保育日誌⑦:跳び箱スカウター
年長児の体操の中で、跳び箱に闘志を燃やす子たちがちらほらいます。
進級当初から、「僕は年長さんになったら6段を跳ぶんだ」と話していたのが、K君です。
それまで、あまり運動に対しては積極的な方ではなかったのですが、進級してしばらくした後、その目標を掲げる様子に、子どもにとって、年長さんになることはやっぱり誇らしいことなんだなあ、と感じました。
ただ、4段までは跳べるようになったものの、やはりこれまで運動に興味がなかった分、コツを掴むのには時間がかかるようで、現在は5段に挑戦中です。
さて、そんなある日の体操の時間のことでした。
体操の講師が跳び箱の準備をしていると、体操座りをするK君が積み上げられる5段の跳び箱を見ながら隣の友だちにこんなことを話していました。
「ねえねえ、〇〇君知ってる?
小学校になると、跳び箱、20段くらいらしいよ」
どこの、超人小学校なのでしょう。
思わず突っ込みそうになりましたが、K君の真剣な表情と声のトーンに真実味を帯びたのか、友だちも「え、そうなの?」と困惑気味です。
K君にとっては「跳び箱20段」が小学校へのイメージにあるとすれば可愛らしいのですが、そこでふと思ったことがあります。
よく保育士が「小学校への期待や不安」みたいな文言を月案や週案に書くのですが、期待や不安といった思いは、数値化することが難しいものだと思います。
しかし、この「跳び箱20段」という言葉には、K君の小学校への思いが具体的に数値化されていたのかもしれません。
某漫画の如くスカウターを身に着け、小学生を前に「こいつ、戦闘力跳び箱20段だと!?」とおののいている子どもを想像すると笑えますが、小学校という場所はそれだけ大きな存在なのですね。
年長さんは6段で、小学生は20段なのですから。
未来には巨大な跳び箱が待ち受けていますが、心配いらないよ、と伝えたいです。6段という目標に向けて、諦めずに挑戦し続ける力を、K君は身に付けていますので。
それは新たな敵を前に、その都度パワーアップするヒーローように。
7月が終わる…だとっ…!?