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ハッピー龍イヤー! 〜絵画・工芸の龍を楽しむ〜:2 /静嘉堂@丸の内
(承前)
静嘉堂で「龍」といえば、中国美術の名品たちとともに、この絵も思い浮かぶ。
近代美術の重要文化財指定としてはかなり早い例で、切手になったこともある橋本雅邦の代表作《龍虎図屛風》(明治28年〈1895〉)だ。
有名作品ながら「そういえば、拝見したことはなかったかも」と思い至り、本展を訪ねる動機のひとつとなった。
江戸狩野派の流れを汲む雅邦による古典的な画題・形式の作で、それゆえに、近世までの先行作例との比較はしやすい。
最も異なるのは、龍に彩色が施される点。水墨の龍は威厳のなかに洒脱さを併せ持つものだが、雅邦の龍は格好をつけているのにどこかおまぬけというか、抜けている感じがユーモラス。それは変顔(?)の効果もあるけれど、着色の効果が大きいと思う。色をつけてみたら、なんだか半端に立体感が出てしまったぞ!?(もちろん、褒めている)
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なるほどと唸らされたのが、この展示ケース。一見して、どこに龍がいるのかわからないけれど……
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前者は内側、後者は外側に、龍の彫り文が刻まれている。素地が白いため、すぐにそれとは気づきがたい。後者はその上からさらにカラフルな色絵の花や蝶が描かれているから、より見過ごしやすい。
このような技法を「暗花(あんか)」という。「花」は、中国では文様全般を指す。しゃれた呼び名だなぁと思う。
わたしは遠くから目視で「なるほど、暗花の龍か! そうきたか!」と把握した次第。他の来場者のみなさんがキャプションを読んでほぉ〜と驚き、改めて観て二度驚くさまをこっそり拝見させてもらった。展示のアクセントとして、楽しい仕掛けだ。
曜変天目がいつも置いてある最後の小部屋は「龍、茶道具に入り込む」という章。
茶道具には、意外に龍のモチーフは多くないとの由。意識したことがなかったけれど、たしかにそうかもしれない。
それでも仕覆や釜などの文様には「入り込」んだようなさりげない龍のモチーフを、かろうじて認めることができる。
《唐物茄子茶入 利休物相》(南宋~元時代・13~14世紀 重美)は千利休、徳川将軍家と伝わり、徳川家光から伊達政宗の手に渡った。そして、近代には岩崎家。華麗なる伝来を誇る。
この茶入に添う 《堆黒螭龍文稜花盆》(南宋時代・12~13世紀)には、一対の螭龍(あまりゅう)が潜んでいた。意匠として溶けこんでおり、これはたしかに「入り込む」という表現がぴったり。
——お正月気分もすっかり抜けた1月末にうかがったが、館内はかなりの盛況だった。移転前の世田谷時代には、こんな混みよう、めったにみられなかったはずだ(しかも、世田谷よりも館内は広い)。丸の内移転の効果は絶大である。
昇り龍のごとき、上がり調子の残り11か月であってほしいものだ。
※東博の「初もうで」レビュー