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え!?白い影!??いや、幽霊にもなっちゃうよね……『踏切の幽霊』レビュー
みなさん、幽霊は信じますか?
私は「絶っっ対いる!」とも「いやいやいないでしょ~w」と明確なスタンスは取っていませんが、「いてもおかしくないだろうな」と思っています。
病院勤めをしているときは、急に搬送され1時間と経たずお亡くなりになった方が大勢いました。「こんな瞬く間に状況が変わったら、本人も自分が亡くなったって気づかないかもしれないなぁ」と思ったものです。
急に幽霊話をしたのは、高野和明先生の『踏切の幽霊』を読んだのです。
次の展開が気になりすぎて一気に読みました。
夜中の最終電車。車掌さんならば絶対に避けたい人身事故。チェックにチェックを重ねて運転しているのに前方に人影……!?緊急停止ボタンが押され、けたたましい音を立て止まる電車。恐る恐る被害を確認するが、どこにも車両に接触した痕跡は見つからず……?
いやぁ、最初から不穏な空気がビシバシ伝わってきますね~w
私も車の運転をしますが、事故は本当に本当に起こしたくない。
運転士さんならば、お客様の命を預かっているしその思いは相当なものでしょう。
被害を確認しに、車両を降りるときの心臓のバクバク感。電車に引かれたら見るも無残な状態でしょうから、想像を絶する恐怖でしょうね。
このいわくつきの踏切をある女性雑誌の記者が取材することになります。その取材を終えた日の夜中、なんと、電話がかかってくるんですよーーー!1990年代のお話なので、固定電話に!怖すぎだけれど、一応電話に出るんです。そしたら
女性のうめき声
しかも時間は事故が起きた時間!
「きょえぇぇぇぇ!!」ですよね。1人暮らししてたら二度と眠れないほど目がギラギラになってしまいそうですw
うめき声の主はなかなか特定されません。顔は分かれど取材する先々で名前が違う。こんなにたくさんの人がいる世の中で本名を知っている人間が全然見当たらないんです。誰にも心を許せない事情があったのか。うめき声の主が写る写真の笑みはとても不自然。笑うことも困難な人生とは一体。
あらゆる角度から調査を進め、徐々に明らかになるうめき声の主の苛烈な過去。もうね……息をするのも苦しいほど胸にグッときましたよ。権力者コノヤローですよ。人のことをなんだと思ってやがる!復讐の一つもしたいよね、思いっきり恐怖を味合わせてやりたいよね。自分が味わった苦痛を100倍返ししたいよね、とうめき声の主に共感せざるを得ません。
高野先生の著作に『幽霊人命救助隊』という作品もあるのですが、こちらもよい作品で号泣しましたね。たしかバスか地下鉄の中で読んでいたんですが、人目をはばからずしゃくり上げて泣いた記憶がありますw この本のおかげでうつ状態での脳のホルモン分泌の恐ろしさがよく分かりました。脳内で勝手に声が飛びかい、強烈にいざなわれる死。とうてい逆らえるはずがないと痛感しました。登場人物たちがまた、人情味あふれてコミカルで……ぜひ読んでほしい作品です。
幽霊ととらえるとおどろおどろしいですが、幽霊になる前にはその人の人生が当然あるんですよね。満足な死を迎える人なんて一握り。死んでも死にきれない思いがあるならば、今生きている人間がなんとか手を尽くしてあげたいですよね。とはいえ、暗がりに白い影があったものなら猛ダッシュで逃げるのですがw
高野先生の著書は読後感が本当にすばらしい。読んでる最中は「うぉ~~苦しい……」となるのですが「あぁ……読めてよかった」になるから不思議。数年経ったらまた読みかえそう、と思える本でした。
ではまた!
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