで、「間違えて」しまったのではないか?
私はそう結論づけました。
なぜもっとわかりやすい名曲のコンサートに行かないのでしょう?
「なぁ、婆さん。今週末クラシックコンサート行ってみるか?」
「そうねぇ。サントリーホールって有名だからそこにしましょうか」
こんなノリで選んでしまって、たまたまミャスコフスキーや伊福部だったとしたら悲劇としか言いようがありません😭
伊福部の「チェロとオーケストラのためのコンチェルト・オスティナート」は初めて聴きましたが、私も退屈したくらいです😅
さすがにプログラムめくったりはしませんでしたけど、初めて聴く曲が楽しめるって珍しい方です。
クラシックコンサートにはぜひ気軽に来てほしいのです。
ただ、演奏会を選ばずにふらっと来て楽しめるかというと難しいです。
だって、テレビの電源を入れてたまたま映った番組があなたの好みである可能性って低いのではありませんか?
やはり選ばないといけないのです。
いまはAmazonもYouTubeも何でもユーザー仕様にカスタマイズされてるから、「選び取る」重要性が忘れられがちです。
さて、コンサートを選ぶ上で指標にしてほしいのが「プログラムを読まずに最後まで聴けそうな曲かどうか」です。
退屈だからといってプログラム読むのはやめてください。音がうるさいです。
いつから鑑賞のお供みたいになったんですかね。
ふりかけじゃないんですから、白飯だけを味わってください。
事前にYouTubeで演奏曲をざっと視聴するのをおすすめします。
ざっとでいいです。ただ、時間に余裕があるなら全部見た方がいいです。
YouTubeですら飽きるようならコンサートならもっと飽きます。
歌詞のない長い音楽を聴く習慣のなかった人がいきなりクラシック聴いても退屈なのは当たり前。
聴き取れる情報量が少ないんだと思います。BGMっぽく感じてしまうのかも。
クラシック好きの人はドラマや演劇を見ている感覚で聴いてると言えそうです。
指揮者には指揮者のドラマ、楽団員には楽団員のドラマがあります。
頭の中で過去の名演奏と比較して楽しんでいる方もいるでしょう。
同じ演奏を聴いていても、初心者とクラシックマニアとでは受け取るものの量に大きな差があるのです。
いまは何でもタイパ(タイムパフォーマンス)重視。
ドラマや映画を倍速で見て「わかった気になる」のが流行ってます。
物語はセリフとあらすじだけでできてるのではありません。
倍速で理解した気になってるのは噴飯物です。
そんな時代だからこそ、ぜひクラシックの大曲に感動できるようになってほしい。
一生の財産です。クラシックは宝物のような曲ばかりです。ぜひその価値を知ってほしい。
コンサートの選び方は人によって異なります。
5つのタイプに分けてみました。
①最初からガチ勢の人
対象:とにかく本格志向の方。高い芸術性を求める方。クラシックの演奏の違いはわからないけど、バルザックやフェリーニは好き、みたいな方。
定期演奏会に行きましょう。
定期演奏会はオーケストラの晴れ舞台。一番気合が入っているお披露目の場です。
交響曲ならベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」、ブラームスの交響曲第1番、ブルックナーの交響曲第8番、マーラーの交響曲第9番、ショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」などは、一度は聴いておきたいオーケストラの大曲。
たとえ退屈したとしても、これらの大曲を一度は生で聴いたという体験はあなたの人生の財産になるでしょう。
『源氏物語』や『カラマーゾフの兄弟』を通読した、というのと一緒です。
交響曲ならサン=サーンスの第3番「オルガン付き」がパイプオルガンの入る大迫力の曲で、生で聴く醍醐味抜群。
ロック好きの方は、協奏曲ならベートーヴェンやモーツァルトより、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番やショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の方が親しみやすいかもしれません。
さて、定期演奏会といっても「誰の指揮で聴くか?」という問題があります。
しかし定期演奏会ならそれなりの指揮者が振るので、曲で選んでよいと思います。
「大野和士より高関健の方がいいかもよ」と私などは言いたくもなるのですが、これはあくまで私の好みでしかありません。
こういったバイアスが初心者にはかえってよくないのです。先入観なしでいろいろ聴いてみるのがよいでしょう。
②とにかく易しいのがいい人
対象:長いと飽きる人
トーク付きのコンサートがよいでしょう。短い曲をいろいろやってくれて、合間に司会者のトークがあるやつ。青島広志さんや朝岡聡さんが定番ですね。
ただ、こういうコンサートはお子様ランチに似たところがあり、楽団員の本気は期待できません。
皆さん仕事だし、普及の気持ちもすごくおありだと思いますが、定期演奏会とは気迫が比較になりません。
ブラックコーヒーが飲みづらいからカフェ・オ・レなら、というタイプの人にはいいかも。
③芸術鑑賞=勉強の人
対象:芸術を自分の感性で楽しむより、知識で理解したい人。美術展の解説パネルはすべて読みたいタイプの人。
レクチャーコンサートがおすすめです。②の司会者のトークは軽妙な場繋ぎですが、レクチャーコンサートは演奏家なり専門家が聴きどころを解説してくれたあとに鑑賞します。
私は自分の感性で聴くタイプなのでこういうコンサートはあまり好みませんが、観光地に行く前に歴史的背景を調べたり、とにかく知識で物事を捉えたいタイプの人向きと言えるでしょう。
ただ、この手の人たちは結局他人の解釈をなぞってるだけなのです。
芸術鑑賞は自分の感性で向き合った方が圧倒的に楽しいです。
なお、しつこいですが、演奏中にプログラム読むのはやめてください😅
④一度は生で聴きたい曲がある人
対象:ベートーヴェンの第九、ホルストの「木星」、プッチーニの「誰も寝てはならぬ」、みたいな有名クラシック曲を生で聴きたい人
自分が聴きたい曲があるのはすごくいいことです。
ただ、聴きたい部分は結構あっという間に終わります。
ベートーヴェンの第九なんて、例の「歓喜の歌」が出てくるまでが長いんです。
だいたい第3楽章で初心者の8割は寝ます。
だから、やはりYouTubeで事前視聴を勧めます。
自分が聴きたい部分以外もそれなりに楽しめそうなら行かれるとよいでしょう。
一回でも通して聴いておくと、次に聴いたときに先の見通しが立つから、かなり気持ちが楽だと思います。
終わりが見えないから長く感じて疲れるんです。
クラシック初心者こそ、「予習」はおすすめです。
⑤知ってる演奏家・話題の演奏家を聴きたい人
対象:フジコ・ヘミングや辻井伸行、かてぃんを生で聴いてみたい人
クラオタのはしくれの私も、昔は知ってる指揮者といえばカラヤン、小澤征爾、佐渡裕くらいでした😅
昔は佐渡さんよくメディア出てましたからね。
そういうわけで、宇野功芳が推薦する小林研一郎や朝比奈隆に加えて、佐渡裕のコンサートもよく行ってました。
コンサートに行くと公演チラシの束をもらえます。
こういうのを家に帰って一枚一枚眺めてるうちに指揮者や演奏家の知識が増えてくるんです。
最後に、
コンサートは自分の直感で選ぶのが大事です。
他人のおすすめは当てになりません。
本だってそうです。大きな新刊書店に行って、自分が気になる本を手に取ってみるのが大事。
「おすすめの本は何ですか?」なんて人に聞いても仕方ないです。
そういうのは楽しめる本が多い、本好きの人の質問です。
コンサートの検索は「Webぶらあぼ」というサイトでできます。
曲や演奏家の名前で検索できます。結構便利ですよ。
日付で調べることもできるので、「明日急な休みがもらえたからコンサート行こうかな」というときにも便利です。
とにかく自分の直感で選んでください。
素敵なコンサートとの出会いがあることを祈ります。