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発達検査で診断ってつくの?

この記事は2,200文字あります。個人差はありますが、4分〜6分でお読みいただけます。

今日はnoteの連続更新119日目です。noteのほかに、Voicy(音声配信)もしておりますので、ぜひ併せてご活用ください!

今回のテーマは「発達検査で診断はつくのか?」です。
それではどうぞお付き合いください。


発達検査で診断はできる?

今日はあるニュースをもとに記事を書いていきます。

「発達検査の診断結果はどうだったのか?」についてのアンケートでした。それによると、発達検査での診断結果は下記の通りです

発達検査の診断結果について(ふぉぴすさんより)

なぜ取り上げたか?

ぼくは普段医療機関にいるので、診断は身近であり、自分もそのプロセスに関わることが多い立場です。

そうした立場からすると、ちょっと誤解を招くタイトルだと思って取り上げさせていただきました。念の為お伝えしておくと、詳しいことはわかりませんし、このアンケートを批判したいわけでもなんでもなく、もしかすると同じような考えかもしれませんが、「誤解する可能性があるのなら、それは減らしたい」という思いで取り上げています。

発達検査だけで診断はつかない

発達検査そのもので診断をつけることはありません。

ぼくは、発達障害支援の専門機関に勤めていますから、発達検査は専門領域の一つでもあり、よく実施もします。

その立場からすると、実は「発達障害に関する診断を考える時に、検査は必須じゃない」んです。

例えば。

自閉症スペクトラム(ASD)を考えたときには、検査を実施した方が情報収集という意味では大事です。

でも、もっと大事なのは発達歴なんですね。そして、これは特定の場面だけではなくて、ご家庭、それ以外の場所でどうかも含めて考えていきます。

特に重要なのは2歳までの発達歴

理由としては、後天的なものではなくて先天的なもの、つまり生まれつきの脳のタイプだからです。努力不足でもありません


そう考えると、途中から特性が出るのではなくて、生まれた時からあるわけです(もちろん、元々ある特性はあるけれども目立たなかったという場合はあります)。


同時に、2歳までだけじゃなくてその先も、それ以外の情報も必要

例えば。

診断に必要な情報としては下記のようなものがあります。

  • 2歳までの特徴

  • 社会的コミュニケーション(理解、発信、非言語)

  • 人付き合いなどの社会性(大人に対して、同年代に対して)

  • 社会的イマジネーション(遊び方や繰り返しの行動なども含む)

  • 感覚の偏り

ただ、「診断=支援」ではないので、支援を考える際にはそれ以外にも聞く必要があります。具体的には以下のような内容です。

  • 運動のスキル

  • 身辺自立

  • 家事

  • 自立の度合い

  • 絵や文字の理解

  • 学習

  • メンタルの状態など

これらの聞き取りだけでもすごく時間がかかるんですね。でも、診断や支援を考えていく場合には、このように多領域にわたって、丁寧に状況を確認していく必要があるんです。

じゃあ何のための検査?

とはいえ、聞き取りだけでは十分な情報が得られないこともありますから、情報を捕捉する意味も、検査にはあります。

そして、親御さんからだけじゃなくて、実際のお子さんの様子も把握しなければなりません。


診断がつくことによって大きな支援方針は立ちます。
でも、具体的な支援内容まではわからないんです。

具体的な支援のためには、個々をより知る必要があるので、そのための発達検査なのです。

例えば。

皆さんの目の前にすごくお腹が減った佐々木がいたとします。
そして、佐々木は何か食べたがっています。でも、佐々木は偏食です。

さて、皆さんは何を佐々木に食べさせたら元気になるかわかりますか?

….知らん(そして、どうでもよい)。

と思うかもしれません。
でも、もう少しだけお付き合いください。

さっきの例では、今の状態を把握することで、「お腹が空いて、何か食べたがっているから、何かあげたほうがいいんだな」という大きな方針は立ちます。

でも、「何がいいのか」までの具体的な対応まではわかりません。佐々木を手懐けるためには、「何が好きで、何が嫌いなのか」を把握しておくほうがいいわけです。これが、「個々の特徴を知る」ということであり、発達検査の役割です。

どちらかだけで診断をするのは適切じゃない?

さて、ここまで発達検査だけで診断はつけられないということを書いてきました。

それ以外にも、チェックリストだけで判断する、特定の場面だけの聞き取りで判断するのも不適切だなとも思います。

例えば。

ADHDの不注意も、どんな状況で、どのくらい出ているのか、生活に支障が出ているかなどの情報が大切です。アンケートだけでつけられるものじゃありません。

過小診断、過剰診断の議論がある

こうした議論はよくありますが、個人的にはそれらを議論するのではなくて、そもそも診断プロセスが適切になされているのか、それを議論する方が意味があると思っています。

診断を考える際に、
「検査だけ」
「チェックリストだけ」
「簡単な聞き取りだけ」
こうしたことで診断をつけるのであれば不適切です。

診断はそんなに簡単なものじゃありません。
それぞれの方にとって大切なものです。

だからこそ、時間をかけて一緒に考え、整理して、最終的な診断を考えていくことが重要です。

補足はVoicyの配信をお聴き頂ければと思いますので、宜しければVoicyの方も応援していただければと思います!

佐々木康栄

災害時に役立つさまざまな情報

被災地で、発達障害児・者に対応されるみなさんへ(国立障害者リハビリテーションセンター)


防災・支援ハンドブック(日本自閉症協会)


災害時、発達障害の子どもの支援についての医療関係者へのお願い(内山登紀夫先生)


災害時の発達障害児・者支援エッセンス


#障害者を消さない(ヘラルボニー)


寄付型セミナー(TEACCHプログラム研究会東北支部)

代表を務めているTEACCHプログラム研究会東北支部で、「寄付型セミナー」を立ち上げています。ぼくの衝動的な行動であることは自覚しています。それでも、今ぼくらにできることを考え、過去に配信したオンラインセミナーを再度配信させていただき、その売上(配信や販売に関わる手数料を差し引いた全額)を能登半島地震の支援・復興に向けた寄付することに決めました。宜しければ応援してもらえると嬉しいです。


#能登の障害者に届け

能登の障害者の方々に直接支援が届くように、一般社団法人障害攻略課さん
、NPO法人石川バリアフリーツアーセンターさん、一般社団法人Smart Supply Visionさんが「#能登の障害者に届け」というプロジェクトを立ち上げてくださっています。

この短期間でこれだけの状況を整えることは、どれだけ大変だったのだろうかと思います(きっとかなり睡眠時間や休みの時間を削って急ピッチで取り組んでくださったのだと思います)。本当に感謝です。    

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その他お知らせ

オンラインサロン「みんなで考える発達障害支援」


クラウドファンディング

▼9月に大阪にて講演会をさせて頂いた「一般社団法人泉大津・発達支援勉強会Lien」さんが、「大阪府泉大津市、及び、泉州地域である近隣市町村一帯が、発達障がいや多様な子どもたちにとってより過ごしやすい地域に」を目指して、クラウドファンディングをされています。特に、4月2日の世界自閉症啓発デーでは、世界中がブルーライトアップされます。これは色々な人に目を向けてもらうための活動でもある一方で、それだけ予算がかかります。

そのため、どの地域でもできるわけではありません。今回、泉大津市内のブルーライトアップをしたい!という想いを叶えるためのクラウドファンディングです。目標金額は220万円です。ちなみに、これは行政と一緒に取り組んでいるものなので、「ふるさと納税」として寄付ができます。

ぼくも応援メッセージを出させて頂いています。どうか皆さんも応援していただけないでしょうか。

皆さんの応援が力になり、その力が地域を進める行動になり、その行動が当事者やご家族の未来になります。

一緒に地域の未来を変えるお手伝いをしてくれませんか?


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▼TEACCHプログラム研究会 第16回実践研究大会 in 東北・東京・熊本・鹿児島 「共に学び 成長する 熱い冬」

ぼくは仙台会場にいって、一丁前にコメンテーターというのをさせて頂きます!翌日にはTEACCHプログラム研究会東北支部主催でイベント「自閉症支援の未来会議 in 仙台」も開催しますので、2月10日(土)、11日(日)はご予定の確保をお願いします!


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