【小説】「もう1人の僕」①
最低の気分だ。
朝から嫌な場面に出くわした。
電車の中で男が女性に痴漢を働かせていたのだ。女性が周りに助けを求め、その男は駅員に連れていかれていたが、その時の男の表情は恍惚としていた。
反吐が出る。
社会という枠組みの中で生きている僕達はいわば鳥籠の中で飼われている生き物。
食事をするのも、休憩をとるのも全て許可が必要。管理されているのだ。
無意識的に管理されている状態に疑問を抱かず、日々のうのうと過ごし、働き、命を削っている。気づかないならばそれはそれで幸せだろう。