人生で初めて読んだ本を覚えているだろうか?
人生で初めて読んだ本を覚えているだろうか?
残念ながら私は覚えていない。
人生初めての本は家で両親が買ってくれた絵本だろうか?
それとも小学校で嫌々読まされた課題図書だろうか?
さすがにその記憶は無い。
しかし人生で初めて自分で選び、そして面白く感激しその後の人生を「読書好き」に変えた本なら記憶が鮮明に残っている。
私は兵庫県に生まれ育った。
しかし小学5年生、10歳の秋、親が転勤になった為東京へ引っ越すことになった。
引っ越してきた小学校は東京とはいえ多摩にあり、さほど大きくもなく緑に囲まれた長閑な学校だった。
ある日、おそらく授業に一環だった思うが新しい小学校の図書室に足を踏み入れた。
そこは他の教室や廊下と違い床にカーペットが敷かれ、沢山の木で出来た本棚がある、なにやら温かみのある場所だった。
兵庫県に住んでいた頃の私は本に興味も無く、以前の小学校では図書室に入った事も無く、地域の図書館などは場所の記憶すら無かった。
そんな私が初めての図書室で1冊の本を選んでいた。
「怪人二十面相」江戸川乱歩著
名探偵・明智小五郎とその助手・小林少年が、宿敵ともいえる大盗賊・怪人二十面相と対峙する推理小説である。
警察がどのように厳重な警備をしても、その名の通り誰にも見破れない変装や魔法のようなトリックを使い秘宝を盗み出す怪人二十面相。
盗賊でありながら人を傷つけたり殺したりするといった残酷なことは一切しないというスマートさ。
貴重な品を盗む際には前もって予告をするという奇抜さ。
この怪盗がとてもかっこいいと感じた。
そしてそのライバル名探偵明智小五郎と小林少年。
明智探偵の全てを見通した超人的な推理力に感心すると共に、自分と同じような年齢の小林少年に共感を持ったのだと思う。彼の持つ「探偵七つ道具」という物に憧れ携帯縄梯子やペン型懐中電灯などは自作しようとした記憶がある。
私は今回30数年ぶりにこの作品を読み返してみた。子供向けなので数時間で読み終えられた。
最初に連載されていたのは戦前とのことだが、令和の現在でも面白い。
それは当たり前で、現在ミステリー物のコミックやアニメでは最も売れている作品の1つである「名探偵コナン」もこの作品の影響を受けていると思われる。
なにせ主人公は「江戸川コナン」であり、「名探偵・毛利小五郎」「少年探偵団」人を傷つけない「怪盗キッド」などが登場するのだから。
ちょっとしたきっかけで読み始めた「怪人二十面相」は楽しくすぐに読み終えた。
その後明智探偵が活躍する「少年探偵団シリーズ」をすべて読みたいと思い、両親に買ってもらったり、図書室で借りたりして読み始めた。
少年探偵団シリーズを読み終えた頃には似たような物語が読みたくなり市立図書館で怪盗アルセーヌ・ルパンのシリーズを借りて読むようになっていた。
いつの間にか読書をすることや図書館に行くことが習慣になっていたのだった。
そして子供向け推理小説の世界を飛び出て、図書館にある色々な物語や偉人伝などを読み始めていた。
その後中学生の一時期はあまり本を読まなかった時期もあったが、今までの人生で読んだ本の数は数千冊にのぼることは間違いないと思う。
私は自己紹介などで「趣味は?」と聞かれた時に、すぐ答えられる物が3つある。
その筆頭は「読書」である!
読書という本を読む習慣を持って本当に良かったと思っている。
私は40歳をとっくに越えているがまだまだ好奇心が旺盛だと思う。
様々な事を知りたいと思い本を読む事も多いし、好きな本を読んだ結果色々な事を知ったという事も多い。
そのお陰もあり、ビジネスで人と会い話す機会があっても話題に困ったり話に付いて行けないなどということは滅多に無いと感じている。
読書は旅のお供にもなる。
移動の際の時間潰しはもちろんだが、様々な本を読んでいるうちに
「この場所に行ってみたい」
という事が多々ある。
読書は旅の目的地を教えてくれるのだ。
歴史小説を読み登場人物が活躍した場所に行ってみりするなど、読書をきっかけに目的地を決め、旅をしたことが国内外問わず無数にある。
読書をすることで仲間が増えることもある。
読書会やSNSなどを通じて自分とは違う性別や世代に人達を知り合えることがある。
それらの人達とは「読書」という共通言語があるお陰ですぐ話が出来る。
普段の生活では知りえない人達を出会えるのも本を読んでいて良かったと思える1つだ。
別に役立つから読書をしていた訳では無く、楽しいから読書をしていただけだった。
しかし結果として読書は仕事やプライベート問わず様々な場面で役にたっている。
このように私は「読書」という本を読む習慣があり本当に良かったと思う。
自身が読書をしないなら自分が、子供がいるなら子供たちに読書をお勧めしたい。
別に難しい本を読む必要も無い。面白そうな簡単な本で充分だと思う。
私が読書に出会えたのは小学生の頃に何気なく選んだ1冊の本だったのだ。