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【校閲ダヨリ】 vol.12 軽減税率 〜国税庁の人に電話できいてみた〜[後編]


みなさまおつかれさまです。
前編では、軽減税率の対象品目について内閣府の資料を提示しつつお話をしてきました。


その後、なんとかみりん問題をクリアしたことで、私の脳内は束の間の落ち着きを取り戻していました。

そこで、今度は資料の細々したところに目を向けたわけです。(ざっくりと理解しただけでは、この仕事は務まりません)

前回つつかなかった重箱の隅は以下です。

・高齢者施設での飲食提供、学校給食などは8%
・医薬部外品は10%
・一体資産は一部8%


上2つは簡単です……が、3つめで、またしても暗雲が垂れ込めます。


1万円以下で、価額に占める食品の割合が2/3以上の一体資産は8%


これは、具体的なようで具体的でありません。
添えてある可愛げなイラストを見る限り、「ティーカップと茶葉」のようなものがこれにあたるようですが、これだけを見て理解しろというのはちょっと乱暴だと私は思ったのです。


そんな私に向けてか、「どんなものが一体資産にあたるの?」という別のページがあることに気がつきました。
素晴らしい。
さっそくまたいそいそとそこを訪れました。


これには

・販売価額(税抜き)が1万円以下のものであって、その資産の食品から構成されている部分の価額の占める割合として*合理的な方法*により計算した割合が3分の2以上のものは、全体が軽減税率(8%)の適用対象


とあります。
「食玩」のようなものも一体資産に含まれることがイラストからわかりましたが、
私の脳はまたしても炎に包まれました。


合理的な方法」とは何だ……。
そんな素晴らしい方法があったとして、いったい「誰」がその計算をして、「どこ」がその商品の税率を承認するんだ。もしそれ専門の部署が立ち上がっていたとして、全世界から一体資産をリスト化して合理的に調査しているとしたら、そこで働いている人たちはまさしくブラックだろうなと思ったわけです。

どうにもスッキリ説明してくれないこのサイトに業を煮やし、私は部下たちに向かって
「僕は本部に説明を求める!」と言いました。
(幸いにも、「軽減コールセンター」の電話番号が書いてありました)


部下たちは
「ちゃんと合理的に決められた上で店頭に並ぶのだろうから、問題にしなくてもよい問題では……」
と言いたげな顔で「お願いします」と言ってくれました。

私は少しドキドキしながら、電話をかけました。
対応してくれたのは、深みのある声色の女性の担当者でした。

私「軽減税率の一体資産に関して、わからないところがあってウェブサイトを参照したのですが、今ひとつしっくりこないので教えていただきたいのです」

担当者「どちらのウェブサイトをご覧になられました?」

私「内閣府のものです」

担当者「国税庁のサイトではないんですね?」

……なんということでしょう。「国税庁のサイトに関する質問でないと、明確な回答ができるかわからない」とおっしゃるのです。テーマは同じ、軽減税率の一体資産にかんすることなのに。
「これが縦割り……」と思いつつ、問題を一般化して、答えていただきました。

私がきいたのは以下の2点です。

1. 「合理的な方法」とは何か

2. 最終的にその商品の税率を決めるのは誰(どこ)なのか

1. の回答ですが
一体資産をバラバラに販売する場合を考えたとして、各商品の《販売価格》を算出→合算して、食品部分の占める価格が2/3以上
ということらしいです。


たとえば、イラストにあるティーカップと紅茶のセットで考えてみると
(前提:セットにしたときの価格が1万円以下)

ティーカップ単体で売るときの価格……2,000円
紅茶(イングリッシュブレンド/50g)……460円

2,000+460=2,460(円)


食品である紅茶の価額が占める割合は、約18.7%となり
このセットでは紅茶をもっと上質なものにしない限り8%では売れません

このような合理的(効率的ではありません)な方法を、各一体資産(販売価格1万円以下)に施していくわけです。とっても大変です。
そこで、2. の質問にいくわけです。

2. の回答は
ご相談者様です
でした。
……どうやら彼女は私のことをメーカーの中の人と思っていたようです。


また脳内に混乱を来しましたが、なんとか落ち着けて
それでは、特に商品の税率が妥当かどうか判断する公的機関はなく、メーカーのいわば『言い値』でよいわけですね?」とききました。


すると
そういうことになりますかね
ということでした。


最終的には、「国税庁のページにQ &A があるので見てみてください」といわれましたが、一体資産に関する項(問84〜)を見ても、以前に参照していた内閣府よりわかりやすいということはありませんでした。


私は、モヤモヤと鬱屈した気分を抱えながら、再び校閲作業という荒波の中に小舟で戻っていったのです。


— 完 —

では、また次回


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