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高堂つぶやき集。
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2023年11月の記事一覧

そこにふと眼がいくというのは君の裡にそれがあるわけで、おそらく裡は他者だけでなく、己以外の森羅万象で充ちている。例えば木を觀れば、その木肌が丹田の傍らから右内耳の奥へと流れていくこともあるだろう。こうして君は木に初めて触る体験をする。あゝ、これは微雨あがりの木肌だと。知らんけど。

今宵はツに居る。この一音で都市の名にも化ける短き創造。字は一字でよしと視たのは詩人の坂村真民だけれども、都市は一音でよしとツは語りかけてくれるかのような月影である。日本の場合、五十音ひとつひとつを神と視た節がある。今は五十ないから多少神々は減ったが、それでもツは一音で偉大なのだ。

門構えには何も入れぬのがよい。門から日が差しこめば、門はたちまち間に化けるが、妙に間伸びしてしまう。では音を通して闇にするのは如何か。こちらの漆黒は耳にちと五月蝿い。いっそ門に門をいれてしまえとやってみれば、かえって悶々とする。こうして人は門を行き来し、門とともに閃くのである。

橋は異界へと繋がるひとつ次元を低くした際であった。三次元世界においては、橋は二次元的にあちらの世界へと誘ってくれる。そんな妖しさを含む橋と出逢ったなら、やはり夜に渡られたい。渡ったならば幾つかの橋にまだ物語が残っているように、振り返らぬことである。異界は等しく眼前にあるのだから。