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正直者でバカを見た。でも、楽しいよ。




正直者がバカを見る。


そんな言葉がある。



その言葉を知っていてもなお、僕は自分の気持ちにウソをつくことができない。



思い返せばたしかに、バカを見続けてきた気がする。



自分の信念に従った結果、高校で留年しかけ、大学を中退して再受験し、あげくの果てには就活をやめてフリーランスになった。



「もったいない」と言われ続ける人生だ。



だが、世間的には「バカを見ている」と評価されるであろう自分の人生が、僕は大好きだ。



自分の心のままに選んだ道だからこそ、苦しい状況も受け入れて心を燃やすことができるのだ。








◇◇◇








こんな性分でよかったと思えた、就職活動中のエピソードがある。






僕は就職活動中、使って当然のウソ(「御社が第一志望です」等)を罪悪感から、どうしても発することができなかった。



自分でも信じられなかったのだが、本当に口から言葉が出てこなかった。



「就活生」に徹することができず、初対面の方にウソをつきたくないという「ひとりの人間」としての自分が顔をのぞかせてしまう。



面接練習の時に何度も注意されたが、それでも直すことができなかった。






我ながら、バカだなあ、大バカだなあと思うのだが、不思議と後悔はなかった。


むしろ、自分の心にウソをつかなくてよかったと今でも誇りに思っているし、この誇りは死ぬまで心に残るものとなった。


あそこで自分の心にウソをついていたら、その罪悪感は生涯憑き纏った、それを想像すると恐ろしくてたまらない。



そして僕は、本心を貫いてよかったと思える言葉を、この就職活動中に聞くこととなる。






とある企業の最終面接、可能性の残っている企業は残りわずか。


その企業がほとんど最後の望みで、さすがの僕もここはウソをついてでも聞こえの良いことを言ったほうがいいのではないかと、数日前から葛藤していた。



結局、いくら考えても結論は出なかったため、僕は面接その瞬間の自分の本心に従おうと決心した。



そして面接が始まり、就活中に何度も聞いたいつも通りの質問を受けた。



前日あれだけ悩んでいたのに、僕の口から出てきたのはやはりいつもと同じ、ひとりの人間としての本心だった。






そうして話をしている最中、面接官の方の口がおもむろに開く。



「うーん、本当に申し訳ないんだけど、僕も社員だから正当な評価を下さなければいけないんだよね。残念だけど、君を採用することはできない。



雷に打たれたような衝撃が走った。


就活の大一番で、まさかの対面での不採用宣告。


予想外の言葉に、その言葉にどう反応したか全く覚えていない。







しかし、続けて面接官の方が発した言葉は、僕が生涯忘れられない言葉となった。

「でも、僕はひとりの人間として、君みたいな人が好きだよ。」



またしても、雷に打たれた。



この言葉をかけてもらえただけで、就活をしていてよかったと思えるほど嬉しかった。






その後、あまりにも早い不採用確定で有り余った面接時間、面接官の方は僕の一人の人間としての個人的なエピソードや気持ちを引き出す質問をしてくれた。


その時の会話は、少なからず僕の人生に影響を与えた。



残念ながら、目の前の男性が「面接官」だったのか、「ひとりの人間」であったのか、それはハッキリとはわからない。



ただ、僕の目には、目の前の男性が「ひとりの人間」に映っていた。



二度と会うこともない、こんなおかしな就活生一人と、ひとりの人間として向き合ってくれて本当に感謝が尽きない。







◇◇◇






その面接以降、就活なんてちっぽけなことのように思えてきてしまった。


そうして、僕の就活は幕を閉じ、自分が進むべき道をあらためて探究することとなる。


そんなわけで、僕は新卒フリーランスという世間的に見れば特殊な道に進むこととなった。



「就職しないと大学行った意味なくね?」

「中退までして大学入ったのにもったいない...。」



そんな言葉を何度言われたかわからないし、どれだけ悩んだかも、もうわからないくらい悩んだ。



けれど、僕は今、この道に進んで良かったと思っているし、後悔は全くない。



自分の心に正直でいなければ、この道を見つけ出すことは絶対にできなかった。



こんなにも自分の心の求めるがままに活動できているのは、人生で初めてだ。

正直者でバカを見た。でも、楽しいよ。


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