坪月商50万円以上のテイクアウト専門店を設立・開業するポイント
皆様こんにちは、フードビジネスコンサルタントの小林です
「唐揚げ専門店」や「餃子無人販売店」など、
外食企業による「テイクアウト専門店」参入が増えています。
事業再構築補助金の一次採択結果でも、
400件以上がテイクアウトに関連する専門店開業で、
今後ますます全国で「テイクアウト専門店」の開業が活発化する見込みです。
そこで今回は、
「テイクアウト専門店」の設立・開業で成功するためのポイントに加え、
今後オーバーストア化による市場飽和に備えて取るべき戦略について記載します。
そもそも何故「テイクアウト専門店」が増えているのかというと、
市場自体の成長性以外のメリットがいくつかあるからです。
「テイクアウト専門店」のメリット・デメリットとは?
1) 小規模店舗でも出店可能
2) 内装・デザイン等を比較的簡易に開発可能
3) したがって初期費用が抑制しやすい
4) ホールオペレーションが不要で調理に集中できる
5) 席数等の制限がなく製造できる限り提供が可能
要するに、飲食店の開業と比較して、
小規模かつ簡素な店舗で開発できるため、
10坪程度の店舗であれば1,000万円もかけずに開発できます。
最近では「唐揚げの天才」のようなプレハブ店舗も出てきており、
より出店コストを抑制したモデルも増えてくるでしょう。
また、ホールオペレーションがなく調理に集中できる点も大きく、
後ほど収支イメージは記載しますが、人件費も15-20%程度に抑えることができます。
一方で、当然デメリットもあって、
1) 料理自体での差別化が難しく同質化しやすい2) アクセス重視で周辺施設や立地による影響を受けやすい
という点が、以外に苦戦している店舗が多い要因でもあります。
要するに、飲食店のような提供方法で独自性を出す工夫ができず、
また、家に持ち帰って食べるいわば経時劣化を前提として商品なので、
なかなか商品そのもので他店と差別化することが難しい。
したがって、基本的にアクセスが非常に重要な要素になりますが、
加えて目的来店を誘引しづらい点も特徴なので、
例えばコンビニやスーパーなど主婦層が立ち寄る施設近くの店舗のほうが、
売上が相対的に良くなるというケースもあります。
いずれにしても、このあたりのメリットとデメリットを理解したうえで、
テイクアウト専門店開発を進めることがポイントになります。
「テイクアウト専門店」マーケットの動向
テイクアウト専門店のマーケット動向について
そもそも、中食における主要ターゲットは、
「単身世帯」「共働き世帯を中心とするファミリー」です。
元々、中食はコロナ以前から成長していた市場ですが、
その要因は上記ターゲットの世帯数が増えていたことにあり、
これらの傾向はいわば今後も持続するメガトレンドだといえます。
(未婚率上昇も共働き世帯増加も大きく改善することのない傾向のため)
したがって、中食市場は元々進んでいたマーケットの成長に対して、
コロナによって第二成長期を迎えたという見方が正しいわけです。
これらのターゲットによって成長してきた中食市場も、
以前はコンビニやスーパーが消費の主戦場でしたが、
近年、これらの「専門性のなさ」や「作り置き商品」への飽きに対して、
「出来たて」商品を提供するテイクアウト専門店が伸びてきたという背景があります。
つまり、「テイクアウト専門店」の開発を進める際まず考えるべきことは、
これら他の流通小売業の惣菜商品といかに差別化するかということです。
「テイクアウト専門店」設立・開業のポイント
上記を踏まえて、業態開発のポイントを整理すると、
1)「to order」対応で出来立て商品を提供
2)ライブキッチンで実演性を演出
3)本物感の演出で高い専門性を訴求
4)製法訴求で家庭調理+αの価値訴求
5)主力単品のコスパ向上
となります。
スーパーにせよコンビニにせよ、
クローズドキッチンで調理した作り置き商品を陳列するのみであるため、
まずはここを実演調理の出来立て提供する専門性が高いテイクアウト店として差別化を図ることが基本です。
さらに、家庭調理比率の下落している商品
(Ex揚げ物、焼き魚、カレーetc)
や、家庭調理が困難な商品
(Ex鮮魚、焼肉弁当、エスニック・韓国・台湾etc)
が、中食商品として価値を出しやすいものになりますが、
特に前者の場合は、店内仕込み・店内調理といった要素のほかに、
家庭ではできない製法(こだわり調味料、低温調理etc)訴求が刺さりやすい要素になります。
まずは上記ポイントを踏まえて業態設計を進めていただければ。
「テイクアウト専門店」の立地別商品展開のポイント
業態設計が決まれば、次は具体的な商品構成の検討に入りますが、
その際立地別・ターゲット別の商品ニーズを把握する必要があります。
上表が立地別に獲得すべきターゲットと、
ニーズのある商品を分類したものになりますが、
特にコロナの状況を考えると郊外駅前もしくはロードサイドの、
住宅エリアにおける出店が基本になろうかと思います。
この住宅エリア出店で重要になることは、
いかに”単品商品”を強化し、”夕食需要”を獲得するかということです。
この点、郊外駅前エリアであれば、
主力単品以外にサブとなる商品の品揃えがある程度必要になりますし、
(唐揚げ専門店であればコロッケのような商品)
ロードサイドであれば、主力単品で買上点数を高めるための商品構成が重要になります。
(まとめ買いでお得になる設計やオードブル・盛り合わせ等)
例えば、坪月商200万円/坪以上をロードサイドで売り上げるクライアントの店舗でも、売上の7割が夕食需要でかつ盛り合わせ商品の売上が50%を占めています。
多くの店舗が”ランチタイム”の”弁当(=一食完結型商品)”よりも、
この夕食需要の獲得で苦戦して伸び悩んでいるケースが多いため、
これらの商品設計とディナー集客は非常に重要なポイントです。
「テイクアウト専門店」の開業費用
こういった「テイクアウト専門店」業態を設立・開業するにあたり、
どの程度の投資と、収益になるのかを少し見ていければと思います。
一般的に「テイクアウト専門店」開業にかかるコストは、
・物件取得費
・工事費
・厨房設備、機器
・その他備品費
・採用費
程度ですが、10坪程度で簡素な店舗を居ぬきで開発する場合は、
工事費を10-20万円/坪程度で見ても、500-1,000万円程度で開業可能です。
ただ一方で、上記で完成するある種パパママストアのような店舗では、
今後増加する外食企業からの参入店舗に包み込まれるリスクが高く、
同業態の競合店舗が周辺に出来た瞬間に苦戦することが目に見えています。
また、冒頭の「テイクアウト専門店」のポイントを踏まえて、
店内にある程度の調理能力を持たせかつ実演性なども意識するならば、
ミニマムで1,000万円程度の初期費用は見込んでおいたほうがいいでしょう。
「テイクアウト専門店」は比較的簡易に開業できる業態である、
というように一般的な情報では伝えられることも多いのですが、
今後競合過多が予想される市場でのビジネスの持続性を考えると、
飲食店ほどではないにせよ立地と規模、店舗設備は絶対に妥協しないほうが得策です。
今後オーバーストア化が予想される「テイクアウト専門店」で持続性の高い業態開発を行うために
特に企業として「テイクアウト専門店」に取り組む場合は、
上記の通りその持続性をどのように作っていくのかが課題になります。
一例にはなりますが、持続性の高い「テイクアウト専門店」運用に向けて、
取り組まなければならないことを列挙してみました。
1)早期でのドミナントエリア形成
MS(=マーケットサイズ)が大きい商材で小型店開発する場合は、
特に早期で狭小エリアでの多店舗展開による認知向上が必須。
2)モバイルオーダー等のシステム導入
飲食店同様”ピークタイムの販売力”を高めて全体売上を引き上げるために、
ここをしっかりと進めるためのシステム導入で効率化を図る。
3)オンライン媒体を活用したブランディング
同質化しやすい商材であるが故に価格競争になりがちなところ、
SNSや自社サイトを活用したオンラインでの価値訴求と、
メディア活用等によるブランディングによる付加価値作りが大事。
4)マルチチャネル・ブランドなどの複合化
デリバリーや物販などの展開、周辺商材との複合店化など、
1顧客に対する複数の利用動機を取り込みを図る。
上記のような展開を見据えて、一号店出店から取り組んでいくことが重要です。
さいごに
「テイクアウト専門店」の開業・設立でポイントになる要素をまとめると、
1)他流通小売業の惣菜商品との差別化を意識した業態開発2)立地別のターゲットニーズに対応した商品戦略3)後発店舗に負けないための持続性が高い業態展開
となります。
本記事をお読みいただいた皆様は、
まずこのあたりを意識して「テイクアウト専門店」の開業・設立を検討していただけると幸いです。