没後80年記念 竹内栖鳳:番外編 班猫チャレンジ /山種美術館
本日は、11月29日で「いい肉」の日。お肉屋さんやスーパーの精肉売り場は、書き入れ時だろう。
昨日11月28日はというと、「いいニャ」で「猫と人の日」だった。
これに関連して……というわけではないけれど、竹内栖鳳《班猫(はんびょう)》のことをもう少し。
教科書などをとおして、愛らしいビジュアルが広く世に知られる《班猫》。この子との出逢いを求めて栖鳳展を訪れる人は多いはずで、館としてもポスターにリーフレットに、さらにミュージアムグッズの新商品にと猛プッシュしている。
本作が支持される大きな理由としてリアリティの追求があろうが、栖鳳の卓抜した描写力はもちろん、このポージングも重要なポイントかと思われる。
毛繕いという、なにげない動作。こんな格好をする猫をそれのみで絵にしたのは、栖鳳が初めてだったのではなかろうか。
毛繕いをするということは、ある程度は警戒をとき、リラックスしている状態なのかなとは思われる。
ただ、いま軽く調べてみると、猫の毛繕いはそれのみにあらず、不安や興奮を落ち着かせる意も、時にはあるらしい。たしかに、そうかもしれない。
なんともいえないところだが、よそいきではなく、古画や図譜に描かれてきた図様とも異なるポーズを選択したことじたいに、栖鳳の新しさはあるといってよいだろう。
自分の背に顔を密着させるという、常人には真似できない格好によって、猫の柔軟性が表されている点も見逃せない。
このポーズを印象づけるのは、視線の力だ。
エメラルドグリーンの瞳をこちらに向ける……この「カメラ目線」に惹かれるという方も多いのでは。わたしもそのひとりだ。
ーーいつもどおり、いつもの場所で毛繕いに熱中していた、猫。絵心を誘われた栖鳳は、やおら画材を手にとりスケッチをはじめる。
「見られている……」
ようやく主の異変に気づいた猫は、毛繕いの手を止め、ポーズはそのままに、画家を見つめ返す。
そのような、わずか1、2秒の瞬間を、栖鳳は捉えたのではないか。
これがわたしの見立てである。
ところで《班猫》のこの子は、うちの子によく似た模様をしている。
とはいっても、ありふれたキジトラの日本猫であり、同じようなことをのたまう親ばかの猫飼いさんはそれこそ、日本全国津々浦々にあまねくいらっしゃることだろう。
そんなニーズを敏感にキャッチして、写真の投稿企画でも開催してくれやしないものかなぁと話していたら……ほんとにあった。
というわけで……わたしも、投稿してみた。
ーーうちの子も《班猫》のように、広く長く、愛される子であってほしいものだ。