【校閲ダヨリ】 vol.2 PDFは万能ではありません
みなさまおつかれさまです。
今回は、仕事をするにあたって目にしない日はない(といっても過言ではない)、PDFが主役です。
PDFの利点を挙げればキリがないですが、主に次のような感じでしょうか。
・データ量が比較的軽い
・デバイス上で閲覧、保存・蓄積ができる
・コメントを加えたり、手書きで赤字を入れられる
・原則として編集が不可能(対外部向けメリット)
・テキストのコピーができる
こと出版業界において、最強のデータ形式なのではないかと思うほどです。
しかし、そんなPDFにも落とし穴があります。
しかも、実際に落ちるか落ちないかの瀬戸際のラインを、日々我々は歩いています(落ちている人もかなりいらっしゃいます)。
何が落とし穴かというと、「テキストのコピーができる」ことなんです。
クライアントの資料PDFからテキストが欲しいときや、過去の媒体から流用をしたいときなどにこれをすると思うのですが、PDFの文字の認識の仕方が特殊なため「よく似た別の字(主に漢字)と置き換わってコピーされてしまう」という事態が発生する可能性があります。
少し難しい話なのでかみ砕いてお伝えすると……
テキストデータやInDesignデータでのコピー:フォント化された文字には、一つひとつにコードが割り振られています。これを読みとることで間違いのない文字抽出がされます。
PDFでのコピー:PDF書き出しの段階でフォントのコード情報が失われ、画像化されます。それをコンピューターの画像識別機能で「この形はこの字!」と判別(再コード化)して、文字を呼び出します。
……わかりづらいですかね。つまり、PDFでのテキストコピーは「画像識別」なので「似た漢字を間違えて引っ張ってくることがある」ということです。(「言葉遺い」となっていたり、「李節」となっていたりする可能性が本当にあるんです)
流用だから間違えようがないという認識は、結構危険だといえます。
このミスを防ぐためには、コンピューターの頭がもっとよくなるか、コード化されている元のテキストからコピーするしかありません。……が、技術的な問題や、実データへのアクセスの権限などの問題もあるためどちらもあまり現実的ではないですよね。
私から言えることは、「そういうリスクがある方法なので、ペーストしたら一度よく確認しましょう」ということです。このひと手間をかけるかかけないかで、作品の仕上がりが大きく変わってくると思います。
今回は、リスクマネジメントのお話でした。
では、また次回。
【おまけ】
前回の間違い探しの解答:「李節→季節」「耳障り→耳触り」
いかがでしたか? 文章の内容を把握しつつ誤植を探す、という作業は案外難しかったのではないでしょうか。
みなさまに安心して読んでほしいので、以後間違い探しはありません。
そのかわりに、ひとつテクニックをお教えしますね。
自分が書いたものにも、ほかの人が書いたものをチェックするときにも使えます。
「2回だけ」読み直しましょう。
1回目は、内容のチェックです。言いたいことが伝えられているか、相手に対して失礼はないか、ここで確認します。(読点の位置や「てにをは」など、使い方を間違えると内容が正しく伝わらないものは、こちらです)
2回目は、誤植のチェックです。コツは、単語ごとに一文字ずつ「見る」ことです。この作業は文章の内容を頭から追い出して行うことが大切です。読むのではなく、見る。
そして、どうかご自分の知識を過信しないでください。決して馬鹿にしているのではなく、ヒューマンエラーは天敵だからです。ちなみに……私は普段、おそらく中学校1年生以降で習うスペルは、調べるようにしています。漢字や熟語、慣用句も同様に調べまくっています。
校閲で必要な能力は、人よりも多くの知識があることではなく、自分を過信せず、調べる手間を厭わないことです。
最初にこの方法を試すときは、1回目と2回目は必ずこの順番で行ってください。いきなり2回目の「見る」作業をすると内容がチラついて、うまくいきません。
慣れてくれば2回目だけで大丈夫です。
クライアントへのメールや資料、原稿、大切な人へのLINEなど、ハズせない場面でご活用いただけたら嬉しいです。
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