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蹂躙されるけぇき①
吾輩はけぇきである。
名前はまだない。けぇきとは言っても吾輩はどこのけぇきなのか。
けぇきとは言ったものの、甘い菓子は世の中に沢山存在している。
最近は“ まかろん ”とか“ がとおしょこら“”とか、小難しい名前がたくさん出てきているらしい。
簡単に言うと子分だな。
貴殿はけぇきの始まりつまり、吾輩という概念が日本にどう生まれたか知っておるか?
『 知らない』
知らないだと?ふん、知識の乏しい生き物だな。
よく覚えておくがいい。
吾輩は1543年ポルトガル船が種子島に漂着したことで、生まれたのだ。
そのときに入ってきたのが、カステぇラ。
これが吾輩の始まりだった。
生まれたばかりの吾輩はけぇき道において俄然未熟であった。
このままでも吾輩はやっていける、世の中で通用すると考えていた。
ふわふわの生地、軽い舌触りで人を笑顔にさせる。これが我輩の仕事である。
皆吾輩を口に入れただけで嬉しそうにする。うーん、この仕事は最高だ。けぇきに誇りを持つ。
最初の頃は良かった。きっと日本にカステぇラという概念があまり無かったのだろう。目新しいものと話題になり、多くの人に愛された。
それはもう幸せだった。
必要とされているだけで嬉しい。更にはぽっと笑顔にさせることも出来てしまう。日本に生まれてよかった。
しかし、月日が経つと皆飽いてしまう。
カステぇラが普及してから新しい菓子がたくさん誕生した。
“ ようかん”“ くりきんとん”……甘い物は多く存在する。
ここで吾輩は生き残るための改良をしなければならなかった。
吾輩は吾輩なのだ。
れっきとした「けぇき」なのだ
ベスト・オブ・シンプル
なのだ
現状の我輩が最高だと思っているのに改良せねば生き残れない……
なんて残酷な世界
しかし他のひょっと出の菓子なんぞに負けてられない気持ちが勝つ。元祖は吾輩だ。
辛く険しい道であるとは思うが、吾輩は品種改良の道へ進もうと思う。体をかきむしられ、千切られ、混ぜられ、捨てられるの繰り返しだ。
はあ、怖い。
噂には聞いている。
だが、より良いけぇきになり、幸せを届けるために吾輩は決断しなければならないのだ。
自己犠牲
漢字のごとく自己犠牲を行う。
吾輩は頑張る、頑張るのだ、みんな……応援を頼んだぞ……!!