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余談⑫:地域に根を張るカフェが好き

 自分の住んでいる家の近くにあるカフェが、年越し営業を行っていた。
 コーヒースタンドに近い規模で、店内の壁に沿って木製の長椅子がLの字で並び、10名座れば満席になる広さだが、僕の好きな浅煎りのコーヒーも味わい深く、焙煎の香りが鼻腔に届く居心地の良い空間である。

 駅近くではないにも関わらず、年が明けて1時頃、年始にかけて自分で淹れる用の豆を買いに出掛けてみると見事に満席で、甘酒を飲むが如く、店の外でもコーヒーを味わう人が10名程いた。お客さんは、常連さんが中心のようで和やかな雰囲気だ。

 深夜一時。何が、この場に人を惹きつけているのか。
 コーヒーの味はもちろんだが、何よりもこのカフェの店主さんがその理由だと僕は思う。

 以前、僕より先にいた女性のお客さんが機を見計らって、店主さんに何かを渡していた。
「お誕生日ですよね。おめでとうございます」
 そう話す女性は笑顔で、受け取る店主さんも真っ直ぐに驚いて喜んでいる。様々なカフェに行くが、こういう光景はあまり見たことがない。

 注文に並ぶと、挨拶から始まり、近況や大晦日の晩に何をしていたか、新年の予定は何か、果ては自分の趣味やブーム、面白かったことなど様々で、その話1つ1つに心からのリアクションを取っている。
 有名カフェとは異なる人との距離感。
 自分事を生で語れる場所というは、大人になると案外少ないんだな、とそんなやり取りを見て思う。

 単にオシャレで外面的な空間が素敵なカフェもあるが、そこに立つ人から始まる内面的な空間に心が惹かれる。
 内面が見えるからこそ、地域の中で人が集まりホッとできる場所になる。    
 僕が好きなのはそういうカフェだ。

 さて、そんな様子をコソコソ見ている僕は、もう何度も通っているにも関わらず、自意識が邪魔をして店主さんとは言葉を交わす勇気はない。
 注文した豆を受け取るとき、「いつも通り豆のままで」と言われた時は、良い年が迎えられそうな気がしたもだ。
 店員さんに顔を覚えられるのが嫌という話もよく聞くが、自分の住む街に自分を知ってくれている人がいるというのも、案外悪くはない。


記事がやっと書けました。言葉が出てこなくて頭を悩ませます。
書くという作業もまた筋肉のようで、サボると思うように動いてくれませんね。
今年こそは、頭も身体もだらけないようにしたいと思います!


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