忘れられない味(自然栽培の記録vol.5)
世の中に美味しいものはたくさんあるけれど、思い出に残る味はいくつあるでしょうか。私の場合、実家の祖父母が農業をしていたこともあり、野菜の味の思い出がいくつかあります。
子供のころ、家にはいつも食べきれないほどの野菜がありました。時期になると同じ野菜がどっさり採れて、毎日食べ続けるのです。たくさんあるものだから、美味しい所だけを選んで食べるという、今思えばとても贅沢なことをしていました。そんな環境で育った私が思い出すのは、冬のほうれん草の味。大きなどんぶりに豪快に入れられたほうれん草のおひたしが甘くて、もう一口、もう一口と気がづけば全部食べてしまったこと。一株丸ごと漬けられたハクサイの中心部分が、これまた甘くておいしくて、いつも真ん中の黄色いところだけを食べていたこと。
自分も畑を借りて野菜を作るようになり、有機・無農薬でほうれん草やミニ白菜も作りましたが、あの子供のころに感じたような味にはなっていません。東北の寒い冬に育ったものと、温暖な関東で育ったものの違い、品種や栽培の技量の違いもあるでしょう。特にミニ白菜は白菜の味がしないなと感じました。
そんな中で、自然栽培を始めてから自分で育てた野菜の中で忘れられない味に出会えました。その野菜がミニキャベツとラディッキオ・ロッソです。
ラディッキオは種を8月に播き、育苗して9月にトマトの株元に植え付け、ミニキャベツは市販の苗を植え付けました。肥料は、参考にしている本の通りに植え付けた時に米ぬかを一握りだけ。これ以降は肥料を与えていません。緑ナスの栽培で自然栽培は「ゆっくり育つ」ことを実感した私は、自然栽培2年目の畑では9月上旬に植え付けたミニキャベツもラディッキオも年内に結球しないかもしれないと想像はできました。ちなみに、自然栽培1年目の冬は、前に借りていた方の残肥もあって、ミニ白菜もミニキャベツも年内に結球して収穫ができました。防虫ネットなしで、そんなに虫にも食われず、きれいに育ちました。
自然栽培2年目では、ラディッキオもミニキャベツも10月半ばになっても葉数が少ないままでした。勤務している農園では、同じ時期に植え付けたキャベツがとっくに結球し始めているのに、自然栽培のこの畑では結球の気配すら感じられず…。このまま寒さに当たり続けてしまっては、春にあっという間にとう立ちしてしまいます。キャベツは一定の大きさになってから低温に当たると、とう立ちする性質があるのです。邪道かと思いながらも保温のために不織布で囲ってトンネルを作りました。
キャベツは11月下旬にやっと葉が巻き始め、3月にソフトボールくらいの大きさになりました。待って待って食べたその味はなんと甘いこと!葉脈の白い部分が特に甘かったです。生の葉を一枚一枚、甘さをかみしめて食べました。
一方、ラディッキオは一向に結球せず、3月になって暖かくなってもとう立ちもせず。4月下旬になってやっと葉が巻き始めました。
そして5月になって次の夏野菜の植え付け時期になってしまいました。夏野菜の植え付け場所を確保するためについにラディッキオを収穫!
種袋には70日で収穫できる極早生とありましたが、前年8月に種を播いてから年を越して収穫するまで約9か月。待って待って食べたその味は、、、
激苦でした!!
ほろ苦いラディッキオが自然栽培でゆっくり育って、良くも悪くも味が凝縮されたようです。コールスローにちょっと入れて食べましたが、ほんの少し入れただけでも苦味が際立ちました。ラディッキオは外葉は緑ですが、中は赤と白のコントラストがとてもきれいな葉で、サラダが彩り豊かになります。
キャベツの甘味とラディッキオの苦味、どちらも忘れられない味です。
自然栽培の記録シリーズはこちら↓
自然農との出会い(自然栽培の記録vol.1)
一年目の緑肥の失敗から学ぶ(自然栽培の記録vol.2)
トマト、「苗から育てる」から「種から育てたい」へ(自然栽培の記録vol.3)
緑ナスが食べたい!種から育てる固定種(自然栽培の記録vol.4)
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