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事実確認のお供

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もしあなたが事実確認をするときには、お役に立つ記事があるかもしれません。
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#校閲

【校閲ダヨリ】 vol.54 ウィキペディアの活用法

みなさまおつかれさまです。 数カ月ぶりとなってしまいました。すっかり花粉症の季節です。 あくまで本業ベースの物書き(私)にとって、ようやく魔の月間が終わりを迎えようとしています。 今回は、我々校閲者が「喉から手が出るほど」使いたい、ウィキペディアについてのお話です。 最初にお断りしておきますと、本稿に「ウィキペディアをこき下ろそう」とか、「みなさんに使うことをやめさせたい」といった意図はありません。 誰もがアクセスしやすい知の泉は紛れもなく世界の財産のひとつだと考えています

【校閲ダヨリ】 vol.2 PDFは万能ではありません

みなさまおつかれさまです。 今回は、仕事をするにあたって目にしない日はない(といっても過言ではない)、PDFが主役です。 PDFの利点を挙げればキリがないですが、主に次のような感じでしょうか。  ・データ量が比較的軽い  ・デバイス上で閲覧、保存・蓄積ができる  ・コメントを加えたり、手書きで赤字を入れられる  ・原則として編集が不可能(対外部向けメリット)  ・テキストのコピーができる こと出版業界において、最強のデータ形式なのではないかと思うほどです。 しかし、そん

【校閲ダヨリ】 vol.4 辞書の性格

みなさまおつかれさまです。 早いもので、4号目になりました。(普通こういう挨拶は5号や10号でするのかもしれませんが、私は4という数字が好きなのです。サンダーバードも4号がいちばん好きでした) さて、今回は、3号でYが配信した内容とリンクさせてみます。せっかく良いテーマなので、もう少し学びを深めてみましょう。 前回Yは『広辞苑 第7版』(岩波書店)を参照して、敷居が高いという言葉について論を展開しました。 広辞苑といえば、絶大なシェア率を誇る、辞書界の大御所ですよね。「

【校閲ダヨリ】 vol.11 軽減税率 〜国税庁の人に電話できいてみた〜[前編]

みなさまおつかれさまです。 ついに、消費税も10%の時代を迎えましたね。 洗濯機が9月中に壊れてくれたのは不幸中の幸いでした(皆さん買い替えらしく大きめ家電の配送・設置サービスは2週間待ち。その間のコインランドリー代を考えると10%より高くついているのかもしれませんが、精神衛生上考えないことにします)。 今回は、先日校了し、10月に発売される媒体の作業中に私の身に降りかかったことを追体験していただきながら、新税率・軽減税率について理解を深める号にしようと思います。 ざっと

【校閲ダヨリ】 vol.12 軽減税率 〜国税庁の人に電話できいてみた〜[後編]

みなさまおつかれさまです。 前編では、軽減税率の対象品目について内閣府の資料を提示しつつお話をしてきました。 その後、なんとかみりん問題をクリアしたことで、私の脳内は束の間の落ち着きを取り戻していました。 そこで、今度は資料の細々したところに目を向けたわけです。(ざっくりと理解しただけでは、この仕事は務まりません) 前回つつかなかった重箱の隅は以下です。 上2つは簡単です……が、3つめで、またしても暗雲が垂れ込めます。 「 1万円以下で、価額に占める食品の割合が2/

【校閲ダヨリ】 vol.13 引用

みなさまおつかれさまです。 今回は、引用のお話です。 前提としてなくてはならないのは、 「引用はパクりではない」 という認識です。 事実を明確に伝えるためや、誰かの論に反論するため、自分の論の根拠とするためになど、サポート的に他人のテキストを用いるのが「引用」 です。 引用は、事前の許可なく、金銭も発生させず行うことが可能です。 ただし、その代わりといってはなんですが、いくつかルールがあります。 まずは、その大元となる「著作権法」を見てみましょう。 このように定義されて

【校閲ダヨリ】 vol.17 裏焼き

        みなさまおつかれさまです。 今回は、普段の作業で私たちがほぼ見つけられない裏焼きという事象の話をしようと思います。         昨今、Instagramなどでよく見られる(またはよく行う)写真の反転。 セルフィをしたとき、自分が見ている自分との視差に違和感を覚えて行うのだろうと思います。(視覚と聴覚で異なりますが、なんとなく、録音された自分の声を聞いたときと同じ違和感なのかなと思っています)     反転、とよく言われますが、業界では「裏焼き」と呼ばれてい

【校閲ダヨリ】 vol.23 あいまいなニッポン

        みなさまおつかれさまです。 少し言葉の話題が続いたので、ちょっと息抜きしましょう。     今回は、「日本の地域」に関するあいまいな問題です。     この仕事をしていると、日本の各都道府県を「〜地方」というくくりで紹介するページに出合います。 (トビラやショルダーで多く見かけます)     要素が1つ加わるので、ページを埋めることができ便利なのかもしれませんが、私たちは確認する事項が1つ増えるわけです。 しかも、なかなかセンシティブなテーマなので、校閲ル

【校閲ダヨリ】 vol.28 出典の書き方

みなさまおつかれさまです。 今回は、引用の回(vol. 13参照)と合わせると効果が倍増、むしろ、この事項が漏れていると引用として失格とも言える重要なことをお話しいたします。(書評の際やクレジット書式にも使えます) 引用の回で私は「公開されている文章は引用して自身の論の補強に使うことができる」というようなことを述べました。 引用というアビリティを使用する際に大切なのは、「どんなものから引用したのか、読者がわかるように示す必要がある」ということです。 著作権的な観点での重要

【校閲ダヨリ】 vol. 40 住所と言葉は似ている

みなさまおつかれさまです。 校閲の仕事の半分以上は、何らかの事実確認です。 人名、歴史的な事実、社歴、洋服の展開サイズ・色、万年筆の値段や機能、ヘアカラー剤の品名・色名など、制作誌面に記載のある確認可能な事項は隅々まで調べます。 それらの中で、目にしない日はないといってよいものが「住所」です。 今回は、そんな住所において「入っていたりなかったり」する「字」のお話をしたいと思います。 さて、「字」ですが、これをなんと読むか、みなさんはご存じですか? 「じ」ではありま

【校閲ダヨリ】 vol. 42 「0120」はフリーダイヤルだけじゃない

みなさまおつかれさまです。 今回は、ちょっとコアなテーマです(いつもコアな気もします)。 先様から、「問い合わせ先はこちらを載せてください」といって「0120」から始まる着信課金サービス(かけた側が無料)の電話番号を送付いただいたとします。 当然、そのまま掲載されることになるのですが、「フリーダイヤル 0120-……」と安易に載せるのは注意が必要です。 なぜかというと、「フリーダイヤル」という単語は、「NTTコミュニケーションズが提供する電話サービス」に該当するから