フードデリバリーマーケットの考察と攻略法~ポータルサイト活用における商品開発・ブランド開発編~
フードデリバリーマーケットの考察と攻略法
~ポータルサイト活用における商品開発・ブランド開発編~
こんにちは、フードビジネスコンサルタントの小林です。
緊急事態宣言の延長やまん延防止策の適用範囲拡大で、
飲食店を中心に実店舗ビジネスでは苦戦を強いられていますが、
フードデリバリーは依然好調に推移している店舗が多い状況です。
フードデリバリーのプラットフォーマー「出前館」も、
利益面では大苦戦していますが、
加盟店数は前年比207%で売上も171%だそうです。
実際に、以前ご紹介したグルメバーガー店でも、
現在Ubereats対応のみで1店舗月商700万円近く売り上げていますし、
昨年よりプレイヤーが増加しているゴーストレストランでも、
ゴーストレストランを展開するゴーストキッチンズでは、
5坪の店舗で月商800万円以上を売り上げているそうですし、
シェアキッチンデリバリーを展開するKitchenBASEでも、
直営店で2坪月商600万円以上売り上げているなど、
坪月商100万円をゆうに超える店舗も続々と誕生しています。
一方で、ポータルサイトを活用してデリバリーに取り組むも、
なかなか成果が出ないというお問い合わせも数多くいただいており、
この点デリバリーで好調な店舗とそうでない店舗に明暗が分かれます。
不振店の経営者様のなかには、
「デリバリー自体がバブルで、既に市場が落ち着いているのでは?」
といったようなお声もあるのですが、
実は成果が出ない要因は外部環境よりも自店の取り組みにあり、
大抵のケースにおいてそのシンプルが原因を取り除くだけで成果が出ることがほとんど。
そこで今回から、
前編:フードデリバリーマーケットの考察とブランド・商品開発のポイント
後編:ポータルサイト活用によるプロモーションのポイント
と2記事に渡って解説させていただきます。
そもそも「フードデリバリー」の市場動向はどうなっているか?
まず、フードデリバリー市場の市場規模を見てみると、
2019年時点で4,178億円だった市場規模が、
2020年で6,246億円まで成長していることが分かります。
また、2021年以降も毎年5%前後の成長率で市場が伸長し、
2023年には7,298億円まで成長する見通しです。
さらに、googleトレンドの「デリバリー」検索より実態としてのトレンド値で見ても、
確かに2020年のピークよりは若干減少しているものの、
以前コロナ前よりも高い水準で推移している状況。
つまりフードデリバリーマーケットとしては、
2021年以降も成長し続けるマーケットであるということです。
確かにフードデリバリーがコロナの影響で急速に成長しましたが、
一方で、以前テイクアウト専門店の記事でも紹介したとおり、
そもそも中食市場の成長はライフスタイル変化を背景としたメガトレンドですので、
今後の成長性についても疑いようがない事実であるといえます。
では何故、「フードデリバリー」で売上が伸びないのか?
デリバリーで売上が伸びない店舗の原因は大きく3つに分類されます。
1)スタート時点から苦戦しているケース
⇒そもそもフードデリバリーの特徴を抑えられておらず、
飲食店経営と同じ考え方で取り組んでいる
2)当初好調も、徐々に売上が減少しているケース
⇒シンプルに商品力・サービス力が低く離脱者が多いか、
増加する競合店舗と差別化できていない(同質化している)
3)一定水準まで伸びたが、その後頭打ちを迎え停滞しているケース
⇒1ブランド成功後、次の戦略が上手く打ち出せていない、
マルチブランド化している場合はオペレーションの問題。
上記の通り、フェーズ別に顕在化する課題と、
その解決に向けた方向性を下表に整理してみました。
特に今回は上表におけるStage1~2の、
いわば初級編について見ていきましょう。
(「既存店」・「専門店」は便宜上の分類なので、
専門店で苦戦している方もご覧いただければと思います。)
「フードデリバリー」の特徴と攻略法について
まずそもそも1ブランドあたり月商100万円にも満たない、
という店舗は、飲食メニューの延長で商品展開しているだけ、
というケースがほとんどです。
(とりあえず複数ブランド出してみたけどどれも上手くいかない、
という店舗もありますが、これは別次元での悪手ですのでまた別機会に。)
まずは、デリバリービジネスの特徴を抑えることからですが、
大きく3つの観点があると思っています。
1)認知・比較検討がオンラインのみ
⇒ブランド間での差別化が困難、比較検討時の品質・信用訴求が勝負
2)顧客との直接的な接点がほぼない
⇒特にプラットフォーム活用の場合は人的接触はないので、
非人的な注文時と商品納品時でしか差別化できない
3)自宅で完結する簡便さと配送料の負担が大きい
⇒デリバリー=割高が一般認識なので、
実店舗購入等で代替し難い要素が非常に重要。
特に3)の特徴が意外と非常に重要で、
①狙うべき客層
②ブランド開発の方向性
この2点に大きな影響を与えます。
「フードデリバリー」のターゲットと売れるブランド・商品
そもそも中食ビジネスの主要ターゲットは、
「単身層」「共働き世帯を中心としたファミリー」
ということは依然にもお話しました。
が、さらにデリバリーの場合は、前項の「割高感」が影響し、
「子育て世代」や「低所得層」は主要ターゲットから外れ、
一般的に購買力の高い層に集約されます(可処分所得含め)。
理由はシンプルで割安になるなら実店舗に足を運ぶ層で、
利便性や付加価値よりも経済性・価格志向が勝つからです。
したがって、上記大衆層向けの商品・ブランドは、
必然的にデリバリーでは伸び悩むことが多い傾向にあります。
一方で、大衆ウケしづらい商品・ブランドでも、
店舗等での代替性が低いものだと売上が伸びやすかったりもします。
いずれにしても、上記の点を鑑みたうえで、
商品・ブランド開発を行う必要があるわけですが、
ここからのステップも若干飲食店と異なります。
「フードデリバリー」における商品・ブランド開発のポイント
まず、市場性と競合性の観点ですが、
①MSが大きく、競合と棲み分け可能
②MSが小さいが、非供給マーケット
(MS=マーケットサイズ)
シンプルにこの2点のどちらかに属していることが必要です。
①の場合、唐揚げやとんかつ、カレーなど、
母体となるカテゴリーのデリバリーMSが大きい商品で、
属性(プレミアム、具沢山など)による差別化が可能かどうかです。
②の場合、最近でこそ増えてきたタコスやポキなど、
専門飲食店もあまりないカテゴリーで非供給マーケットを取れるかどうかです。
実店舗ビジネスように売上額をある程度成立させる必要がないので、
とにかくとことんまでエッジを立たせることがポイントです。
そのうえで、商品単価がどの程度取れるかという要素も重要で、
デリバリーでは注文単価2,000円~2,500円が一つの目安になります。
したがって、
①単品単価が高い(1,500~2,000円程度取れる)
②単品単価は低いが、まとめ買い需要に対応
のどちらかを満たす必要があります。
②の例として、CRISPY CHICKEN n’ TOMATOという、
韓国チキンをデリバリー中心に展開するブランドがありますが、
こちらは韓国唐揚げという商品単価の低い商品にも関わらず、
300~600gからというメニュー展開でデリバリーに必要な注文単価を満たしている、
実にユニークな販売方法です。
いずれにしても、この市場性・競合性・注文単価の3軸から、
ブランド・商品開発を検討する必要があります。
デリバリー競合店対策として”分かりやすいグルメ(ご馳走)感×フードデザイン”で差別化
前項のポイントを抑えてブランド・商品開発すれば、
ある程度はデリバリー需要を獲得することができます。
ただ、今後競合店がどんどん増加するなか、
同質化しやすいデリバリー市場では明確な差別化が必要になります。
その一つのキーワードが、
”分かりやすいグルメ(ご馳走)感×フードデザイン”
です。
例えば、ゴーストブランドとしてハワイアンポキを展開する店舗では、
”普通のポキ”を販売し伸び悩んでいたところから、
”グルメポキ”として具材に本マグロを投入し、
この本マグロ商品を徹底的に打ち出したところ、
注文率が大幅に向上し、売上も1.5倍以上に伸びました。
また、タコスの専門ブランドでも、
初動から200万円近い売上を作ることに成功しましたが、
女性にウケやすいWチーズというコンセプトと、
フードデザイン性を意識した具がこぼれるような商品写真で、
飽和しつつあったタコス市場で明確に差別化されています。
といったように、商品自体での差別化要素作りに加えて、
オンライン上で商品写真と情報のみで比較検討されるオンラインデリバリーだからこそ、
フードデザイン性を意識した商品写真等々の設計が非常に重要になります。
さいごに
ここまで、フードデリバリーマーケットの動向と、
そのなかで売れるブランド・商品開発について解説しました。
次回はこれらのブランド・商品を、
ポータルサイトマーケティングのなかでどうプロモーションするか、
という点について解説していければと思いますので、
是非お楽しみにして頂ければと思います。