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白とか黒の

夜の暗い道を歩きながら考えていることはなんですか
歩くということは前に進むということは足を一歩一歩前に出すということ
あなたは明るく照らされた遠くに見える何かに向かって歩いているのですか
それともただ暗い闇の中をただ前に前にと進んでいるのですか
後ろから照らす車のヘッドライトは何色でしたか
通り過ぎいていくその光は誰のものですか
風に揺れる木々の声が呼んでいる気がして振り返るとそこには当たり前のように誰もいなくて暗闇に目を凝らしたところで闇しか見えなくて
そんな夜をあなたは歩いていたのですかそして闇の中の何かを知ったのですか
手を伸ばしてくれたのは誰ですかそんな人はいませんでしたか通り過ぎていくなにもかもが
そこに存在したなにもかもがどこまでもどこまでも続く波のように寄せてかえす光のように
うちあげられた海月は二度と海に帰ることはなくただそこにいてもうゆらゆらと漂うこともなくただそのまま枯れて朽ちていき
月の光がドアを叩くのはいつの夜ですか明けない夜はいつ訪れますか気まぐれにつぶやく鳥たちの羽音が白く遠くに見えていたのを思い出して
訪れた静寂はだれのものですか静寂の中の叫びが聞こえましたか手を伸ばしてもっと手を伸ばして手に入れたものはなんですか
あなたの掌におさまるほどの私の心臓をどうか強く握りつぶして溢れるそのあたたかな後悔を
こぼれ落ちていくその生ぬるい悦びをどうか誰も思い出したりしませんように
一歩を踏み出したその足は砂の中に埋もれ次はどこに踏み出したら良いのかとざらざらとした砂の感触はいつになく透明でいつになく苦しくてその苦しさはいつからここにいたのですか
どうしたら笑ってくれますかどうしたら泣けますかどうしたら
思い出せない優しさをいつまで探したら許してくれますか白い波が足元を包み去っていくその先に答えはありますか
爪先を濡らす波も足首をくすぐる砂もないアスファルトの静かな黒い夕暮れをどこまで辿ればいつかのあなたに会えますか

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