マガジンのカバー画像

読書本まとめ

65
和の読書記録です。本からの気づきをいろいろ書きます。
運営しているクリエイター

記事一覧

【読書記録】神さまのビオトープ

凪良ゆうさんの本と言えば、「流浪の月」や「わたしの美しい庭」、「汝、星のごとく」が有名でしょう。私はまだそちらは読了していないのですが、今回読んだこの本がよかったので読んでみたいなって思いました。 最近、連作短編集を読んでいます。その流れで手にとったこの本。 今回のお話は、夫に先立たれた美術先生のうる波が主人公。彼女には死んだはずの夫(鹿野くん)が見えるのです。これは夢か現実か。幻も知れないと不安に思いながらも、彼女は幽霊の夫との暮らしを普通に営み始めます。周りの人には奇

【読書記録】名古屋駅西 喫茶ユトリロ

名古屋にお住いのあなたなら、知っている場所が満載でした。 ただし、鶴舞図書館の寿がきやラーメンは閉店してしまったので本書に出ている情報としては、懐かしみながら読んで下さい。 このお話は、名古屋駅西にある架空の喫茶店ユトリロに関わる人々たちの連作短編ミステリーでした。ミステリーと言っても人は死なないので平和だし、謎も軽い感じなので名古屋が地元でほっこりしたお話を希望する方に向いています。 名古屋名物の手羽先・カレーうどん・寿がきや・鬼まんじゅう・どて煮が目白押し。読みながら

【読書記録】わたしたちが光の速さで進めないなら

短編7作の入っている、韓国のSF小説でした。 韓国小説は、はじめましてだったのでどんなものかと読んでみました。 設定がおもしろくて今っぽい。そんな印象を受けたこの本。 私は、短編の中で「共生仮説」というお話が一番気に入りました。きっと冒頭でちらっと保育士が出てきて、後半には赤ちゃんが出てきていたから。お話の内容は、リュドミラという名の人物が自分が産まれる前にいた惑星のことを話し、表現し、世間にもてはやされます。そして、なぜか関係ないのにそこを知っている赤ちゃんがいて、大人た

【読書記録】香君

上橋菜穂子さんの小説が4冊の文庫本になっていました。 春、夏、秋、冬、とてもきれいです。この物語は、人並み外れた嗅覚をもつ少女アイシャが国を救おうとするお話です。この国の根幹には、オアレ稲と呼ばれる貧困を救った奇跡の稲が存在していました。この稲の声をアイシャは香りにのせて聞くのです。すると……。 ちょっと、気になりませんか? 私にはこの単調な香りという表現が、今の学校の光景によく似ているなって感じに思えてなりませんでした。同じように、均一に、育てやすいように。 これからの時

2024年、読まれた本記事ベスト5

「読書記録」と称した過去の私が読んだ本のまとめ記事を、2024年でPVの多い順に並べてみよう!そうしたら、今読んでくれている人たちには、どういう記事が人気なのが分かるかも。今日はそんな試みです。 第5位 さみしい夜にはペンを持て 第4位  傲慢と善良 第3位 人生は攻略できる 第2位 プロだけが知っている 小説の書き方 第1位 原稿用紙10枚を書く力 なるほどなぁ。 こうしてみると、私も含め「書き方」に興味がある人って結構多いんだな。 最近、言語化ってつく本も売れ

【読書記録】水沢文具店 あなただけの物語つづります

文具に興味が出てきたからこそ手にとりました。 そうだな、おすすめするなら中学生、高校生の女の子向き。でも、小学校の先生や、小学生のお子さんをお持ちのママさんも気分転換にいいかもしれません。元気な子どもたちがわいわいしていますから。ただ、現実描写へのツッコミはなしで。あんな場所ない、なんて言わないで。だって、ポプラ文庫ピュアフルから出ているから。純粋無垢に読んでいきましょう。そうしたら、お話の柔らかな世界観をきっと楽しめます。 時間を忘れ夢中で読めてしまったこの1冊。私は、好き

【読書記録】マナーはいらない 小説の書きかた講座 

手にとった時、一瞬料理本かと思うけど、よく見たら原稿用紙のテーブルクロスでした!なんと、かわいい本。 小説は、自由。 細かい所なんて気にせずとも、楽しく書けばいいのです。 でも、審査員を務めたことのある著者から見たら、「惜しい!もっとここをこうするといい作品になるのになぁ」って思うことがあるようです。 その辺、こっそり教えて頂きましょう。 推敲小説は、誰かに読んでもらうためのもの。 だったら、少なくとも原稿の体裁を整えるべきです。 どうしましょう。いきなり、深夜のラブレ

【読書記録】そして、バトンは渡された

これは、いい。 何がよかったかって? それは、じんわりと「幸福感」というやつに浸れるからです。 主人公の優子と、その父親のお話。優子が成長して結婚を迎えるまでに、親子それぞれの想いを長く長く綴った物語。3人の父親たちの娘への愛。育てる覚悟。そういうのがぎゅっと詰まっていました。父親だけでなく、優子を取り囲む同性の協力者たち。そのキャラクターも魅力的です。 物語自体は、ほとんど優子ちゃん目線で語られるけれど、ラスト数ページだけ父親の視点に変わっていくのです。小学生の優子ち

谷川俊太郎さんの詩から生まれた絵本「生きる」

読書記録と言うほどのモノでもないけれど、この絵本はじっくり見ていたいと思わせる、引力がある。たったp39のお話。 それも、谷川俊太郎さんの詩をなぞっているから結論はわかっているけれども、絵の視点だ。ここがすごい。 「生きる」といいつつ、ほのかな「死んでしまった」を含むのだ。 この絵本は、セミの死骸のアップからスタートだ。 いきなり虫が苦手な人は「うえっ」っとなる。だって、その死骸にアリが群がっているのだから。自然の中の死だ。 そこから、公園の引きの絵があり、こまやかな人

【読書記録】もりあがれ!タイダーン

あなたは、対談本って読みますか? 私は……正直苦手な所がありました。 なんか、読みにくいと感じることがあります。 そんな私でも楽しく読める対談本がここにありました。 名付けて「タイダーン」ロボ。 ってまぁ、ダジャレなんですけれども。 最近は「ダンダダン」の方が有名かもしれませんが関係ありません。 この本にはヨシタケシンスケさんのイラストもたくさんあり、遊び心満載です。何なら、主題歌まで! 対談本にしては、余白が多め。お二人の話の中で話題に出た本の表紙も写真でどんどん載

【読書記録】月の光を飲んだ少女

アメリカの児童文学の翻訳本です。 この世界では、ある村で赤ちゃんを生贄に差し出す習慣がありました。この村は年に1度悲しみに包まれます。実は、魔女がこの赤ちゃんたちをこっそり星の子として助けていたのですが、額に月の模様のあるルナだけはどうしても手放せませんでした。このルナに魔法の力が宿ってしまい、手のかかる赤ん坊を自分で育てることになった魔女のザン。はたしてどうなるのか? 2017年のニューベリー賞受賞作だそうです。 読みやすい感じで、サクサクと目を通すことができます。目次

【読書記録】君を守ろうとする猫の話

↑ この本の続きでした。 上記の本の主人公は男の子、下記の本の主人公は女の子です。 時間軸が違うので、「君を守ろうとする猫の話」から読んでも大丈夫です。あとから、あの二人の話として「本を守ろうとする猫の話」を手に取るのもアリだと思いました。 君を守ろうとする猫の話この本を読む前に、ミヒャエル・エンデの「モモ」を読んでおくと、より楽しめるかと思います。本を読んで、本に出合える本なので、私にはすごくヒットしました☆あぁ、これ誰かに勧めたい! ただ、わが子に勧めるにはTHE王

【読書記録】図説 花開くアメリカ児童文学 「若草物語」から「大草原の小さな家」まで

カラーページや、19世紀~20世紀の本の挿絵などが沢山載っている本書。 誰もが一度は聞いたことのある「若草物語」「大草原の小さな家」「あしながおじさん」「赤毛のアン」「オズの魔法つかい」などの文学を時代背景の解説がかかれていました。 作品に触れたことはあっても、その時代に思いを馳せたことってなかったな、と思いこの本を手に取ってみました。 この時代に、女性が書く物語が世に残っているというのは作品そのものがおもしろかったのももちろんあるのでしょうが、それを創り出す知識や教養が

【読書記録】へろへろ

これは、介護の話です。 まだまだ先だって思っている介護の。 1人のすごすぎる状態の老婦人「大場さん」をきっかけにスタートした、地域の居場所づくりの波乱万丈物語でした。 迷惑・邪魔・大変 そう思われてしまった人たちの気配が共存できる居場所づくり。 「ぼけ」ることで、周りがどうなっていくのか。 「わたしが そんなに 邪魔ですか?」 この問いに、真摯に向き合うことができる人たちって、おそらくこの本に出てくる、人情を大切にする、心あたたかな人たちなんだろうな。そう、思いました。