国産菜種油を手絞りする理由と思い【たねのわ搾油所・青木陽馬さま】
本当に美味しい調味料で食材を味わっていただきたい。そんな思いで、わたしは【一瞬で料理上手になる調味料の選び方】を食生活改善講座の生徒様に、商品と共にお伝えしています。
ただ単に調味料の選び方や美味しさやだけではなく、作り手さんがどのような思いで製造されているのか。この調味料を選択することが、日本の食文化を守ることにつながると感じる商品を厳選してお伝えしています。
今回は友人から国産菜種油の圧搾製法のたねのわ搾油所・青木陽馬さまをご紹介いただきました。ぜひ講座でご紹介したく、メールにて思いをお伺いいたしました。わたしだけが読むには勿体無い、学び深い内容でしたので、青木様のご許可を得て、掲載させていただきます。
ぜひお読みください。
スーパーで調味料を購入する方に違いを伝えるために
わたしの食生活改善講座の生徒様は、普通にスーパーで調味料を購入されている方々です。ご案内する際に、商品の説明だけでなく、作り手様の想いやこだわりをご紹介させていただくと、納得されて、応援の気持ちもあり、購入されています。
細かいご質問で恐縮ですが、青木様を丁寧にご紹介させていただきたいと考えております。
わたしは食品関係などに勤務経験はなく、全くの一般人でございます。不躾な点もあるかと思いますが、ご容赦いただけましたら幸いです。
1.なぜ青木様は、全国的に数少ない圧搾製法の搾油所をはじめられたのでしょうか?
(以下:青木様のご回答)
食品製造で起業することが目標で東京農業大学に進み、卒業後一貫して食品業界に身を置いてきました。
調味料を作ることは決まっていたのですが、地域性のある味噌や醤油よりも、特に地域性にはこだわらないものを作るほうが面白いと考え、油を選びました。
昔は小さな油屋がたくさんありましたが、今は全国で40軒ほどでしょうか。(昨年も2軒廃業しました)若いものが引き継がないと無くなってしまう、という使命感もありました。
2.長崎という地と、お2人にはどのようなご縁があったのでしょうか?
仕事の転勤です。発酵や菌類の世界にいまして、キノコの生産工場のマネジメントをやっていました。
3.化学薬品による抽出は行わない素朴な製法につきまして、どのようなこだわりがあるのですか?
ヘキサン溶剤※による抽出では美味しい油は作れません。サラダ油を否定してはいませんが国民の栄養水準を上げるという戦後の国策的な産物です。
お酒でいうと合成酒、味噌や醤油、お酢でいうと即醸法、塩で言うとイオン交換膜法にあたるでしょうか。国民に安価に食料を供給するという意味では意義がありますが、食文化という観点から見るととても無機的です。
最近は味噌や醤油は国産原料で丁寧に作られたものが増えてきました。塩も海水塩や岩塩が田舎でも買えます。
お酢も昔は合成酢一択でしたが今は良いものがあります。砂糖も黒糖や甜菜糖やあれやこれやと選べますよね。日本酒も純米酒が流行っていますよね。
油だけなんです。サラダ油しか選択肢がありません。日本だけなのです。
中国、台湾、韓国はもっともっと油に選択肢があります。専門店もあります。日本よりずっとこだわった油が売られているのです。
ヨーロッパでサラダ油を使って料理を作っている一流レストランがあるでしょうか?レシピにサラダ油と書く料理人が居るでしょうか?そんなことをしたら笑われるでしょう。一流の日本料理店でスーパーのパック酒をそれもとびきり安い合成酒を出す様なものです。
油に関してだけ、なぜか日本ではそれが当たり前なのです。
ちなみにナタネの自給率は1%もありません。
(※ヘキサン溶剤:大豆からの油の抽出には、神経毒性のあるノルマルヘキサンという有機溶剤を使用される場合がある。ヘキサンに大豆を漬けると油が溶出し、その油を加熱すると、ヘキサンは69度以上で蒸発するので、原油だけが残る。)
4.一般的に売られているスーパーの油と、青木様の油にはどのような違いがございますか?
栄養価という意味では、コレステロール、トランス脂肪酸が0、飽和脂肪酸が少ない、オレイン酸比率が高いといったことを栄養成分表示にのせています。(105gは面積が少なくて略式表示です。すみません。)
ですが、まずは合成酒と純米酒、合成酢と醸造酢、みりん風調味料と本みりん、即醸の醤油、味噌と麹から作る醤油、味噌、サラダ油と圧搾製法の菜種油というように、そもそも別物とご認識下さい。
私は300年近く続く日本酒を造る酒蔵で働いていたこともある元蔵人です。日本中の酒蔵には、松尾大社などの酒造の神様を祭る神棚がありまして、まあ信仰はともかくとしても良い酒ができることを祈る気持ちは蔵人たちで共有しています。
油にもあるんですよ。油作りの神様が。京都の離宮八幡宮というところです。私は新人油職人なのでコロナもあって行けてないのですが、昔の油職人は良い油ができるように祈ったのではないでしょうか。
こういう文でお伝えできるのか自分でも疑問ですが、うちのような古くからあるスタイルの油屋が作る油とスーパーの油の違いは、そんなところにある様な気がします。
(以上:青木様のご回答)
日本の調味料業界における油の選択肢を増やす
青木様の思いや、日本の調味料業界における油の選択肢の少なさに、わたし自身もハッとさせられる思いで拝読いたしました。
青木様に対して、大変恐縮ではございますが、確かに油に関しては、わたし自身は外国産のオリーブオイルの、エキストラバージンオイルを購入していることが多く、国産の製法にこだわった油、というのはそもそも意識が及んでいなかったと感じました。
生産方法の違いなど、わたし自身がもっと学び、良いものを生産されている業者の方々を応援できる購入を心がけようと思います。
ぜひ皆様もたねのわ搾油所の油をお試しくださいませ。
たねのわ搾油所
より詳しくたねのわ搾油所を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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