暑い時こそ熱いもの
ミンミンと元気なセミの声。その夏の音を感じながら、家の中でだらりと過ごす時間が嫌いではない。レースカーテンを引いていても感じる眩しい日差し。カーテンに透ける青い空、大きな白い雲。窓を開け、扇風機の風を感じながら、思い切って床にごろん。ぼんやり外をながめ、ひんやりとした床を味わう。じわっとにじむ汗。ゆるりと過ぎていく時間。
お楽しみはこれから。
汗だくになった体で、まだ日の高い夕方からお風呂へ。むわっとした湯気のこもる浴室で、髪を洗って、体を洗って、顔を洗って、そうしてお湯にざぶん。思わず目をつぶって深く息を吐く。身体中の力が抜けて、疲れやダルさがお湯の中に溶けていく気になる。
学生時代まで、夏はシャワー派だった。
ただでさえ暑い夏に、熱い湯船に入るなんて考えるだけでもあつくなる。汗を流せればいいからシャワーで十分でしょ。
その考え方が変わったのは大学3年生の夏。就活を控えて自由な時間が少なくなる中で、友人たちと「夏らしい夏を過ごそう!」と結託して夏休みを過ごした時から。
ドライブして行った透明なきれいな海でのスイカ割り。浴衣を着て花火を見ながら食べたかき氷の味。徹夜でゲームをして迎えた朝に澄んだ空気を胸いっぱいに吸いながら見た朝日。
思い切り遊んだ帰りはたいてい日帰り温泉へ。熱い暑いといいながらも湯船にじっくり浸かった時のしあわせ。体はあついけど、湯上りはなんだかスッキリ。涼しい休憩所で休みながら牛乳を飲んだり、団扇でひらひら風を送りあったり。そんな楽しい思い出があったから、夏を感じた日にお風呂に入るのが大好きになった。
夏の家でのお風呂時間はちょっと特別。
のぼせないように飲み物を持ち込んで、香り付きの入浴剤を入れた38度くらいのぬるめのお湯で半身浴。
ぼうっとしているのもいいけれど、文庫本の短編集を持ち込むのがいつものスタイル。短編集なのはちょうど1つの話が終わるくらいがのぼせない頃合いだから。推理小説を持ち込んだ時は先が気になり過ぎて湯当たりしてしまった。
お風呂から上がって扇風機の風に当たるのが至福の時間。
毎年くるあついあつい夏。時折私は夏を感じるため、こうしてすごします。