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大阪市北区堂山町傷害被疑事件及び茅ヶ崎市民文化会館暴行被疑事件判決宣告 1 

傍聴人及び傍聴希望者の顔ぶれ

 令和4年6月3日、横浜地方裁判所で大阪市北区堂山町傷害被疑事件と茅ヶ崎市民文化会館暴行被疑事件の判決宣告が行われました。
 横浜地方裁判所の開廷表には15時から16時とありましたが、死刑判決などの重い量刑を宣告するわけでもないので理由を朗読することはないだろうと考えていました。
 傍聴希望者には李信恵さんをはじめ、ハンドルネーム「モジャ」さんなどの姿があり、当選した傍聴希望者に混じって神奈川新聞川崎総局編集委員の石橋学さんが報道記者先に座り、もう一席設けられた報道記者席も報道関係者が座るというものでした。なお、傍聴希望者かどうかわかりませんが、神奈川県の名札を付けた人物がいたことを付け加えておきます。

異動により構成が変わった裁判所

 今回は横浜地方裁判所の裁判官の構成が変わっていました。右陪席であった中山登裁判官が4月1日付け人事異動で検事として法務省に出向し、代わって福岡高等裁判所の判事であった倉知泰久裁判官が4月1日付けで右陪席となっていました。中山登検事がどのような職務に就くかはわかりませんが、仮に東京法務局訟務部付け検事となったとすれば、国が被告となった行政裁判などで国側の指定代理人として答弁書などの準備書面の作成に携わることとなります。

判決主文

 奥山豪裁判長は、伊藤大介被告人と北島直樹被告人を呼び、証人席で規律するように命じ、二人の被告人は証人席で並んで起立していました。その二人に対し、奥山豪裁判長は次のとおり判決主文を朗読しました。

主文
北島直樹被告人を罰金10万円の刑に処する。
伊藤大介被告人を罰金20万円の刑に処する。
支払いができない場合、1日5000円で労役場に留置する。
訴訟費用は伊藤大介被告人の負担とする。

判決理由~事件の概要~

 この判決宣告の傍聴券が当選した私は、傍聴席の前に座るか後ろに座るかで迷っていました。元レイシストをしばき隊をはじめとするしばき界隈はとにかく法廷でのマナーが悪く、男組の故添田充啓元被告人と木本拓史元被告人の公判では、裁判長に向かって「聞こえませーん」と叫んだ傍聴人がいたほどです。
 裁判所が判決宣告の法廷を1時間確保したのは、1時間単位で法廷を確保するのが原則で判決主文のみを述べて判決宣告を終わるのではないかと考えた私の予想は大きく外れ、奥山豪裁判長は判決理由の朗読に入りました。

  「令和2年9月23日公訴が提起された事件は、被告人北島直樹と被告人伊藤大介が渡辺賢一50歳の背後から腕で掴み、渡辺賢一を突いて階段から転落させたとして公訴を提起されたものである。
 伊藤大介被告人は、令和2年11月25日午前1時20分から1時32分にかけて、大阪市北区堂山町8番13号付近において、荒巻靖彦56歳が刃渡り10.5センチの折り畳みナイフを示したため、大川直樹が荒巻を抑えつけ、なおも荒巻が抵抗したため、伊藤が荒巻の顔面を複数回殴り、さらに荒巻の顔面や頭部を殴ったり蹴ったりしたとして公訴を提起されたものである。」

判決理由~弁護人の主張から茅ヶ崎市民文化会館暴行被疑事件について~

 「弁護人は、暴行事件については、暴行行為そのものがなかったと主張し、暴行行為が認められたとしても法令行為、正当業務行為であるとして無罪を主張した。
 茅ヶ崎市民文化会館では、「沈黙ー立ち上がる慰安婦」の上映が予定されていたところ、従軍慰安婦の映画であるということで茅ヶ崎市に抗議が寄せられていた。上映会の主催者は、茅ヶ崎市市民文化会館の警護に当たる者を募集し、被告人らが応募して警備に当たっていた。被告人らは市民文化会館の正面入口の警備を担当していたが、同様に警備に当たっていた警察は正面入口には配備されていなかった。(事件の現場ではない茅ヶ崎市民文化会館の階段の状況について触れる)そして、5段の階段で高さが延べ70センチメートル、踏面が129.8センチメートルの階段が現場となった。以下この階段を「本件階段」という。
 渡辺は茅ヶ崎市民文化会館に慰安婦映画上映の抗議活動を行うため茅ヶ崎市民文化会館に隣接する茅ヶ崎市役所に向かったところ、映画上映と同じ時間帯になされていた学生の催しに向かう学生の姿を見て、慰安婦映画に学生が招かれているのかと思い、市民文化会館に向かって歩いて行ったものである。北島直樹被告人は、渡辺賢一が近付いてきているのに気が付いて、甲第11号証防犯カメラの映像によれば、渡辺と正面から向かい合った。渡辺は正面入口から入ろうとし、押し合いとなり、北島直樹被告人が渡辺の腕を抱えたのが防犯カメラ25分35秒32の映像で確認することができる。なお、この防犯カメラの映像には時刻表示がないため、録画開始からの時間で映像内容の特定を行うものとする。
 北島直樹被告人は、一旦渡辺賢一から離れ、渡辺賢一を引っ張って階段から降ろそうとし、渡辺賢一はそれに抵抗した。そのため、北島直樹被告人は再び渡辺賢一の腕を抱え、伊藤被告人が押した後に、渡辺賢一が体勢を崩して転落した。これは27分32秒の映像で確認することができる。
 北島直樹被告人が渡辺賢一の腕を抱えたこと、伊藤大介被告人が渡辺賢一の転落直前に押したことについても防犯カメラの映像で確認することができる。この映像によると、渡辺賢一は受け身等をとろうとするなど転落を予期した行動をとっておらず。弁護人の渡辺が意図的に足を踏み外したとの主張は採用することができない。
 渡辺賢一が上映会の妨害の意図を持っていたため、被告人らが妨害者を茅ヶ崎市民文化会館に入れないようにしようとした行為が法令行為、政党業務行為であるという弁護人の主張であるが、渡辺賢一は事件発生当時茅ヶ崎市役所まで持参した拡声器を手に持っておらず、ビラ等も持っていなかったことから映画上映の妨害をしようとした意図がないものと認められる。そのため、被告人らの行為は法令行為、正当業務行為に該当しないことは明らかである。」

 ここで、検察席側2列目、報道記者席の後ろに座っていた女性が「ええー」と不規則発言を行いました。

 「また弁護人の誤想防衛、誤想避難であるとの主張についても理由がなく、採用することはできない。」