頭のいい人が早口を治すには、みんなを褒める!! 早口 心の問題1
早口をテーマにして書いてきましたが、いよいよ心の問題と早口について書き始めました。とても厄介でデリケートな問題、心が原因で早口になっている人の解決策について考えていてきましょう。
それで、やはり最初に断っておかなくてはいけないのは、今回から心の問題を語るわけですが、僕は心理カウンセラーではありません。あくまで声とことばの専門家という立場から情報発信をしています。なので、他の専門家の方と意見が違っても、他の意見を否定するつもりは全くありません。また、心理学の立場から僕の意見を検証した場合、もっと別の意見もあろうかと思います。もしご意見いただければ、建設的に修正していきたいと思っていますので、ご指摘いただければと思っています。それが学問と言うものだと思いますし、声とことばを現場で教えていて、使えるものは何でも使って、自分の意見に固執しないのが指導者として誠意ある態度だと思っているからです。
心の問題から早口になっている人の特徴
心の問題から早口になっている人の一番厄介な問題は、ボイストレーニングなどで身体の構造を調節するだけでは、簡単に治らない場合も多いという点です。
もちろん、治らないと言っている訳ではありません。
例えば、猫背のせいで息が短くなり早口になっていると思われる人に、背筋を伸ばすトレーニングをしても、早口が改善されない場合があります。
その場合、実は心にも早口の原因が隠れているせいで、改善できていない可能性があるんです。
心に原因があって早口になっている場合、外見だけでは早口の原因は特定できません。あなたがボイストレーナーであれば、よくヒアリングと観察をすること。もしあなた自身が早口で悩んでいるのであれば、自分の状況を良く分析して、どんな原因で早口になっているのか、慎重に判断することがとても大切です。
原因が特定できれば、心が原因であっても、ボイストレーニングなどによって改善できる可能性が高くなります。
以下に、心が原因で早口になっている人の特徴を分類しました。
分類表に記した通り、大きく三つの心の特徴を持った方が、早口になりやすい傾向にあります。では、それぞれのどんな特徴の方なのか、またどんな対策が有効なのか解説していきましょう。
①頭脳明晰タイプの早口の人ってどんな人?
あなたは、周囲の人に自分のことをなかなか理解してもらえない。自分の意見が通らないなど、たくさんの不都合を感じていませんか。そして密かに、あなたは自分が周囲の人達よりも優秀であると感じていませんか?もちろん、学校の成績での評価が絶対ではありません。あなたがどう感じているかが問題です。
心当たりがあれば、あなたは頭脳明晰タイプの早口かもしれません。
頭脳明晰タイプの早口とは、文字通り思考する能力が周りの人よりも高く、他の人と比較して言葉がたくさん出てくるタイプの人に多い早口です。
このタイプの早口の人は、物事を論理的に考えることができる、情報収集能力が高い、しゃべりながら論理を組み立てることができるため議論に強いなどの長所があり、社会的に重要な役割を果たすことができる才能のある人材である可能性が高いです。
長所ばかりが並ぶので、早口なんて治す必要はなさそうですが、実はそうではありません。この頭脳明晰タイプの早口の人は、共感力が低い傾向にあり、そのせいで周囲とのコミュニケーションに問題がある場合が多いからです。
共感力が低いとどうして早口になるの!!
そもそも頭脳明晰タイプの早口の人は、共感力が低いので早口になり易いと書きましたが、どうして共感力が低いと早口になり易いんでしょうか。
頭がいい人は、必ず早口になるのかと言うとそうではありません。あなたの周りにも頭の回転が速いのに、ゆっくり堂々と話をしている知り合いが何人もいるんじゃないでしょうか。どうも頭がいいというだけで、早口になるわけではなさそうです。
そこでポイントになるのか共感力です。
共感とはあなたが一方的に相手に共感することではありません。相手から共感されることも含みます。共感力とは相手に共感し、相手から共感される能力のことです。
悲しいことがあれば共に悲しみ、嬉しいことがあれば共に喜ぶことのできる能力とも言えます。
頭のいい人は、とかく世の中は論理的に動いていると考えがちで、自分の喋っている言葉も、相手に意味が伝わればいいと思いがちです。
え?!言葉は意味を伝えるものじゃないの?と思った方、それが違うんです。
共感力のある人は喋るとき、意味以外に感情も合わせて伝えることで、聞き手と共感を積み重ねながら会話しているんです。
どういうことなのか、短いセリフを例にとって説明しましょう。
「昨日見た映画なんだけどさ、めっちゃすごかったよ。」と言うセリフを二パターン録音したので、まずは聞き比べてみてください。
一つ目は、頭脳明晰タイプの早口の人の喋り方を、僕がマネてみました。
次に、共感力の高い人の喋り方をマネてみました。
ちょっと極端にやっていますが、なかなかうまく録音できたと思います。
喋る速度が全く違いますね。共感力の高い人はゆっくりしゃべっていますがそれだけでしょうか。なんとなく臨場感がありますよね。
なぜ、こんなに聞こえ方が違うのかというと、イントネーションや抑揚などの細かなことの解説は省くとして、最も大きな違いは、話し手の感情が聞き手に伝わっているという点です。
早口の人の場合、「昨日見た映画なんだけどさ」としゃべった時点では、その映画が良かったのか悪かったのかは解りません。次の言葉の「めっちゃすごかったよ」と聞いて、はじめて「ああ、見た映画は良かったんだ」と聞いた後にやっと知ることができます。しゃべり方は早口のため単調で、聞いていても言っていることの意味は解りますが、聞き手が共感するようなポイントはほとんどありません。
一方、共感力の高い人の場合、「昨日見た映画なんだけどさ」としゃべった時点で、もう見た映画が面白かったことが伝わってきます。そして、次の言葉を待っていると、「めっちゃすごかったよ」と、すでに知っている情報を聞くことになるんですが、聞き手は最初の一言で相手の言葉に興味を覚えて既に共感しているので、「え?それで、何がすごかったの?」と思わず聞き返したくなるんです。
更に共感力の高い人の喋り方を細かく分析するために、セリフの感情の部分も含めて無理やり文字に起こすとこんな感じになります。「き・の・お、、、見た、映画!なんだけどさ⤴⤴」
最初に、「き・の・お、、」でタメを作って、相手の期待感を煽りながら、話に興味があるのか確認して、そのあとの「見た、映画!」の部分で面白かったシーンなどを具体的に思い出しながら興奮を伝え、「なんだけどさ⤴⤴」の部分では、再び相手に続きが気になるよね!!、と煽りを入れています。
このように共感力の高い人は、自分の感情を入れて話すだけじゃなくて、相手の感情も常に揺さぶるよう話しているんです。早口の人の、共感力が低い単調な話し方とは大きく違いますね。
でも、共感を重ねながら話すというのは、面白おかしく話をする方法のように聞こえますが、なぜ早口と関係があるんでしょうか。
それはものすごく単純な話で、自分の感情に共感してもらうのためには、相手の反応を待つ時間が掛かるからです。
ここでのポイントは、共感力の高い人は、別にゆっくり話そうとしているわけではなくて、相手と共感を積み重ねようと、相手の様子を見ながら喋っているので、必然的にゆっくりしゃべることになっているだけなんです。
だからあなたも、相手と共感を積み重ねられる話し方が身に付ければ、自然と早口は治ってしまうのです。
共感力を鍛えて、早口を治す!!
でも、共感力を鍛えるなんてことができるんでしょうか。
共感力を鍛えるには、相手の反応をよく見て話すようにすればいいだけなんですが、それが意外に難しいというか、それができないので早口になっているんです。
だからそんな人に、ありきたりのアドバイス「相手の目を見て、反応を確かめながらゆっくり話しましょう」なんて指導してみても、全然効果がありません。
もちろん専門的な訓練はあるんですが、そういう難しい訓練の話は、この声が良くなるコラムの「読んだだけで本当に声が良くなる」という、趣旨にそぐわないので、誰にでもできる頭脳明晰タイプの早口を改善する訓練をご紹介しましょう。
すごく簡単な訓練を二つご紹介します。
1.みんなにプレゼント大作戦
2.みんなを褒めよう大作戦
の二つです。要するに、みんなを喜ばせる練習をすれば、早口なんて簡単に治ってしまうんです。
1.みんなにプレゼント大作戦の練習方法
記念日などではない普通の日に、いろんな人にプレゼントを渡して喜んで貰うという共感力を鍛える練習です。
プレゼントを渡して喜んでもらうというのは、意外に難しいものです。
相手の好みや関係など、その場に合わせたTPOをいつも考えていないと、なかなか喜んでもらえるプレゼントを渡すことはできません。
この練習のポイントは、あくまで早口を治すための練習ですから、プレゼントを渡す機会をできるだけ増やしてください。高価なものでは、そもそもお金が持たないでしょうから、できるだけ安価で気の利いたものにしましょう。
渡すだけでも、練習にはなるんですが、よくよく相手を観察して一番喜んでもらえるタイミングとことばを添えて渡すのが、とても良い練習になります。
気を付けないといけないのは、あなたが自分で貰って嬉しいプレゼントを選んではいけないということです。あくまで、相手の好みに合わせなくてはいけません。
例えば僕なら、街を歩いていてガンダムのプラモデルを見つけたので、自分が貰ったら嬉しいと思って、ちょっと気のある女の子にプレゼントしたとしても、大抵の場合微妙な反応をされるでしょう。
でも、お花屋さんにきれいなバラの花があったからと、一凛のバラの花を買って贈ると、きっと喜ばれます。
僕だったら絶対ガンプラの方が嬉しいので、バラの花の方が喜ばれるのは不思議なんですが、仕方ありません。そういうものなんです。
喜ばれるプレゼントを贈るというのは、本当に難しいんです。
頑張って、プレゼントと渡す相手のリサーチを怠らいないようにしましょう。
2.みんなを褒めよう大作戦の練習方法
これも、単純に会う人、会う人を褒めて褒めて褒めまくるというものです。ですが思ってもいないことを褒めてはいけません。あくまで相手を観察して本当に褒めたいと思ったところを見つけ出して、褒めるんです。
これも、あくまで共感力を高める練習なので、相手を良く観察し続けることが大切です。
これも最初は照れくさいのと、タイミングを見つけるのが難しいんですが、褒め続けるうちにコツが掴めてきます。
相手と会ったとき、例えば、シャツの色が素敵だとか、スカーフのワンポイントが素敵だとか、その靴どこで買ったの?などなんでも構いません。
ファッションを褒めるのが無難ですが、相手のこだわりポイントを見つけて褒めると喜ばれます。
間違ってもあなたが男性なら、すごくスタイルのいい女性に向かって「お尻がセクシーだね」なんて言おうものなら、ひっぱたかれますので注意が必要です。
相手がダイエットをして本当に素晴らしいボディを努力によって手に入れていた、こだわりのポイントだったとしてもです。理不尽なようですが仕方がありません。相手を褒めて喜ばせるのも、相手の立場に立って考える必要があるので、本当に難しいんです。
相手の言動や行動から相手の何を褒めるべきか、どのタイミングで褒めるべきか、相手と会っているとき常に考えるようにしましょう。
さて、このプレゼントを贈ることと、相手を褒めることがなぜ共感力を高めて早口を治す訓練になるんでしょうか。
それは、相手の反応を注意深く観察していないとできないことだからです。
プレゼントは誰かと会う前に準備するもので、相手の好みは何かを良く観察しなくてはいけません。自分の出歩く先々で、その人たちが喜んでくれそうな手頃なものを探さしていなくては、なかなかいいプレゼントを選ぶことはできません。
褒めて相手を喜ばせるには、会っているときに相手のことをよく観察して、褒める内容やタイミングを計ったり、褒めた後、相手がどうリアクションしているかを確認しなくてはいけません。
どちらも、相手のことを観察するとてもよい練習になります。
始めたばかりの頃は、気恥しかったり、うまくいかなかったりしますが、この練習では基本的に誰も損をしません。
このプレゼントすることや褒める習慣を身に付けるだけで、あなたの周りの人には喜んでもらえますし、あなたには高い共感力を身に付き、早口まで治すことができるんです。
元々、頭脳明晰で優秀なあなたです。早口が治っている頃には立派に人気者になっていることでしょう。
是非、頭脳明晰タイプの早口を改善して、たくさんの人から慕われる、なんか感じのいい人を目指しましょう!!
なんと、心が原因の早口の問題、一回で書ききろうと思っていましたが、全然終わりません。感受性豊かなタイプの早口と、ストレス過多による早口については次回に持ち越しです。頭脳明晰タイプの早口に当てはまらなかった方は、次回ご期待ください。
パリ在住、日本語の声とことばのトレーナー、ユウジでした。
ではまた。
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