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ローカル5Gの明日はどっちだ!①|ICTと社会

以前に「『夢の5G』本当にそうか?」という記事を投稿した。

ここで言う5GはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルという、いわゆる全国キャリアが提供する5Gサービスのこと(以下、キャリア5Gという)で、期待は高いが本格的な普及にはまだ時間がかかるだろうと述べた。

もう一つ、総務省肝煎りで推進しようとしているものに、ローカル5Gがある。

ローカル5Gとは、企業や自治体など誰でも、自分の土地や建物内で、ローカル5G用に定められた周波数帯を使って5Gサービスを提供できる仕組みである。

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全国キャリアはローカル5Gを提供することはできない。

ローカル5Gで使う周波数帯は、下の図の青い枠の100MHzが昨年末にすでに制度化され、さらに赤枠部分の拡張を年内に制度化しようと進められている。

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プライベートな無線ネットワークというと、Wi-Fi(無線LAN)がすぐ思い浮かぶが、その違いについて比較表にまとめてみた。

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大きな違いは、Wi-Fiは免許不要(アンライセンス)で誰でも使えるのに対し、ローカル5Gは無線免許取得が必要なことだ。スマホなどでWi-Fi設定を開くと、10個や20個のSSID(Wi-FiシグナルのID)が見えるだろう。免許不要で誰でも使えるので、私たちの周りには多数のWi-Fi電波が飛び交っており、電波干渉が発生して品質が低下している。

これに対してローカル5Gは1つの場所では1つのオペレータしかサービス提供できない。ローカル5Gオペレータになりたい人は、無線免許申請に先立って同一場所で先行してサービス提供しているローカル5G事業者がいないかどうかを調べた上で申請する必要がある。

自分の土地といっても、電波は目に見えず広がっていくので、隣接場所でサービス提供するローカル5Gと電波干渉しないかどうかの協議も必要だ。

電波利用料というのは耳慣れないかもしれないが、一昨日選出された菅義偉自民党新総裁が、総裁選の中で、全国キャリアが通信料金の値下げに応じなければ値上げもあり得るとTV番組で発言したという、あれだ。普段我々は意識していないが、実は大手通信事業者は5Gに限らず基地局や端末毎に定められた電波利用料という税金を国に支払っている。Wi-Fiはアンライセンスなので不要だが、ローカル5Gではキャリア5G同様にそのオペレータが電波利用料を支払う義務が生じる。

このローカル5Gを総務省はなぜ推進しようとしているか。一つは、前に「MVNO政策の場当たり感」の記事でも書いたが、通信事業への参入障壁を下げプレーヤー数を増やすこと。もう一つは5Gシステムの国産ベンダーを育成することだ。

後者の国産ベンダー育成については、国際的な5G無線システムがファーウェイ(中国)、エリクソン(スウェーデン)、ノキア(フィンランド)、サムスン(韓国)の4社によってほぼ席捲されているのに対し、NEC、富士通、京セラなどがローカル5Gシステムの開発を進めることにより、国産ベンダーの復権を目指そうという目論見である。

実際には、誰でも事業者になれるとは言っても、無線免許申請や隣接事業者との干渉調整など、ローカル5Gに参入するハードルはなかなか高い。コストもWi-Fiに比べればかなり高く(だいたい一声5,000万円とか言われているらしい。それでも全国キャリアが投下している設備投資に比べればかなり安いが)、そこまでのコストと労力をかけてまで参入する魅力があるのか、個人的にははなはだ疑問である。

このローカル5Gの市場性や現実性について、掘り下げてみたい。

【つづく】

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